第4話 途羽と書いてだいすきと読みます
今回は、迷走してながら書いてた記憶です。
「ってことでー、魔法少年希望の朝比奈 結翔くんでーす!」
「何がってこでーよ。何をしたら初仕事で人拾ってくるのよ」
私の言葉に緑のショートカットの先輩、御影 神凪が頭を抱えて言った。貴女も私を拾ってきたでしょうに。
私は、九十九 途羽。高校1年生で、魔法少女をしている。私の隣にいる桃髪で深い緑の瞳をした男の子は朝比奈 結翔くん。私の初仕事にて、その場に居合わせた子だ。なんだか、デジャブを感じたので、魔法少女の本部に連れてきたのだ。気弱な性格の子みたいで、ここに来てからずっと私の後ろに隠れている。
「あっ、ちなみにリーダーには魔力の水晶を触らせてもらって、許可を貰い済みです!」
「無駄に手際がいいわね!」
「いやー……それほどでもあります!」
「あるんかい!」
神凪とこんな会話したの初めてだな……やっぱり神凪はツッコミ役のようだ。
「日本の魔法少年は結翔くんで2人目だねぇ!」
金髪をお団子に結んだ現役アイドル魔法少女の月城 華光は手を合わせて嬉しそうに笑った。魔法少女、魔法少年になれる人間は極わずかだと言う。この魔法少女達のオフィスで働いている人達も魔法少女、魔法少年を希望してやってきたが、素質がないと判断された人達だ。だけど、魔法少女の私にも優しく接してくれる。
「あの……この後どうするんですか?」
おずおずと結翔が私に聞いてきた。私は結翔の腕に目線を移して、また戻した。
「まず…………」
結翔に私、神凪、華光がニッコリ顔で近づく。私達が1歩進むと結翔は1歩下がった。そして、結翔の腕を掴んで、袖をまくった。傷だらけの腕が露わになった。
「まずは病院……かな!」
ー
「こりゃ酷い。腕と足しかまだ見てないけど、背中とかもっとあるんじゃない?」
丸椅子にちょこんと座っている結翔くんをメガネを掛けたおじさん医師が診ている。本人に聞くと、どうやら虐待を受けていたらしい。消毒されてる度にびくっと肩を震わして居る。今までどれだけ痛かったのやら。児童相談所に相談すればいいんじゃない?よく言われているけど、自分から行動に移すのは難しいんだろうな。
医師のおじさんに言われて私は診察室の外に出ていた。
「結翔くんの学校には報告したよぉ!かこーの名前出したら、直ぐに校長がでてくれたよっ!」
「こっちも、児相に繋がったわ。対応してくれるらしいわ」
「良かった……でも、これって結翔くんは施設に行くって事になりますよね……」
「そうね」「そうだねぇ」
うーんと3人で頭を捻る。親が逮捕されて、急に妹と一緒に施設に行けって言われてもね……しかも、妹と仲悪いみたいだし……
「じゃあ、うちに来ればいいんじゃない?」
「「「リーダー!」」」
私達の目線の先には深い青色の髪と赤色の瞳をした魔法少女、少年達のリーダー兼魔法少年の錨 朔夜が胸をふんっ!と張って立っていた。
「うちのオフィスは部屋がまだいっぱいあるからね!住むスペースはバッチリさ!キッチンやお風呂もあるから、住むのにも困らないし!第一、ボクが住んでるよ!」
「それ、大丈夫なんでしょうか?」
「問題ないよ!………………タブン」
「それ、良くないやつですよっ!」
神凪と華光が声をあげる。私は結翔がいいならなんでもいいんだけど……
「あの……終わりました……」
ぎゃあぎゃあと騒がしい中、結翔が気まずそうに顔をひょっこりと出した。その後、私にぎゅっと抱きついてくる。傷の消毒が相当痛かったのかな。そのあと、頭をぐりぐりと押し付けてくる。何この可愛い生き物!とりあえず、頭を撫でてあげた。結翔くんの耳が赤いって感じたのは気のせいかな?
ただ、その間も朔夜の提案に神凪と華光は頭を捻らせていた。
ー
「僕、ここに住んでもいいんですか?」
「勿論!ここにはボクも住んでるから危険も無いよ。それに、君も魔法少年だしね」
登録はまだだけど、と朔夜は結翔に笑って見せた。結翔も朗らかに笑った。………………だけど、結翔が病院からずっと私に抱きついてるのは何なんだろう。
「ねぇ、結翔くん」
「ん?なんですか?」
抱きついたまま、結翔は聞き返す。
「……なんで、この状態のままなの……?」
「なんだか、安心するんです。ぽかぽかして温かくて、太陽の匂いがするんです」
ぎゅーっとまた結翔は抱きついた。うーんと、これって私の事じゃなくて、服の事を言ってるんだよね?いや、多分そう。そうだと思おう……
(僕って、独占欲強かったかな……?)
ー
「採寸終わったわよー!」
オフィスの2階の衣装作り室にて、結翔は採寸を受けていた。というか、終わった。私は近くの机に座ってお茶を飲んでいる。
「これから、衣装作るんだけど、結翔くん、何か希望はあるかしら」
そう言って結翔に笑いかけるのは私の衣装直しをしたり、採寸をしてくれた衣装係の春さんだ。春さんの質問に結翔は笑って答えた。
「あの、僕、魔法少女途羽の衣装とお揃いにしたいんです」
「ぶふぉ!」
ゲホゲホとむせる。お揃い!?嘘でしょ。てか、なんで結翔はちょっと赤くなってるの!
「わかったわ。とお揃いにしとくわね」
なんで、春さんもあっさり承諾してるの!?………………もういいや……どうにでもなれ……
ー
「おー!2人とも!服完成したんでしょ!僕も行くよっ!」
あの日から1週間後、私と結翔は春さんの所へ向かっていた。衣装が完成したからだ。で、今華光と会ってこの状態な訳。
「てか、結翔くん、途羽ちゃんとお揃いにしたんでしょ?絶対気があるよーっ!」
耳打ちしてくる華光。んなわけないじゃんか。
「お姉ちゃんみたいに見てるのでは?恐らく恋愛感情では無いと思います」
「そうー?」
華光は恋バナとか、その手の話が好きそうだな。
そんな事を話していると、衣装作り室に到着した。
「あら、来たわね。出来たわよ。衣・装」
「……」
トルソーに掲げられた衣装は私の衣装をまんま男の子用にした感じだった。
「色は結翔くんの髪の色のピンクで、テーマは王子×おばけ!途羽ちゃんの衣装が姫×おばけだからね。あと、奇跡的に途羽ちゃんの髪色も水色で対だし」
ちなみに、今日届いた結翔のステッキも金の棒にピンクの星型の石が嵌められたデザインで、これまた私の対だ。
もう、ほんと、何が何だか……
「おっ、目がキラキラしてる。気に入ったんだねっ!」
「はいっ!すっごく!」
君は何故こんなに目をキラキラさせているのかい?
「私がステッキに登録するよ」
華光がステッキを持って、衣装に当てた。私の衣装の時と同じく、眩い光が溢れ出した。
光が止むと、トルソーから衣装が消えていた。
「衣装はステッキに吸収されたんだよ」
結翔に教える。納得したようでうんうんと頷いていた。華光からステッキを受け取ると結翔は誇らしげに掲げた。
「僕も魔法少年……」
「そういえば、服お揃いなんなら、2人とも、相棒……かなっ!」
この華光による相棒宣言がこの後にめんどくさい事になる事を私は知らない。
途羽ちゃんは鈍感です。鈍感というか、好意に気づかないフリをしてるちょっと不器用な子です。