第八話 敵地への潜入
サクラとカイトは、同行することになったレイカにこれまでの状況を説明している。
「実は、村の子供たちが奴らに拐われちまったんだ。だから、まずはその子たちを助けに行きたい」
「なるほど。それは大変だな。それで、子供たちの居場所のあてはあるのか?」
「いや、まったくわからねえ」
カイトは俯いてしまった。
「なるほど、君は正直でいいな」
レイカがくすくすと笑う。
「それなら、私が占いで居場所を探し出してみようか?」
「あなた、占いができるの?」
「ああ、簡単なものさ。これを使う」
レイカは鞄から地図と紐のついた硬貨を取り出した。
「その紐に付いているものは何なんだ?」
カイトは初めて見る硬貨に興味をひかれている。
「ああ、それは銅銭といって、いろんな物と交換することができるの」
「この国では、今は銅銭はほとんど使われていないからな。君が知らなくても無理はない。これはかつて海の向こうにあった大国で使われていた宋銭というものだ。これから私はこの地図の上にこの銅銭を紐でたらす。後は、子供たちのいる場所で銅銭が動くように、私の予知能力を強化して、居場所を探り当てるんだ」
「へえ。こういう占い方があるのね。私、知らなかった」
レイカは地図の上に銅銭を垂らして意識を集中させた。やがて、地図上の硬貨は、現在の京都の上で大きく回転した。
「なるほど。どうやら子供たちは今、山城国にいるようだ」
「山城か。ここからだとかなり遠いわね。どうする?」
「私の術で君たちをそこまで連れて行こう。私は鏡を使って、任意の場所にある鏡に移動する術が使えるんだ」
「そんな便利な術があるなんて、信じられないけど」
「鏡のある場所にしかいけないけどね。まあ、見ていてくれ」
レイカはかばんから大型の丸い鏡を取り出す。レイカが鏡の表面に触れると、鏡が虹色に輝き出した。
「何これ、すごい……」
サクラとカイトは鏡の中に全く別の光景が映り出したことに驚いている。これならば、鏡の中に入り込むこともできそうだと、二人は納得した。
「この術は鏡と鏡を繋ぎ、移動することができる。今、この鏡を山城国のどこかにある鏡と繋いだ。つまり、この鏡の中に入れば、たちまち山城へと行けるわけだ」
「なるほど。それじゃあ、早速そこにいって、子供たちを助け出すってばよ!」
三人は鏡の中に入り込む。入り込んだ先は、とある旅館の一室だった。
「どうやら旅館の客室に置いてある鏡と繋がったようだ。ここからは、先ほど使った銅銭に私のチャクラを流し込んで、子供たちがいる場所の方角を探ってみよう。銅銭の指し示す方向へと進んでいけば、彼らの居場所へと辿り着くだろうからな」
「お願いします。一刻も早く、子供たちを助けてあげたいんです」
三人は、敵に見つからないように気配を消しながら、慎重に旅館を後にした。