第二話 からくり使いの少年
夜の森に、異様な気配が満ちていた。木々の間を抜け、サクラは静かに森を進んでいく。
不意に立ち止まったサクラは、森中に自身のチャクラを飛ばす。こうすることで、彼女は森の中の様子を確認することができた。
森の奥から複数の気配を感じる。妖か鬼かまではわからない。しかし、どちらにせよ、それが敵であることに変わりはない。
「確か、この先には村があった。村が襲撃されているんだわ!」
サクラは気配を消しながら身体を伏せて、草陰から様子を伺った。
そこにいたのは、異形の兵士たちだった。胸に大きな赤い紋章が描かれた漆黒の防具を身に纏い、手には大きな宝石が埋め込まれた剣を携えている。
「――魔導騎士か」
サクラの前世の記憶が蘇る。
魔導騎士は、異界において、魔法と剣術の両方を達人級まで極めた者しかなれないエリート部隊。そして、彼らが持っている剣は、単に敵を切り裂くだけのものではない。剣の柄の部分に、魔法の威力を高めるための大型の魔石が埋め込まれている魔法剣だ。
「――ひどい。村中の建物を炎の魔法で焼いている。やはり、お前たちの仕業だったんだな。絶対に許すものか! 殺してやる!」
怒りが爆発したサクラが魔導騎士に攻撃を仕掛けようとしたまさにその時――。
「うおおおおお!」
炎の中から、一人の少年が飛び出してきた。彼は、腕にクロスボウによく似たからくりの弓矢を装備している。
「お前たちがみんなを殺したんだな? 許さねえ! ぶっ殺してやる!」
少年は上腕に取り付けたからくり仕掛けの弓矢を兵士に向ける。彼は一瞬で意識を兵士の頭に切り替え、頭の中で矢が飛んでいく軌道をイメージしながら照準を微修正している。
「そこだぁ!」
からくり弓から矢が放たれる。矢は兵士の兜に開いている隙間から顔を正確に射抜く。頭を射抜かれた兵士はそのまま後ろに倒れ込んで、動かなくなった。
「次はお前だぁ!」
からくり弓には連射機能があり、少年はすぐに別の兵士の頭を射抜いた。
「やるじゃないか! 私も手を貸すよ」
少年の奮闘を見たサクラは怒りを鎮めて気持ちを落ち着かせると、腰袋からクナイを取り出し、左手で素早く印を結んだ。
「忍法、影分身の術!」
彼女の影からもう一人のサクラが現れる。サクラからクナイを受け取った分身体は無言でうなずき、本体とは反対の方向へと走り出した。
「その術、影分身だろ? あんた、忍者なら、俺の復讐を手伝ってくれ! 頼む!」
「わかった。ここは私に任せろ!」
(一撃で、仕留めてやるよ!)
サクラと分身体は一瞬で魔道騎士たちとの距離を詰め、敵の背後を取り、チャクラを込めたクナイで正確に急所を刺していく。彼女たちは互いに連携しながら動き合い、魔導騎士に魔法を使う余裕すら与えなかった。
だが――。