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第25節:サロン開設から3ヶ月。離職率低下など明確な数字の成果が上がり、ウェルネス経営が会社の重点施策に。派閥の壁も消え、社員が心から休める居場所として定着する。

第5章 静かな戴冠とオアシス


第25節:サロン開設から3ヶ月。離職率低下など明確な数字の成果が上がり、ウェルネス経営が会社の重点施策に。派閥の壁も消え、社員が心から休める居場所として定着する。


「リラクゼーション・ティー・サロン」が開設されてから、三ヶ月が経過した。


「森下さん、おはようございます! 今週のブレンドは何ですか?」

「おはよう、奈々さん。今週は『カモミールとオレンジピールの陽だまりブレンド』ですよ。少し胃腸が疲れている人が多いみたいでしたから」


サロンはすっかり、社内の「行きつけの場所」として定着していた。

毎日、時間帯によって異なる部署の社員がふらりと訪れ、部署の垣根を越えた自然な交流が生まれている。


「あ、開発部の田中さん。昨日のシステムのエラー、直りました?」

「ええ、なんとか。あー、このお茶美味しいですね。眼精疲労がスーッと引いていく気がする」

「森下さんの特製『眼精疲労ケアと発想支援ブレンド』ですからね。うちの営業部でも大人気ですよ」


かつて「後宮」と呼ばれ、派閥ごとに明確な境界線が引かれていた社内の空気は、嘘のように柔らかくなっていた。


数字としての成果も、誰の目にも明らかだった。

離職率は過去五年で最低を記録し、特に新卒社員の定着率が顕著に向上している。

健康診断の数値改善を示す社内レポートまで作成されるほどだ。


午後、取締役会を終えた九条社長がサロンにやってきた。


「森下。先ほどの会議で、次期経営計画の重点施策に『ウェルネス経営』が正式に組み込まれることが決定した」


「それは、素晴らしいことですね」


「ああ。君が作ったこの場所が、会社の未来を確固たるものにしている。数字がそれを証明したんだ」


九条社長は、満足そうにオレンジピールのブレンドティーを口に運んだ。


夕方、サロンの片付けをしていると、入社一年目の女性社員がぽつりとこぼした。


「私……今まで、頑張らないと見捨てられるって、ずっと怖かったんです。でも、ここにいると、少しだけ休んで、また頑張ってもいいんだって……そう思えます」


「ええ。無理に走り続けなくても大丈夫ですよ。いつでも、温かいお茶を用意して待っていますから」


私が静かに微笑むと、彼女は嬉しそうに頷いて帰っていった。

この場所が、「死後の楽園」のような遠い場所ではなく、まさに「現世で完成する目覚め(今ここで整う境地)」を感じられるオアシスになっていることが、私は何よりも嬉しかった。

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