第5話 狂い始めた魔法
少しの平和が狂ってきます
成田国際空港。千葉県にある空港だ。そこに1人の女性が降り立った。赤色の髪をウルフカットにしたかっこいい女性だ。彼女はサングラスを取ってスマホを見る。スマホの待ち受けには、緑髪ショートカットの御影 神凪、金髪お団子の現役アイドルの月城 華光、深い青色の髪をしたリーダーの錨 朔夜がピースをして写っていた。
「会うのは1年ぶりっすかね」
楽しそうに女性は笑った。
ー
「「火鷹 蓮香?」」
私、九十九 途羽とピンク髪の相棒の朝比奈 結翔が首を傾げて聞き返した。
「そうよ。私と華光の先輩に当たる人でリーダーの親友よ」
神凪が少し嬉しそうに話した。
「この世界には貴方達を含めて15人魔法少女、魔法少年が居るわ。そのうちの1人に修行を付けるためにヨーロッパに飛んでいたの。ちなみに、日本には今6人の魔法少女、魔法少年がいるわ」
「……15人しかいないんですね」
結翔が俯きがちに答えた。
「人が少ない分それだけ、重要な仕事よ。」
神凪は優しく私と結翔の頭を撫でて言った。その時、部屋の外からノック音が聞こえた。神凪が「来たわよ」と言って、扉に近づく。扉を開けた先には、赤髪のウルフカットの女性が立っていた。黒いブルゾンにジーンズ、へそ出しの服が良く似合うかっこいい人だった。
「お久しぶりです。蓮香さん」
サングラスを取って蓮香は微笑んだ。微笑みまでかっこいい!
「久しぶりすっね。神凪は1年前まではこんな小さくて……」
蓮香は小さいものを表すような仕草をした。
「……後輩の前で冗談はよしてください」
「あぁ、そうだったっす」
そう言って蓮香は私達を見ていたずらっぽく笑った。
「どうも、火鷹 蓮香っす。魔法少女っす」
敬礼のようなポーズでウィンクしてみせる蓮香。かっこいい人だけど、口調で軽い感じで親しみやすい人だ。結翔なんてずっと蓮香に頭をぐりぐりと撫でられている。満更でもなさそうな顔をしてる……
「そうだ。華光はいるっすか?」
「華光さんですか?今日は見てませんけど……」
そうか……、と蓮香は肩を落とす。その時、私のスマホが音を立てた。電話でかけてきた主は華光だった。
「はい!途羽です!」
主が華光だと分かり、他の3人……結翔、神凪、蓮香が聞き入る。私は電話をスピーカーにした。
『途羽ちゃんっ!今周りに誰かいるっ!?』
うぅ……急に大声で電話口で話さないでよ……耳がキーンってするじゃんか……
「居ますけど……結翔くん、神凪さん、あと、蓮香さん」
『蓮香先輩っ!?蓮香先輩いるのっ!?』
「えぇ……」
『じゃあ、その場の全員連れてきてっ!私の仕事場所って言えば、神凪辺りなら分かるはずっ!』
華光の激しい剣幕に私たちはただ事では無いと感じていた。
ー
「スタジアム……?」
「華光さんアイドルですから」
「そっか」
華光はかこーという名でアイドルをしている。スタジアムに呼ばれた……という事は――
「スタジアムで何かが起きたって事っすね」
ステッキを取り出して全員が構える。
そして、神凪の案内の元、裏口からスタジアムへと入った。中は静まり返っていて、なんだか不気味だ。
「全員、変身しておいた方がいいわね」
全員、神凪の言葉に頷き全員がメタモルフォーゼと口にして変身する。初めて蓮香の衣装を見たが、パンクな印象でかっこいい!…………こほん。
「控え室に行ってみましょう」
ー
「……いない」
華光の控え室は空っぽだった。荒らされた形跡も無い。
「という事は……」
「よし!スティグマやっちまえ!!」
男の叫び声。それに、スティグマという言葉。もしかして華光は……
「ステージからよ!」
私たちはステージへと向かった。白い廊下を走りながら思う。華光からの電話はかなり雑音が多く混じっていた。それは、お客達の声ではなかったのだろうか。
「あれは……」
ステージ上には黒い服を着た男が居る。観客席にはお客とスティグマ。全部で5匹。そのうちの1匹と魔法少女に変身した華光が戦っていた。黄色とリスをモチーフにした衣装を着ている。
「私たちも」
神凪の指示に全員が頷いた。私は結翔と一緒にステージの上側からスティグマの方へと向かう。男は高笑いをしいた。
「魔法少女1人で頑張ったって無駄だ!」
無駄じゃない事教えてやるよ。今に見てろよ!
「結翔くん、あそこで降りよう」
「はい」
私はステッキを構えて、スティグマの真上に落ちた。思っきり脳天から蹴りをプレゼントし、ステッキで殴る。結翔も同じようにスティグマに蹴りを加え、床に降り立つ。
「なっ、なんだお前達!?」
「途羽ちゃん!結翔くんっ!」
叫ぶ男を隠すように華光は近づいてくる。
「華光さん、状況は?」
「数名の観客があの男に刺されて重軽傷。その影響でスティグマが出現……ってところかなっ……」
スティグマに攻撃しながら華光は力無く言った。観客を守れなかった事に責任を感じているのだろう。スティグマの攻撃を受け流しながら私と結翔はスティグマを攻撃する。最後に心臓部分にステッキをぶち当て、スティグマは倒れた。結翔や神凪、蓮香も終わったようで一息ついている。最後は華光が対峙している1匹だけだ。素早くスティグマを倒した神凪と蓮香が観客とけが人を避難させた用で、私たち魔法少女、魔法少年以外その場にはいない。
「華光さん!思いっきりやっちゃってください!観客の仇を!」
私はそう叫んだ。私の言葉を聞いて、華光は目を見開いた。そして、その後キリッとした顔になり、ステッキを握り直した。
「ありがとう。途羽ちゃん。なんかスッキリした。今はとりあえず……」
華光はスティグマとステージ上の男を交互に見た。
「あいつらをぶちのめしたい」
華光は低い声をそう言うと、高く跳躍した。ステッキから黄色の光を放ち、スティグマに当てた。黄色のエフェクトが辺りに舞う。そのままステッキで殴って追撃を食らわす。2分ほど殴り続け、終わる頃にはスティグマは原型を留めていなかった。
「最後は、あいつだ」
華光はそう言ってステージ上を見た。だけど、そこに男の姿はなかった。
「まさか……あいつ逃げたっすか!?」
「でも、ここに来る途中、鍵は全て施錠して来ました!逃げれるはず無いです……」
蓮香と結翔が声を上げた。神凪も何やら考え込んでいる。――逃げれるはずのないステージ。……まさか……
「皆さん!辺りを警戒してくださ……」
………………私は見てしまった。
「……ごふっ」
華光の腹から刃物が突き出ている。華光が口から血を吐き出して倒れた。頭が真っ白になった。だって、人が傷つけられるのを見たのは初めてだったから。昔、昔に大量の血を見たことはあった。昔、私は交通事故にあったことがある。信号無視の軽自動車と衝突してしまったのだ。その時に私は全身の骨折と大量出血で死にかけた。その時だけだ。こんな大量の血を見たのは。
「……途羽さん!」
「……はっ!」
結翔にゆすられて私は目を覚ました。周りは白い壁、消毒の匂いが漂っている。
「もう……起きて良かったです…途羽さん、帰ってきてからずっと眠ってたんですから」
結翔に聞くと、華光のあの現場を見て、私は今の今まで気絶していたらしい。
「そうだ……華光さんは!?」
「華光さんは、昨日手術を受けて、今は……」
結翔は近くの病室の扉をスライドしてあけた。そのにはベッドに座って、蓮香とババ抜きをしている華光の姿があった。
「あの通り、ピンピンしています」
結翔は苦笑した。でも、嬉しそうだ。私も嬉しい。
「やっほー。2人とも」
その場にふらっと現れたのはリーダーの錨 朔夜だった。
「リーダー。なにか分かりましたか?」
結翔はおずおずと朔夜に聞く。朔夜は結翔の頭を撫でて言った。
「華光や観客を刺したあの男は警察が尋問してて、僕も特別に内容を聞かせて貰ったんだ。そしたらね男が自白したよ」
朔夜が真剣な顔で話す。
「自白って……何を……ですか?」
私は朔夜に聞く。すると、朔夜は困ったような顔をした。
「魔法少女、魔法少年の殲滅さ」