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第四話 魔封じの宝珠

 サクラは村で唯一生き残った少年の元に駆け寄り、忍術の炎で彼の身体に絡みついた蜘蛛の糸を燃やして救出した。


「君、大丈夫か?」


「ああ。助けてくれて、ありがとうな」


「私はサクラ。私の暮らしていた忍びの里もあいつらに襲撃されたんだ。今は仲間の無念を晴らすため、奴らと戦っている。それで、君はこれからどうするつもりだ?」


 サクラは少年に問いかける。


「――俺の大好きな父ちゃんと母ちゃんを、村のみんなを奪ったあいつらに復讐する。そうしないと……俺の怒りは収まらねえ」


 少年はサクラの眼をまっすぐ見据えながら、返答した。


「そうだよな。なら、一緒に戦おう。奴らを全員殺して、この無念を晴らしてやるんだ」


「俺はカイトだ。サクラ、俺たち二人でこの国からあいつらがいなくなるまで、戦い続けよう」


 二人はがっちりと手を握り合った。


◇◇◇


 その日の夜、カイトとサクラは森の中で焚き火をしながら、お互いの境遇について話をしていた。


「なるほど、カイトはからくり使いだったのだな」


「ああ、俺の爺ちゃんはからくり仕掛けの道具を作るのが得意だったんだ。その爺ちゃんが遺してくれた設計図があって、それを見ながら俺は自分でからくりを作っている」


 サクラは、カイトの持っているからくりの弓矢が、自身の前世の記憶にある異界の武器にそっくりなことに驚いていた。


「こんなことを言うと笑われるかもしれないが、聞いてくれ。私にはこの日本ではない、他の世界に住んでいた記憶があるんだ」


「――笑ったりしねえよ。俺もたまに変な国で暮らしてる夢を見るからな」


「そうなのか。これは前世の記憶ってやつなのかもしれない。カイトの使っているそのからくり弓は、私の記憶の中の世界では、クロスボウという名前で呼ばれていた。しかし、カイトのもののように、矢を連続で発射できるものは私の記憶にもない」


「へえ、クロスボウっていうのか。かっこいい名前だな。もしかしたら、俺の爺ちゃんにもサクラと同じように前世の記憶があったのかもな」


(彼の祖父は、私のように異界からの転生者か転移者の可能性があるってことだな……)


「なあカイト。後で君のお祖父さんの残した設計図を見せてもらえないか? 私の前世の記憶と照らし合わせてみて、その中にあいつらに対抗できるからくりがあれば、一緒に作りたいんだ。侵略してきた奴らに対抗できる切り札になるかもしれないからね」


「わかった。設計図は俺のかばんの中にあるんだ。今見せるよ」


 カイトはかばんから古びた冊子を取り出すと、サクラに手渡した。


「これがそうなんだね。ありがとう。読ませてもらうよ」


 サクラは冊子を開いた。冊子の中には丁寧に描かれた図面と、説明が書かれている。


(やはりこれは錬金術をベースに描かれているようだ。アイテムの説明なども、私の記憶にあるものと同じだ)


 しばらく冊子を読み込んでいったサクラは、その中に興味深いアイテムの記述を発見する。


「なあカイト。これ、どう思う?」


 サクラは冊子の中の宝珠の図を指差す。


「ああ、確か魔素だか魔力だかを蓄える宝石だよな? 使い道が無いみたいだけど……」


「いや、ある。異界から来た奴らは魔法という奇術を使うだろ? その力の源がこの魔力なんだ。私たち忍者はそれをチャクラと呼んでいる」


「つまり、どういうことだってばよ?」


「この宝珠を作ることができれば、奴らの魔法を吸収して、無効化できるってこと。魔封じの宝珠として使えるんだ」


「そいつはすげえ。これって、そんなすごい道具だったんだな」


「この宝珠はあいつらを倒すための切り札になる。とりあえず、作成に必要な素材を集めてみないか?」


「わかった。この冊子に書いてある素材がどこで入手できるかは、一番最後の地図にまとめて書いてあるんだ。それをみて、探しにいこう」


「へえ、素材の入手場所を地図に書き残すとはね。君のお祖父さんは抜け目がなかったようだ。それじゃあ、まずは宝珠に必要な素材を確認しよう」


 二人は、魔法を吸収する効果がある宝珠を作成するために必要な素材を集めることにした。設計図によると、どうやらこの宝珠の作成には蛍石という鉱石が必須となるらしい。


「とりあえず、この地図に書いてある鉱山に行って、蛍石を手に入れよう」


「蛍石っていうのは、鉱山にいけば簡単に手に入るものなのか?」


「わからない。私たちだけでは採集が難しければ、地元の人間と取引するしかないだろう。奴らに襲われていなければの話だが……」


「そうだよな。ま、とりあえずそこに行ってみようぜ。行ってみなきゃ、始まらねえものな」


「あとは、この冊子の中で、簡単に作れるものは今作っておこう。何かの時に役に立つかもしれない」


「ああ、俺は忍術は使えないから、からくりで戦うしかないからな」


 カイトは手持ちの材料を使い、敵の攻撃を防ぐための盾を作った。これは、異界ではバックラーやラウンドシールドと呼ばれている丸い盾だ。


「さっきの蜘蛛女との戦いで、敵の攻撃を防ぐ防具が必要だと実感させられた。俺はサクラみたいに素早く動いて攻撃をかわせないからなあ。盾があればある程度の攻撃は防げるから安心だ」


「丸盾は敵の武器にぶつけて攻撃を弾くように使うんだ。盾自体を武器のように使うこともできる。いい防具だよ」


(手持ちの道具とあり合わせの材料だけで、これほど立派な盾を作るとは思わなかった。カイトにはモノづくりの才能があるんだな……)


 十分に休息をとってから、二人は地図に記載されている鉱山の近くの村へと向かった。

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