表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/30

第24節:トラウマの克服  重責に「また頑張らねば」と焦る凛子。だがモンスターの導きと九条の言葉で「自分らしくいること」の尊さに気づく。

第24節:トラウマの克服  重責に「また頑張らねば」と焦る凛子。だがモンスターの導きと九条の言葉で「自分らしくいること」の尊さに気づく。


CWOに任命された翌日。

私はサロンのカウンターで、一人ため息をついていた。


「……チーフ、ウェルネス、オフィサー」


口に出してみると、その肩書きの重さに押し潰されそうになる。

全社員の健康とメンタルを預かる責任。


(私がしっかりしなければ。もっと新しいブレンドを開発して、もっと効率的なリラックス方法を提案して……)


「また頑張らなければ」という強迫観念が、黒い泥のように湧き上がってくる。

「魂の引っ越し型の転生」をしたつもりだったのに、私はまた同じ過ちを繰り返そうとしているのか。


その時だった。


『モグゥ……』


**おつまみモンスター**が、私の膝の上にポンと乗ってきた。

彼は私の焦りと恐怖を、ゆっくりと、丁寧に吸い取っていく。


そして見せてくれた映像は、「小さな灯りを、ひとつひとつ灯していく」姿だった。

一気に太陽のように世界を照らす必要はない。

目の前の一人に、温かいお茶を淹れる。その小さな灯りの積み重ねでいいのだ。


「……森下」


不意に声がして顔を上げると、九条社長が立っていた。


「少し、顔色が悪いぞ。君が倒れたら、私はまた胃薬のお世話になるしかなくなる」


冗談めかした彼の言葉に、私はハッとした。


「……すみません。少し、気負っていたようです」


「無理するな。君は、君らしくいてくれればいい。君が自然体で淹れてくれるお茶だから、私たちは救われるんだ」


彼の真っ直ぐな瞳を見て、私は胸の奥のつかえがすーっと消えていくのを感じた。


「……ありがとうございます、社長」


私は、この会社に来て初めて、九条社長に向かって心からの笑顔を見せた。

彼が少しだけ目を見開き、そして照れたように口元を覆ったのを、私は見逃さなかった。


サロンには、今日も社員たちが集まってくる。

「森下さん、今日のおすすめは?」

「奈々さん、こっちの席空いてるよ!」


ここはもう、戦場ではない。

「命の流れが続く再生」の中で、私がようやく見つけた、誰もが「自分らしく」いられる大切な居場所だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ