第28節:会社創立記念式典。九条は全社員の前で凛子を壇上に呼び、「彼女は我が社で最も重要な功労者だ」と全肯定。誰もが認める圧倒的なカタルシスと感謝の嵐に包まれる。
第28節:会社創立記念式典。九条は全社員の前で凛子を壇上に呼び、「彼女は我が社で最も重要な功労者だ」と全肯定。誰もが認める圧倒的なカタルシスと感謝の嵐に包まれる。
秋晴れの空の下、会社創立記念式典が全社員参加の大ホールで開催された。
九条社長が壇上に立ち、力強い声でスピーチを行う。
業績報告が終わり、次期経営計画の発表に移ろうとした時、彼はふと原稿から目を上げた。
「今日は、ここで一人の人物の貢献を、特に称えたいと思う」
背後の巨大なスクリーンに、サロン開設前後の各種データが映し出された。
急激に低下した離職率、改善された健康指標、そして右肩上がりのプロジェクト成功率。
「チーフ・ウェルネス・オフィサー、森下凛子。……壇上へ」
突然名前を呼ばれ、私は心臓が飛び跳ねるのを感じた。
隣に座っていた奈々さんが、「凛子さん、早く!」と背中を押してくれる。
私は戸惑いながらも、ゆっくりと階段を上り、九条社長の横に立った。
マイクを通した九条社長の声が、ホール全体に響き渡る。
「彼女は、誰もが『誰でもできる』と見下していた仕事で……この会社の『呼吸』を見事に整えてみせた。彼女が作ったあのサロンは、単なる休憩所ではない。私たちが『人間らしく働く』という、最も基本的なことを思い出させてくれる、かけがえのないオアシスだ」
会場内は水を打ったように静まり返り、全員が社長の言葉に聞き入っていた。
「数字以上に、彼女がもたらした『人の繋がり』と『安心感』は、今やこの会社の最も強固な基盤となっている」
九条社長は、私の方を真っ直ぐに向き直った。
「私は断言する。森下凛子は、この会社において、最も重要な功労者だ」
一瞬の静寂の後。
割れんばかりの拍手と喝采が、ホールを包み込んだ。
「森下さん、ありがとう!」
「凛子さーん!!」
奈々さんをはじめ、多くの社員が立ち上がり、泣きながら拍手を送ってくれている。
西園寺部長も、目を潤ませながら力強く頷いていた。
私は、ただ深く頭を下げることしかできなかった。
涙がこぼれそうになるのを必死にこらえながら。
式典の後、社員たちが次々と私のもとに駆け寄り、直接感謝の言葉を伝えてくれた。
私が「絶対に頑張らない」と決めて淹れ続けたお茶が、こんなにも多くの人の心を温めていた。
最高の、そして最も優しい形でのカタルシスだった。




