第23節:公式な役職の創設 数字でサロンの成果を確認した九条。幹部会議で凛子を「CWO」に任命し、彼女の隠れた実績が全社に知れ渡る。
第23節:公式な役職の創設 数字でサロンの成果を確認した九条。幹部会議で凛子を「CWO」に任命し、彼女の隠れた実績が全社に知れ渡る。
サロン開設から一ヶ月。
その効果は、誰の目にも明らかだった。
離職率は前月比で10%低下。
各部署間のコミュニケーションが円滑になり、停滞していたプロジェクトの遅延も激減した。
月末の幹部会議。
九条社長は、スクリーンのデータを示しながら宣言した。
「この数字が示す通り、サロンの導入は我が社に莫大な利益をもたらした。よって、このプロジェクトの責任者である森下凛子を、本日付で『チーフ・ウェルネス・オフィサー(CWO)』に任命する」
会議室がどよめいた。
「清掃員がいきなり役員クラスに!?」
「いや、彼女は前職で伝説のディレクターだったらしいぞ」
私の過去の経歴がどこからか漏れ伝わり、社内での評価は一気に逆転していた。
「掃除婦」と見下していた者たちは青ざめ、恩恵を受けた者たちは惜しみない拍手を送った。
会議の後、私は社長室に呼ばれた。
「CWO。社員の心身の健康を管理し、生産性向上を担う重要ポストだ。経営企画とは別軸の、君だけの城だ」
九条社長は、辞令の書かれた書類を私に手渡した。
「……お受けします。ですが、私の仕事は変わりません。あの場所で、皆さんが休める環境を作り続けるだけです」
「それでいい。君はもう、廊下の端を歩く掃除婦じゃない。この会社の礎だ」
九条社長の言葉は、私の心の奥の柔らかい部分に、真っ直ぐに届いた。




