第一話 復讐を決めた日
時は戦国時代、織田信長が天下布武をスローガンに、日本統一へと動き出していた。
だが、その信長が本能寺で志半ばにして自害したまさにその時、天に裂け目が現れ、突如として異界の門が開かれた。
そこから現れたのは、不思議な術を使う異界の兵たち。彼らは魔法と呼ばれる神秘の力を自在に操り、本能寺の変で信長を自害させて天下人となった明智光秀のみならず、羽柴秀吉、徳川家康と、後に天下人となるはずだった英雄たちの軍勢を次々と打ち破った。
武将たちは異界の兵を相手に剣を抜き、勇敢に戦った。しかし、百戦錬磨の猛将たちですら、未知の術である魔法を操る異界の兵士たちには敵わなかった。
日本中が異形の兵たちに蹂躙される中、ただ一つ、影に生きる者たち――忍者だけが、希望の光となった。彼らの忍術は、唯一、異界の魔法に対抗できる力を秘めていた。
◇◇◇
夜空に満月が輝く夜、月野サクラは自身が暮らしていた里を見下ろせる丘に立っていた。
抑えきれない怒りを胸に抱えながら、彼女は空を見上げる。そこには、本来ではありえない光景――異界と日本を繋ぐ、揺らめく巨大な門が、夜空を切り裂くように開いていた。
この門の向こうから這い出してきたのは、異界の魔物たち。棍棒を持った巨人、炎を吐く赤き竜、漆黒の姿をした魔獣――。人々はそれらを「妖」と呼び、恐れた。
しかし、恐怖はそれだけでは終わらなかった。
やがて、魔物に続いて現れたのは、魔法を自在に操る異界の兵士たちだった。漆黒の甲冑を纏い、魔法を操る彼らは、勇敢な武将たちを蹴散らし、戦国大名たちの居城を攻め落とし、日本各地の村を壊滅させた。
人々は、異形の彼らを「鬼」と呼び、恐怖し、憎んだ。
サクラは前世の記憶を持っている。文明の進んだ異界で暮らしていた前世の彼女は流行り病によって亡くなり、戦国時代の日本に転生していた。転生の影響で、出生時からすでに体内に桁外れの量のチャクラを蓄えていたサクラは、幼少時からくノ一として両親から厳しく忍術を叩き込まれていた。
だが、サクラが生まれ育った忍びの里に、もはや人の姿は無い。彼女が暮らしていた忍者の里もまた、異形の者たちに襲撃されて、任務で里を離れていた彼女以外は全滅していたからだ。
◇◇◇
任務を終えて里へと帰還したサクラを待っていたのは、彼らに蹂躙され、変わり果てた姿となった同胞たちの亡骸だった。
「うわあああああ!」
サクラは思わず叫んで、村の奥へと走った。
里中の建物に火をつけられたのか、かつて建物があった場所には、黒く焼け焦げた柱だけが残っていた。自分と家族が住んでいた家も、跡形もなく燃え尽きていた。
「父さん、母さん。みんな奴らにやられたの? そんな、そんな――」
あまりに凄惨な光景を見たサクラは衝撃を受け、その場で泣き崩れた。
「よくも、よくも私の家族を――、里のみんなを殺してくれたなあああああ!」
サクラは握り拳を作ると、怒りに任せて地面を何度も殴りつけた。彼女の拳から、血がぽたぽたと滴り落ちる。
「うわあああああ!」
気がつくと、サクラは感情が爆発して大声で叫んでいた。
「はぁ、はぁ……。お前たちは許さない。絶対に殺してやる――」
天にある裂け目を睨みつけながら、自分に言い聞かせるように、呟いた。
たとえ異界からの来訪者が人間だろうと、自身の手で彼らを皆殺しにするまで、サクラの心は決して晴れないだろう。
月明かりの下、自身の忍び装束を整えたサクラは静かに印を結ぶ。彼女の体からチャクラが流れ出て、空気がざわめく。
「忍法、舞揚羽の術!」
サクラが背中から放出するチャクラが、まるで蝶の羽のように輝きながらはためく。空を舞う揚羽蝶のように、サクラの姿は宙へと浮かび、夜の空へと飛び立っていく。
そして、月がその姿を優しく照らしている。彼女の露出した白い肌が月明かりを反射して際立つ。
サクラは動きやすくするため、忍び装束を改良して、限界まで肌の露出を増やしている。これは、彼女がいかなる敵からの攻撃でも、自身の肌に決して傷を受けないという、絶対的な自信の表れでもあった。
鍛え抜いた忍術と、前世の記憶の中にある侵略者たちの情報、そして体内にある圧倒的な量のチャクラ。
それらを武器に、サクラは異世界からきた侵略者たちとの、果てしない戦いに身を投じるのだった――。