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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第二章 Divine Intervention/神の干渉
99/144

099 tr42, into the fire/火中に飛び込む


ーーーーーーーーーー

【AD:1524年】



「それは良いんだ。

 私達も協力するから、荷物は引き続き探そう。

 だが、いづれは私と一緒に突入ポッドのあるボーフス要塞に来て欲しい。

 エテ公も置いて来たし、あれらを放置するのは良くない」

「…すまない、動けないと云ったのは足や荷物の事だけじゃないんだ。

 実はな、家族ができちまって」

「どんな?何人だ?」

「ここの地元でな、妻10人子供30人ほどだ。

 一緒に住んで生活の世話をしてもらってる。

 だが俺の稼ぎで食ってるから、切り離してハイサヨナラ、とはいかねえ。

 それにこの耳や体毛、見ただろ?完全に俺の血だ。

 だが目立ちすぎる、放っておくと差別されかねねぇ。

 皆に慕われて嬉しい反面、お前の事でずっと悩んでた。

 本当に会わせる顔がないってのはこのことだな」

「何も問題ない」

「えっ」

「なんだ40人程度、うちで養ってやろうじゃないか。

全員一緒に来い。

 なんなら親類縁者何十人増えてもいいぞ。

 あまりに多いと移動が大変だがな」

「えっいや、妻って…」

「なんだ、大いにモテて結構じゃないか。

 私はフセスラフがいいんだ。

 他の誰がお前を選ぼうとも、お前を選んだのは私だ。

 お前は私を選ぶのか、そうでないのか。

 それだけだ」

「あ、ああ…

 だが、本当にいいのか?

 あんなにエテ公を嫌ってたのに、そういういい加減な行為は嫌いなんじゃ…」

「全く違う。

 私が嫌うのは行為のための行為だ。

 お前の妻たちは生活を支え、お前は仕事で支える、お互い必要とする間柄なのだろう?

 ならば、別に問題ない。

 もう一度言う、私はお前を離さない。ボーフス要塞に来い」

「…わかった。

 恥の上塗りで済まないが、夏まで待ってくれ。

全て話をつける。

そして、荷物も必ず見つける」

「よし、その意気だ。

 ではこちらも手配しよう。

 話を先に付けたら、どのくらいの規模かを教えてくれ」

「本当に申し訳ない」

「さっきから違うだろう、こういう時は『ごめんなさい』ではなく『ありがとう』だ。

 シティアが良く言っていた」

「ああ、懐かしいなシティア…

 そうそう、ナージャと一緒に帰って来た金髪の小男いただろ?

 顔もぜんぜん違うし性格も似てないんだが、どうもシティアを思い出してなぁ。

 あいつが俺の足の怪我の時、一番心配してくれたんだぜ」


「フセスよぉ、ありゃ俺の所為だ。ずっと悪いと思ってんだぜえ。

 あのドブさらいお前にお願いしたのオレだし、すぐ隣に居たのに何もできなくてよお」

「うおびっくりした、お前いつの間に」

「聞いたぜえフセスにナージャさん、移住するんだって?

 その…もしも、もしかしたらだぜ、良かったらよう…俺たちも移住させてくれねえかな」

「俺、達?

 お前と、あと誰だ」

「ロマの女でさあ。俺、あの子に惚れたんでさ」

「本人が帯同を許すなら、受け入れよう」

「ありがてえ!じゃあ、ちゃんと告白してくらあ!」

「あいつ、あんな奴だったか?

 この時代じゃ珍しく自由恋愛派なんだな」

「フセスの影響だろう。それに、市街地ではまま聞く話だ。

 そういえば、お前も甘いセリフを言うようになった」

「ナージャこそ、随分話せるようになった」

「時代の所為だ」

「時代の所為だな、お互い。はははっ」



荷物の問題は、あっさりと解決した。

石板同士に近距離共振機能があったからだ。

紛失を想定しての事だろうが、もしかたしたら工作員同士の捜索も兼ねているかもしれない。

崖へ行き、機能を使うと、凍りついたヴォルホフ川のそこから振動が伝わって来た。

回収は、春だな。


移住希望者は、最終的には200人を超えた。

ちょっとした行軍になってしまうので、先に通過予定の諸国とニーノシュクには通達が必要だ。

部下たちに書状を託し、交渉と護衛の増員、兵站など手配のため動いてもらう。

今回は大人数の想定だ、軍船を動かしてもらい海路が便利だろうと、サンクトペテルブルクを港に利用するルートを想定した。

ロマたちに指示は出していないが、いつの間にか出発していた。

下準備か諜報活動でも続けるのだろう。


フセスの半年は、どうやら御用貴族や商人達への移動報告とそのけじめ付けだったようだ。

精緻な細工で貴族に重宝されていたが、納品を兼ねて義理を通してきた。

中には荒事や罠で引き留めようとする者もいたようだが、やせ細っても格闘の技量は残っていたのか、いつも涼しい顔で帰ってきた。


ちなみに金髪の小男はロマの女性にフラレた。曰く「今は仕事の方が大事なの」だそう。

新天地で嫁を探すと意気込んでいた。


ヴォルホフを覆う氷も融けて川の流れだす頃、荷物を回収した。

SSSRで支給された荷物袋だったおかげで、中身は浸水せず無事だった。

フセスは回収された小箱をぎゅっと握り、静かに涙を流していた。

…深くは追求すまい。



こうしてまた夏がやって来た。

護衛や子供たちを含め300人近い大移動だ。

出発前は行く先々で野盗や下衆どもを相手にすることを考えうんざりしていたが、今回は違った。

フセスラフだ。

元々人懐っこい性格だったが、更に交渉まで巧くなっていた。

「シティアの真似だよ、殴らなくたって人は分かり合える…こともあるってな!わははは」

もちろん力押しも含め、だが。


サンクトペテルブルクに到着する頃には追従者がさらに増え600人を超えた。

もちろん、二心あるものに容赦はしない。

今回は暖かい時期だから利用できるルートだ、サンクトペテルブルクは冬季に凍結で使用できなくなるからだ。

ただ規模は申し分なく、ニーノシュク国の軍船も接岸可能だった。

トラブルはフセスと、彼の腹心を自称する男たちが次々と解消するので、私は精々子供をあやす程度。

筋肉は減ったが、強くなったなフセス。


国の力を借りた以上は国王との謁見を避けられない。

ストックホルムでニーノシュク国王と再び会う。

協力の見返りとして、私を軍事顧問に据え、ゆくゆくは最前線で国土拡大に協力するよう要請された。

今までの実績や騒動から導き出された結論だろう。

私はフセスと共に在れるなら否やなし、彼も実力を示せれば厚遇すると約束した。

だが、今はあくまでも移住が優先。

時期は保留、但し数年以内。


安定したはずのニーノシュク国内でも移住希望者は増え続け、最終的には1,000人を超えた。

仕方ない、行先を少し変更してボーフス要塞より南に位置するイエテボリを目的地にする。

私の起こした戦争で町を流れるイェータ川が汚染され、人口が減っていた。

今はもう洗浄事業も進んでいるはずだ、一番人手の足りない地域に追従の移住希望者たちを住まわせ、フセスの縁者にはボーフスの町まで来てもらう。



寒くなる前に全員の移住が完了した。

フセスにも現状を公開し、エテ公は継続して幽閉、但し突入ポッド3号は要塞の地中深くに保管庫を作成し、そこで保管する案を提案された。

デーン人のおとなしい今なら反対する理由は無いので、部下たちに指示して保管庫の作成事業を進めた。

フセスの妻たちは環境に満足したようで、この後彼の王都行きに反対する者はいなかった。

子供たちは不満そうだったが、大人の話し合いに子供は参加できない。

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