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第18節:会社の崩壊危機   派閥争いの爪痕で会社が停滞し、九条が過労で倒れる。凛子は「休むこと」の重要性を説き、会社全体を癒やす新たな提案をする。

第18節:会社の崩壊危機   派閥争いの爪痕で会社が停滞し、九条が過労で倒れる。凛子は「休むこと」の重要性を説き、会社全体を癒やす新たな提案をする。


西園寺部長の権限停止後も、社内の混乱はすぐには収まらなかった。

派閥争いの後遺症でプロジェクトは停滞し、離職率は過去最高を記録していた。


その重圧は、すべて九条社長の肩にのしかかっていた。

ある深夜、私が執務室へ行くと、彼はソファでうずくまり、胃痙攣を起こしていた。


「社長!」


私は慌てて駆け寄り、彼の背中をさすった。


「……会社が、危ない。私が……立て直さなければ……」


「まずは、あなたが休まないと、会社は回りません!」


私は急いで給湯室に戻り、胃を温める「大根と生姜のスープ」を作って飲ませた。

そして、彼に無理やり深呼吸をさせ、強制的に休ませた。


少し落ち着いた後、九条社長は弱々しく笑った。


「……君の前でだけは、鎧を脱いでしまうな」


「社長。この会社全体が、今、呼吸を忘れています。戦うばかりで、休む場所がないんです」


私は、以前から考えていた計画を口にした。


「給湯室を、会社全体のオアシスに変えましょう。誰もが肩書きを忘れ、ただ温かいお茶を飲んで『今ここで整う境地』を取り戻せる場所に」


九条社長は驚いたように目を見開いたが、やがてゆっくりと頷いた。


「……君に、任せる」



第4章 戦わない居場所


第19節:新たな提案  給湯室を「誰もが序列を忘れて休めるサロン」にする計画書を提出。九条の合理的な問いに凛子が答え、会社のオアシス作りが始動する。


「……『リラクゼーション・ティー・サロン』計画書?」


九条社長は、私が提出した数枚のプリントを前に、少しだけ眉を上げた。


「はい。現在の給湯室を改装し、誰でも無料でハーブティーを楽しみ、短時間の休憩ができるスペースにする提案です」


私は静かに、しかしはっきりとした声で説明を始めた。


「ルールは二つだけ。『序列を持ち込まないこと』、そして『温かいものを大切にすること』。それだけです」


「……理念は美しいが」


九条社長は、合理主義者としての顔を覗かせた。


「企業である以上、投資対効果(ROI)はどうなる? 改装費、ハーブの仕入れ代、そして何より社員の休憩時間による稼働の減少。これをどう回収するつもりだ?」


私は手元の資料の次ページを指し示した。


「現在、当社の離職率は過去最高を記録し、プロジェクトの遅延が相次いでいます。採用コストと遅延による損失額に比べれば、サロンの維持費など微々たるものです」


「……ほう」


「温かいものを飲んで『今ここで整う境地』を取り戻すことで、午後の集中力は向上し、ミスの軽減やコミュニケーションの改善が見込めます。結果的に、回収は十分可能です」


九条社長の目が、わずかに輝いた。


「……君の前職での手腕が、少しだけ見えた気がするな。よかろう、試してみよう。予算と期間の枠を組むから、進めてくれ」


「ありがとうございます」


私が社長室を出ると、廊下で謹慎中(権限停止中)の西園寺部長とすれ違った。

彼女は私の手元のファイルに視線を落とし、鼻で笑った。


「サロンですって? 甘いわね。そんなお茶遊びで、この会社の殺伐とした空気が変わるわけないじゃない」


彼女の言葉には刺があったが、以前のような憎悪は感じられなかった。

むしろ、どこか気になっているようにすら見えた。


「変わるかどうかは、『答えを決めない/保留する』ことにしておきましょう。もし完成したら、西園寺部長もぜひいらしてくださいね」


私が微笑むと、彼女は「……ふん」と顔を背けて去っていった。


給湯室に戻ると、奈々さんが待っていた。


「凛子さん! 社長の許可、出ましたか!?」


「ええ。奈々さん、一緒にオアシスを作りましょうか」


「はいっ!」


奈々さんの弾けるような笑顔から、私たちの新しい計画が動き出した。

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