表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/30

第28節:会社創立記念式典。九条は全社員の前で凛子を壇上に呼び、「彼女は我が社で最も重要な功労者だ」と全肯定。誰もが認める圧倒的なカタルシスと感謝の嵐に包まれる。

第28節:会社創立記念式典。九条は全社員の前で凛子を壇上に呼び、「彼女は我が社で最も重要な功労者だ」と全肯定。誰もが認める圧倒的なカタルシスと感謝の嵐に包まれる。


秋晴れの空の下、会社創立記念式典が全社員参加の大ホールで開催された。


九条社長が壇上に立ち、力強い声でスピーチを行う。

業績報告が終わり、次期経営計画の発表に移ろうとした時、彼はふと原稿から目を上げた。


「今日は、ここで一人の人物の貢献を、特に称えたいと思う」


背後の巨大なスクリーンに、サロン開設前後の各種データが映し出された。

急激に低下した離職率、改善された健康指標、そして右肩上がりのプロジェクト成功率。


「チーフ・ウェルネス・オフィサー、森下凛子。……壇上へ」


突然名前を呼ばれ、私は心臓が飛び跳ねるのを感じた。

隣に座っていた奈々さんが、「凛子さん、早く!」と背中を押してくれる。

私は戸惑いながらも、ゆっくりと階段を上り、九条社長の横に立った。


マイクを通した九条社長の声が、ホール全体に響き渡る。


「彼女は、誰もが『誰でもできる』と見下していた仕事で……この会社の『呼吸』を見事に整えてみせた。彼女が作ったあのサロンは、単なる休憩所ではない。私たちが『人間らしく働く』という、最も基本的なことを思い出させてくれる、かけがえのないオアシスだ」


会場内は水を打ったように静まり返り、全員が社長の言葉に聞き入っていた。


「数字以上に、彼女がもたらした『人の繋がり』と『安心感』は、今やこの会社の最も強固な基盤となっている」


九条社長は、私の方を真っ直ぐに向き直った。


「私は断言する。森下凛子は、この会社において、最も重要な功労者だ」


一瞬の静寂の後。

割れんばかりの拍手と喝采が、ホールを包み込んだ。


「森下さん、ありがとう!」

「凛子さーん!!」


奈々さんをはじめ、多くの社員が立ち上がり、泣きながら拍手を送ってくれている。

西園寺部長も、目を潤ませながら力強く頷いていた。


私は、ただ深く頭を下げることしかできなかった。

涙がこぼれそうになるのを必死にこらえながら。


式典の後、社員たちが次々と私のもとに駆け寄り、直接感謝の言葉を伝えてくれた。

私が「絶対に頑張らない」と決めて淹れ続けたお茶が、こんなにも多くの人の心を温めていた。

最高の、そして最も優しい形でのカタルシスだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ