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第3話 魔法少女途羽☆

今回は、少し短めです。

華光(かこう)さんがスケッチに書いた通りの出来ですね!可愛い」

金髪の現役アイドル魔法少女の月城(つきしろ) 華光がスケッチし、完成したステッキがオフィスに届いていた。スケッチ通り、銀色の棒にハートの形の水色の石がはめ込まれている。同様に衣装も完成し、私の後ろにトルソーで飾られている。

「でしょ!衣装直しも途羽(とわ)ちゃんが手伝ったし、途羽ちゃん好みに仕上がったと思うよぉ!」

確かに、前は少しシンプルな作りだったけど、今はフリル、リボンのサイズアップ等、私の好みを詰めて詰めて詰めまくった衣装が完成している。

「あら、色々出来上がったのね」

「やっほー!ボクもいるよー」

衣装室に緑髪の魔法少女の御影(みかげ) 神凪(かんなぎ)と深い青髪のリーダーの魔法少年の(いかり) 朔夜(さくや)が入ってくる。朔夜を除き、華光を入れると見慣れたメンツだ。

神凪と朔夜は、華光が持っていたステッキを持つと衣装にステッキを当てた。すると、ステッキから眩い光が降り注ぎ、衣装が消えた。

「えっ!衣装は何処にいっちゃったんですか?」

あわあわとする私に神凪が声をかける。

「大丈夫よ。衣装はステッキに吸収されたの。この吸収が無いと、メタモルフォーゼって言っても変身出来ないからね」

「へぇ……」

そういえば、ステッキに衣装を登録するとかどうのこうの言ってたな……

「これで、使えるようになったよ。正式に魔法少女途羽は戦えるようになったわけだよー」

朔夜はその場でくるりと回ってステッキを私に渡した。

「私も正式に魔法少女……!」

スティグマは怖いけど、絶対に色々な人の心を守って見せる!

朝比奈(あさひな)!今回も学年1位だ!おめでとう。お前の妹も優秀だし、お前たち兄妹はうちの学校の誇りだぞ」

そう言って先生は、僕に成績表を渡した。僕は朝比奈(あさひな) 結翔(ゆいと)。中学3年生だ。

「……ありがとうございます」

僕はそう言って、職員室を出た。靴に履き替えて、帰路に着く。桜を夕日が淡いオレンジに染めていた。学校から家は近く、10分も歩けば着く距離にある。

「…………ただいま」

僕はそう言って靴を脱いだ。当然、家族からの出迎えなんて無い。

「ただいま!」

僕が玄関に上がってすぐに、妹が帰ってきた。すると、1分も経たずに両親がリビングから顔を出した。

「おかえり、結夏(ゆいか)

両親はそう言って、妹を抱きしめた。僕はそのまま部屋へと向かう。両親と妹が僕に軽蔑の視線を向けていることぐらい、気づいていた。

結夏は2歳離れた妹だ。可愛くて、生まれた瞬間から、僕は除け者になった。

それから、何度も何度も家族の絵を描いたり、学年で1位をとったり、テストで100点をとっても、妹には勝てなかった。

だから、それ以来、テストも成績表も通知表も何も見せていない。家族の影として生きてきた。これからも、そう生きる。

「……ねぇ!お母さん!お父さん!私、お兄ちゃんなんていらない!なんでいるの!?」

リビングから妹の声が聞こえる。

「……そうね…学費とかを泥棒するやつだし……」

「居なくなっても困らないな」

両親は、妹を擁護している。残念ながら、全て筒抜けだった。両親は、今日辺りに僕を殺そうとするようだ。方法とかはどうでもいい。わかるのは、家族が僕を殺そうとしているという事実だけ。

「…………逃げなきゃ」

おかしいな。今までそんな事、思いもしなかったのに。体が動いて、逃げていた。靴も履かずに外をずっと走って。どのくらい逃げたかな。ここ、どこだろう。辺りを見渡した時だった。奥からサラリーマンが歩いてきていた。顔色は異常に悪く、何かうわ言のように呟いていた。そして、その後ろには、黒い塊が着いてきていた。その塊は目が3つ出来て、僕に向かってきた。慌てて横に避けた。塊は民家の塀に辺り、べちゃりと潰れた。

「大丈夫……かな……」

そのまま、その場に座り込んでしまった。気力が大幅に削られたような気がした。これから、どこへ行くべきかな。立った時だった。

「あ……」

塊が浮いていた。さっきの塀を見る。黒いシミだけを残して、潰れたモノは無かった。塊に大きな口が出来る。口角を上げ、それは僕に近づいてくる。

――食べられちゃうの?

――この化け物は一体なに?

「やあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

叫び声と共に塊が飛び散った。綺麗な水色のエフェクトのようなものが舞った。目を見開く僕の前に現れたのは、長い長い水色の髪をした女の子。おばけを思わせるドレスのような服を着て、銀色のステッキを持っていた。

「確か……神凪さんに徹底的にやれって言われたっけ」

えい!と女の子はジャンプして散った塊を踏んずけて回っていた。

そして、全ての散った塊を踏んずけ終えると、片手で汗を拭きながら、僕の元へ来た。

「大丈夫?」

「………………君は……?」

咄嗟に聞いていた。女の子は心配の声をかけてくれていたのに。でも、女の子は顔色変えず、代わりに少しにやっとして答えてくれた。

「…………魔法少女……かな!」

そのまま女の子は笑った。綺麗だなと思った。その時、ボフっと言う煙と共にさっき見ていた女の子とは違う子が姿を現した。どこにでも居そうなごくごく普通の水色髪の女の子。

「……あっ、やっぱり普通の途羽デス……」

女の子はくにくにと指を動かして気まずそうに言った。

「同じ、女の子……?」

「……?そうだよ!私九十九(つくも)途羽!魔法少女してるよ!」

途羽さんはそういった。

「あのサラリーマンの人はダメだったよ。既にスティグマに心を食べられて鬱病になってた」

はぁ……とその子はため息を着いて、救急車を呼んでいた。

「スティグマ……?」

思わず聞き返すと、はっとした様に途羽さんは答えてくれた。

「スティグマはね、人の心を食べちゃう怪物なの。私達魔法少女の仕事は、そのスティグマを倒す事なの!…………あっ、そうだ、名前は?」

そう言って、途羽さんは僕に手を差し伸べてきた。

「……朝比奈 結翔です……」

そして、その手を取った。そのまま、途羽さんが立ち上がらせてくれる。

「結翔くん!可愛い名前だね!」

……どちらかと言うと、かっこいいって言われたいもんだけれど……

「あっ、神凪さんから帰ってこいって……もう、こっちも初仕事で忙しいのに……」

ぷんすかと怒りながら、その子は浮いているステッキに乗った。浮き上がろうとした時に、僕は女の子の服を掴んで言った。

「君みたいに特別になるには、どうしたらいいですか!」

「……!………………ふふっ、私と同じだ。」

途羽さんはくすりと笑うと、僕の手を引いてステッキに乗せた。

「まさか、初仕事で自分と同じような子を拾うことになるとは……」

飛びながら途羽さんは言った。

「えっ、えっと、何処に向かってるんですか……?」

慌てふためきながら僕はそう聞いた。途羽さんはにやりと笑う。

「魔法少女の本部……かな!」

軽い顔で、その人はそう言ってのけた。

次回から、語り手途羽ちゃんに戻ります

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