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第九話 人造人間を倒せ

 宿から出た三人は気配を消して、建物の影から街の様子をうかがっている。


 この時代は山城国と呼ばれていた京都の街も、すでに異界の侵略者に制圧されていた。しかし、異界の者たちもこの歴史ある街を気に入ったのか、建物までは破壊しなかったようだ。


「やはり山城は大きな国だけあって、異界の奴らが多い。だが、建物が残っていたのは好都合だ。身を隠しやすいからな。気配を消して、なるべく見つからないように進んでいこう」


 三人は建物の影に身を隠しながら、硬貨が指し示す方向へと進んでいく。やがて、山中にある洞窟の前へと到達した。


「なんの変哲もない洞窟に見えるが――。この洞窟の中に子供たちがいるんだな?」


「ええ、間違いないわ。敵と一緒にね」


「そうか。なら、敵に気づかれないように、気配を消して、慎重に中を進んでいこう」


「この間使った蝋燭を持ってきて正解だった。今、火をつけるよ」

 

 子供たちの居場所がわかった三人は、洞窟の奥へと進んでいく。洞窟の奥には、地下へと続く階段があった。


「この下はおそらく、敵の本拠地だ。間違いなく戦闘は避けられないよ。しっかりと戦う準備をしてから、突入しよう」


 階段を降りた先は、広いホールのような空間となっていた。地下にも関わらず、その空間には照明が付けられていて、まるで昼間のように明るい。そのため、ホールの奥に、機械で制御されていると思われる扉があるのが入口からも確認できた。


 その扉の前には、全身に黒いローブを纏った二人の人物が立っている。


「入口に見張りが二人か、どうする?」


 しかし、入口にいた二人は侵入者に気づき、三人が身構える前に素早く接近してくる。


「バカな? 完璧に気配を消していたのに、見つかっただと?」


「くすくす、君たち、ここは立ち入り禁止だよ」


 三人を侵入者と認識した黒いローブの二人は、接近しながら閃光魔法を連続でサクラたちに放った。


「あの鬼の女たちと同じ魔法だ。それならば……」


 サクラとカイトは、オーガの三姉妹との戦闘経験をもとに、男たちの攻撃を回避していく。彼らの閃光魔法はまっすぐにサクラたちを狙って飛んでくるため、二人はタイミングよく身体を横にずらすだけでこの攻撃を上手く回避できた。


「あなたたち、やるじゃないの!」


 敵の攻撃を簡単に回避する二人に、レイカは思わず声をかけた。


「へえ、君たち、思ったより強いんだねえ。でも、攻撃をかわしているだけじゃ、ボクたちには勝てないよー」


 ローブを纏った男たちは、そんな二人の様子を見ても、ケラケラと笑っている。


「舐めるな! すぐにあの世に送ってやる!」


 閃光魔法をかわしたあと、素早くローブの男の一人に接近するサクラ。手に持ったクナイにチャクラを込めて、確実に男の首を突き刺す。


 だが――。


(おかしい。こいつ、私の攻撃を避けなかったぞ?)


「今のは迷いがなくていい攻撃だったよ。だけど、残念だったねえ。僕たちはほぼ不死身なんだ」


 首を突き刺されたはずの男は、ローブで隠していた尻尾でサクラを攻撃した。


「サクラ、危ない!」


 この攻撃に反応したカイトがからくりの矢で男の尾を撃ち抜いた。


「ありがとう、カイト!」


 サクラはカイトの援護攻撃に感謝した。カイトの攻撃が無ければ、彼女の身体は間違いなく敵の尖った尾で貫かれていたからだ。


「へえ、君もやるじゃないか。でも残念。ボクたちには自己再生能力があるんだ。君たち人間と違ってね。だから、首を貫かれても全然平気なのさ」


「くっ! やはり人間では無かったか!」


 二人は、異界の科学者によって創り出された、人造人間だった。彼らは、人間や魔物の細胞と機械のハイブリッドで作られている。そして、二人の尾の先端には鋭い針のようなものがあり、人間や魔物から魔力を奪って吸収する機能がついていた。


「あの尻尾、危険だ。先端が尖っているのもあるが、それ以上に、なにか嫌な感じがするんだ。とりあえず距離をとって様子をみよう」


「わかった。それなら俺に任せてくれってばよ」


 カイトはからくり弓を連射モードに切り替える。弓から連続で発射される矢は人造人間たちを正確に捉えている。今度は彼らがカイトの攻撃をかわしている。


「へえ、その武器、連射も出来るのか。さすがに連続で矢で攻撃されたら、君に近づけないなあ」


「だけど、問題は無い。矢の数には限度があるから、かわし続けていれば、そのうち攻撃は止むからね。それで、君たちは終わりだよー」


 人造人間たちはカイトの撃つ矢を避けながらも、余裕の笑みを崩さない。


「そろそろ、矢が切れるころ……あれ? 身体が……」


 人造人間の一人の動きが、突然止まった。


「クナイには猛毒を塗ってあるんだ。私たちをなめて、攻撃を避けなかったのが仇となったな」

 

 生物ベースで作られている人造人間は、毒の影響を受けて、身体の動きが鈍くなっていた。


「猛毒だと? ふざけやがって!」


 激昂した人造人間がサクラに襲いかかる。


 サクラに攻撃を仕掛けようとする瞬間を見逃さなかったカイトは、素早く毒のついた矢を人造人間に撃つ。すでに攻撃の体勢に移っていた人造人間は、この矢を回避することができなかった。矢は、彼の首を正確に撃ち抜いた。


「さすがだよ、カイト!」


「よくも、よくも仲間をやってくれたなあああ!」


 同胞を破壊されたことで、激昂しながら襲いかかってくる人造人間から素早く離れる二人。毒の影響からか、この男は先ほどよりも、さらに動きが鈍くなっている。


「猛毒を喰らって身体の動きが鈍っていても、諦めずに攻撃してくるとは……」


 感心したサクラだが、彼女は手負いの相手にも、気を許すことは決してない。人造人間はしばらくサクラたちを攻撃したが、もはや二人にそれが当たることは無かった。やがて、もう一人の彼も動かなくなった。


(ほう、手を貸してやるつもりでいたのだが、私が手を貸す前に毒を使って倒すとは思わなんだ。やはり、こやつらについてきて正解だったな)


 サクラたちの戦いぶりを見ていたレイカが、静かにほくそ笑んだ。

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