第24節:トラウマの克服 重責に「また頑張らねば」と焦る凛子。だがモンスターの導きと九条の言葉で「自分らしくいること」の尊さに気づく。
第24節:トラウマの克服 重責に「また頑張らねば」と焦る凛子。だがモンスターの導きと九条の言葉で「自分らしくいること」の尊さに気づく。
CWOに任命された翌日。
私はサロンのカウンターで、一人ため息をついていた。
「……チーフ、ウェルネス、オフィサー」
口に出してみると、その肩書きの重さに押し潰されそうになる。
全社員の健康とメンタルを預かる責任。
(私がしっかりしなければ。もっと新しいブレンドを開発して、もっと効率的なリラックス方法を提案して……)
「また頑張らなければ」という強迫観念が、黒い泥のように湧き上がってくる。
「魂の引っ越し型の転生」をしたつもりだったのに、私はまた同じ過ちを繰り返そうとしているのか。
その時だった。
『モグゥ……』
**おつまみモンスター**が、私の膝の上にポンと乗ってきた。
彼は私の焦りと恐怖を、ゆっくりと、丁寧に吸い取っていく。
そして見せてくれた映像は、「小さな灯りを、ひとつひとつ灯していく」姿だった。
一気に太陽のように世界を照らす必要はない。
目の前の一人に、温かいお茶を淹れる。その小さな灯りの積み重ねでいいのだ。
「……森下」
不意に声がして顔を上げると、九条社長が立っていた。
「少し、顔色が悪いぞ。君が倒れたら、私はまた胃薬のお世話になるしかなくなる」
冗談めかした彼の言葉に、私はハッとした。
「……すみません。少し、気負っていたようです」
「無理するな。君は、君らしくいてくれればいい。君が自然体で淹れてくれるお茶だから、私たちは救われるんだ」
彼の真っ直ぐな瞳を見て、私は胸の奥のつかえがすーっと消えていくのを感じた。
「……ありがとうございます、社長」
私は、この会社に来て初めて、九条社長に向かって心からの笑顔を見せた。
彼が少しだけ目を見開き、そして照れたように口元を覆ったのを、私は見逃さなかった。
サロンには、今日も社員たちが集まってくる。
「森下さん、今日のおすすめは?」
「奈々さん、こっちの席空いてるよ!」
ここはもう、戦場ではない。
「命の流れが続く再生」の中で、私がようやく見つけた、誰もが「自分らしく」いられる大切な居場所だった。




