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第七話 謎多き女性との出会い

「向こうに採掘場が見える。行ってみよう」


「ああ」


 二人は村の北の鉱山にある採掘場へと向かった。採掘場の周辺では、山肌が綺麗に削り取られていて、まるで古代の遺跡のようになっている。


「人の気配が感じられないな。廃坑になっているわけではなさそうだが……」


 サクラは周囲を見回しているが、やはり、人がいる様子は無かった。


「サクラ、こっちに洞窟があるぞ」


 カイトのいる方に目をやると、明らかに人間の手が加えられた洞窟があるのが見える。


「これは坑道だな。中に入って、お目当ての蛍石がないか、確かめてみよう」


 サクラは坑道の中を覗き込む。洞窟の奥は、吸い込まれそうな暗い真っ黒な闇が広がっている。


「やはり、中は暗いな。忍術で炎を出しながら進むしかないか。でも、なるべくならチャクラを温存しておきたいけど――」


 サクラは、オーガたちと戦いを思い出していた。同じような強敵に遭遇した時のことを考えて、今はなるべく余計なチャクラを使用することを控えたかった。


「サクラ、こっちの倉庫に来てくれ。中に蝋燭(ろうそく)と火打石がある。これで洞窟の中を照らそう」


 カイトは、坑道の隣にある倉庫の中に蝋燭と蝋燭台があるのを見つけていた。


「なるほど、ここには坑道で作業をするための道具が置かれているようだ。とりあえず、必要なものを借りていこう。石を掘るために、つるはしも持っていこうか?」


「いや、つるはしは重いし、力の加減が難しい。なるべく石を傷つけずに採取したいから、俺はこの鉄梃(かなてこ)あたりがいいと思う」


 鉄梃は平らなバールのことで、携行する時もそこまで邪魔にはならない。


「なるほど。それじゃあ、ここから鉄梃と金槌(かなづち)を持っていくとしよう」


 炭鉱の入口で、カイトが火打石を使って蝋燭に火をつける。蝋燭に灯った火が、周囲を優しく照らし出した。


「こないだ盾を作った時も思ったけど、やっぱりカイトは手先が器用だな。火打石で蝋燭に火をつけるのだって、難しいのに」


「そうかあ?」


「一発で火花を芯に飛ばして着火させただろう? なかなかできるものではないよ」


「それはどうも。俺、あんまり褒められたことがないから、うれしいよ」


 カイトは照れくさそうに頭をボリボリとかいている。


(私は忍術に頼りすぎていた。忍術を使わなくても、カイトのようになんでもそつなくこなすようにならなくてはいけないな)


 サクラは心の中で、自分に足りないものを気づかせてくれたカイトに感謝した。


 炭鉱の中はひんやりとしていて、薄暗い。蝋燭の炎では、遠くまでは照らせていない。だが、チャクラを温存したいサクラは、あえて忍術で炎を出すことはしないようにした。


 しばらく進むと、淡い緑色の鉱石が壁面に現れた。


「綺麗な石だな。これが蛍石なのか?」


「それで間違いないとは思うけど、一応確認してみよう。蛍石には、簡単な見分け方があるんだ」


 サクラは壁面の鉱石に蝋燭の火を近づける。しばらくすると、熱せられた部分が、青白く光だした。


「蛍石は加熱すると、まるで蛍のように青白い光を放つ。だから蛍石というらしい。私も、実際に光ってるのは初めて見るよ」


「なるほどなあ。そんな見分け方があるなんて、知らなかったぜ。それじゃあ、壁を砕いて破片を持ち帰ろう」


「――静かに。誰かがこっちへ向かって来ている」


 サクラはチャクラを耳に集中して聴力を強化していた。


「静かに歩いているが、確かに足音がする。間違いなく人間の足音だ」


「わかった。身構えておくよ」


 カイトはカバンからからくり弓と矢を取り出して、腕に装着する。


 しばらくすると、一人の若い女性が二人の前に姿を現した。


「あら、こんにちは。あなたたち、蛍石を採りに来たの?」


「そうですが、あなたは?」


 二人は警戒しながら女性に返答する。


「ふふ、心配しなくていいわ。私も蛍石を採りに来ただけ。そして、私はあなたたちの味方よ」


「――魔物化はしてないようね」


 女性の身体は人間そのものだ。だが、どことなく妖艶な雰囲気を出している。


「異界の鬼どもと一緒にしないでもらいたいな。私は奴らからこの国を取り戻すためにここに来たんだ」


「私たちと同じね。あなたも蛍石で何かを作ろうとしているの?」


「そうだよ。私は、時の秘石を作ろうと思ってね」


「時の秘石?」


 予想していなかった解答に、サクラは困惑した表情をしている。


「おや、知らなかったのか。君たちは蛍石で何か別なものを作ろうとしていたようだね」


「ああ、俺たちは蛍石で、異界の奴らが使う魔法とかいう奇術を吸収する魔封じの宝珠を作ろうとしているんだ」


「それは興味深い。よかったら、私と手を組まないか? 実は、私は隣の大陸の出身なんだが、この日本が好きになってね。さっきも話したが、異界の者たちからこの国を取り戻したい気持ちは君たちと同じさ」


 若い女性は二人の前に両手を軽くあげて、敵意がないことを証明しながら答えている。


「それで、あなたは時の秘石を使って、どうやってこの国を救うつもりなの?」


「時の秘石があれば、時を自在に操れる。時を遡って、あの忌々しい天の裂け目ができる前まで戻って奴らを倒すのさ」


「本当にそんなことができるなんて、信じられないけど。でも、私たちのことも手伝ってくれるなら、あなたと手を組んでもいいわ」


「それでいいよ。私はレイカだ。二人ともよろしく」


 サクラたちは目の前に差し出されたレイカの手を握りしめた。二人はまだ女性のことを疑っているが、他に解決策が無いので、とりあえず、共に行動することを決めた。

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