私の嫌いなホットケーキ
掲載日:2025/12/19
私は私が嫌いだった。
父も母も妹も家も学校も、私を取り巻く全ての環境が嫌いだった。
私は洗面所で手を洗いながら最後の仕上げを思いつく。
この鏡に映る私を殺して生まれ変わろう。
私は衝動的に拳で鏡を叩き割る。
ガシャン、という音が家中に響き渡る。
……しまった、手がまた血まみれだ。
私はもう一度手を洗う。
赤い流水と共に、私の心も洗われていくような気がした。
もう私は何者にも縛られない。
例え自分自身にさえも。
タオルで手を拭いた私は、ふと近くに転がっているホットケーキに視線を落とす。
真っ赤なシロップのついた大きなホットケーキ。
蛋白質とカルシウムを豊富に含んだホットケーキ。
歪で、冷めていて、あとは腐るのを待つのみの、三個のホットケーキ。
身支度を整えた私は、ホットケーキをわざと踏みつけてから家を出た。




