表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/30

第20節:サロン建設開始  週末の改装作業。凛子の見事な指揮で進む中「頑張りすぎる恐怖」を抱くが、おつまみモンスターのビジョンで自分のペースを取り戻す。

第20節:サロン建設開始  週末の改装作業。凛子の見事な指揮で進む中「頑張りすぎる恐怖」を抱くが、おつまみモンスターのビジョンで自分のペースを取り戻す。


週末のオフィス。

給湯室の本格的な改装作業が始まった。


「そこの棚は、もう少し右へ。動線が詰まってしまいますから。……奈々さん、その観葉植物は窓際に」


「了解です、凛子さん!」


私は作業着に着替え、業者とボランティアの社員たちに指示を出していた。

壁紙は目に優しい淡いグリーンに張り替えられ、無機質だった蛍光灯は、温かみのある間接照明に変更されていく。


「森下さん、このハーブの瓶はどこに置く?」

「こちらのカウンターにお願いします。ラベルが見えるように並べてください」


私の指示は的確で、作業は驚くほどスムーズに進んだ。

前職で大型イベントを仕切っていた頃のプロジェクト管理能力が、こんなところで役に立つとは。


「掃除婦の道楽だろ」と冷やかしに来た一部のエリート社員たちも、手際よく進む作業を見て、いつの間にか無言で立ち去っていった。


しかし、作業が佳境に入った頃。

私の胸の奥に、チクッとした痛みが走った。


(……また、私は仕切っている。また、完璧を目指して、頑張りすぎているのではないか?)


過去のトラウマが蘇り、息が浅くなる。

その時だった。


『モグ……モグモグ……』


足元に、**おつまみモンスター**がぽってりと現れた。

彼は私の足にすり寄ると、溢れ出そうになった「頑張りすぎる恐怖」を美味しそうに吸い取ってくれた。


代わりに、脳内に静かな映像が流れ込む。

それは、ゆっくりと規則正しく歩く亀の姿。

「ペースを守る大切さ」。急ぐ必要はない、自分の歩幅で進めばいいというメッセージだった。


「……そうね。焦らなくていい」


私が深く息を吐き出した時、背後から声がした。


「……ずいぶん、居心地がいい空間になってきたな」


振り返ると、私服姿の九条社長が立っていた。

彼は完成に近づきつつあるサロンを見渡し、満足そうに頷いた。


「ありがとうございます。社長も、手伝っていかれますか?」


「私は不器用だからな。君たちの邪魔はしないでおく」


そう言って笑う彼の顔は、会社の皇帝ではなく、ただの一人の青年のようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ