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第十一話 話し合い

「すまない、二人を解放してくれないか。私の大切な助手なんだ」


 突然、扉の奥から黒ずくめの男が出てくる。言葉遣いは丁寧だが、全身から殺気を放っているのがわかる。


「私はこの研究所の所長のライナスだ。話なら、私が聞こう。それでどうかな?」


 表情は穏やかだが、ライナスは自分の実力をレイカに示すために、彼女に負けないくらいの殺気を向けている。


「その殺気。お前はかなり強そうだ。さすがに私も、この姿のままでは勝てないかもしれないな」


 レイカは自身の周りに白い霧を発生させた。霧が彼女の全身を覆い、姿が見えなくなる。しばらくすると、霧の中から、金色の毛並をした九つの尾を持つ狐が現れた。


「まさか、その姿は――」


 狐となったレイカの姿を見て、サクラたちが驚く。


「そうだ。私は白面の狐。お前たちがよく知る九尾だよ」


 九尾は九つの尾をひらひらと動かしながら、不敵に笑っている。


「なるほど、私も過去に異世界からの転生者から聞いたことがある。異世界には、乱世に現れて国を荒廃させる伝説の狐の化身がいると……。それがあなたなのですね」


「そうだ。ふふ、お前とはちゃんと話ができそうだ。この世界と異界を繋ぐゲートが何故開いたのか、聞かせてもらおうか。お前なら知っているだろう?」


「ええ、あのゲートは私が開いたので……」


「なんだと! お前のせいでこの国は……」


 それを聞いた途端、頭に血が上り、激昂してライナスに飛びかかろうとするサクラ。カイトも彼に矢を向けている。その二人の身体を、九尾の尾が素早く捕らえて拘束する。


「二人とも、人が話を聞いている時に邪魔をするんじゃない!」


「離せ! 私は! 私は全ての元凶のこいつをやらないと気が済まないんだ!」


「俺も同じだ! こいつのせいでみんなは……」


「――邪魔をするなと言ったはずだ」


 九尾は低い声で脅すように呟くと、二人に金縛りの術をかけて、動けなくした。


「サクラ、カイト。君たちの気持ちはわかるが、話が終わるまではそのまま大人しくしていろ。さて、ライナス。続きを聞こうじゃないか」


「ちゃんと、私の話を聞いてくれるのですね。では、何故私がゲートを開いたのかから話しましょう。実は、私たちの国で、千年に一度の巨大な地震が発生しましてね。それが全ての始まりだったんです」


「なるほど、お前たちの世界でも地震が起こるのだな」


「ええ。この地震は今までに経験したことのないほど巨大なものでした。大地が揺れ続けて、私たちの住んでいる国中の建物が崩壊してしまった。その中に、決して壊れてはいけなかったものがあったんです」


「大体の事情が掴めてきた。お前たちの国は災害で壊滅状態になった。だから、この世界に避難してきたと。そういうわけだな?」


「ええ。私たちの国には、魔道炉という、魔力を大量に生産できる施設があったのですが、そこが地震で壊れて爆発事故を起こしたのです。この事故で、魔素という毒が国中にばら撒かれてしまった。我々の身体が魔物化しているのは、その魔素を体内に吸収してしまったからです」


「お前たちが魔物化しているのは、その毒に冒されているからか」


 九尾は、ライナスの一部魔物化した身体を見つめながら話している。


「そうです。だから私は、その魔素を無毒化する研究をしています。私とここにいる助手の二人はかなり人間に近いところまで身体を戻すことができましたが、まだ完全じゃないんです」


「なるほど。それで、お前たちは何故、この世界のことを知っていたんだ?」


「私たちの世界に、あなたたちの世界から異世界人として来訪している人間がいたからですよ。それで、私たちは別の世界が存在することを知っていた。あとは、空間転移の魔法を応用することで、異界とのゲートを作れることも、私は研究で知っていた。だから、私にゲートを作れと、国王が命じたのです」


「そしてお前たちの国王が、この世界への侵攻を決断したわけか」


「私たちは避難のつもりだったのですが……。あなたたちにとっては、侵攻と思われても仕方がないですね」


 ライナスは視線を下へと落とした。


「わかった。それで、この国の子供たちをここに集めているようだが、どうするつもりだ。我々はその子供たちを助けに来たのだが――」


「子供たちは私が預かっているだけです。私は子供に何かをしようとは考えていない。子供たちを拐うように命じた人物は、私のように穏やかではないのでね。他の者たちに渡せば、あの子たちに何をしでかすか、わからなかった」


「まあ、それは本当なのだろう。お前の話を聞いていて、嘘をついているような仕草はなかったからな」


 九尾は、視線を逸らさずに、まっすぐ自分の目を見て話すライナスに好感を持っていた。


「あなたたちの国に迷惑をかけているのはわかっている。まさか、上の連中がここまでやるとは思わなかった。身体が魔物化したことで、思考まで変化してしまったのかもしれない」


 ライナスは天を仰いだ。側にいたジーナとバーバラが、彼を慰めるように両手を握りしめる。

  

「それならば、私に手を貸せ。お前たちの世界も救ってやる」

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