098 tr41, resurrection day/復活の日
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馬で近づくのももどかしく、全力で駆け寄りその胸へ飛び込み抱き着く。
「やっと会えた!」
だが6年ぶりに会ったフセスラフは私を受け止めきれず、二人で共に崖へ突っ込んだ。
「ナ、ナージャシュディ様、お久しぶりでございます。
フセスラフ様は以前ほど身体が強くないようで…その、すこしお手加減いただけると彼も共に再会を喜べるかと」
慌てた優男が私を制止する。
私の胸の中には、見事に気を失った大男がいた。
暫くして目を覚ました大男は、所帯なさげに私を見る。
「たのむぜナージャ、俺ぁ足がこんなで身体もだいぶ軽くなっちまったんだよ」
先を結んだズボンを見せ、フセスはカラカラ笑う。
ああ、これだ。
この笑顔を探していたんだ。
「だが、12年ぶりだ。
こんなに嬉しいことはない、ナージャ。
変わらず愛してる」
「このバカぁぁぁ!
私が!どんな思いして待ってたか!
現地人に戦争仕掛けて目立って、探してくれるのを待ってた!」
「そうだな、待たせちまった」
「誰も知らないこの世界で!いるのはエロエテ公だけ!
突入ポッドまで守って戦わなきゃいけなかった!」
「うん、辛い思いをさせちまった」
「寝ずに戦う日々だった!逃げられない、戦って戦って殺して殺して殺して!何度挫けそうになったか!」
「よく頑張った、ナージャは無敵だな」
「その!無敵の!私より強かったフセスは!
……こんなに弱々しくなって、歩くのもままならないのにこんな寒い日まで外で探し物して…生きていてくれてありがとう。
そして、これからはずっと一緒に居て欲しい」
「ああ、もうこの手を、ナージャを離さない」
後のことはよく覚えていない。
しばらくは二人で抱き合って泣いた。
気が付いたら、ホルムガルドの宿に戻っていた。
「ナージャシュディ様、お気が付きましたか。
さきほどお二人とも気を失ったので、不躾ながら我々で街まで運ばせていただきました。
フセスラフ様は先に目を覚まされ、着替えてくるとのことで一度家へ戻るそうです。
私の手の者が同行しました」
優男だ。
彼もまた転生者で、元々はボーフス要塞で下働きとして息を潜めて生きてきたという。
私が砦を奪取したことで出世のチャンスと奮戦し、また多くの同志を得た。
確かに、彼らにはフセラや異世界の話をした。
何も言わなければ転移者の事も平行した世界の事も伝わらないから。
大半はおとぎ話として聞き流していた、だが彼らの出身は異世界だ。
あんなに堂々と世界の秘密を語られ、目を白黒させたらしい。
同時に、強い危機感を持った。
魔法は、魔術は、魔石は、確かに存在する。
だがその存在は秘され一部特権階級の独占知識だ。
その魔石を狙った侵略者が、異世界からやって来たのだ。
私のように正面からケンカを売る輩は、表から裏から命を狙われる。
要塞の書庫から魔術書を探し当てた彼らは、独自に魔法を会得した。
そして戦争が終結に向けて動き出したころ、独立してロマ一族を名乗り、各地でボーフス要塞に向かう魔術の対策をとる活動をしていたという。
「戦争は終結前が一番危険ですからね。
我々も仲間を増やしながら、各地を回っています」
活動の一環で転移者を見つけ、それが偶々フセスの特徴と一致していたので、表に出る危険を冒して報告してくれた。
だが、お陰で彼と再会できた。
フセスを待つ傍ら彼らの事情を聴いていると、やがて突入ポッド搭乗時の服を着た大男がやってきた。
「すまない、待たせた。
我々の話をするなら、この方が良いと思って引っ張り出してきた」
出発前のはちきれんばかりに筋肉がついたセントバーナードの様な体格に合わせて作られたその服は、今やボルゾイのようにやせ細った体躯にもフィットしている。
「どうやらこの服、体に合わせてサイズが伸縮するようでな。
しかも着ていると、傷の直りが早い」
「それならなぜその足に」
「油断した。
来てしばらく傭兵まがいの戦働きや賞金首を狩ってたんだ。
その頃は常にこの服を着ていたし、用心もしていた。
だけどどこかで恨みを買ってたんだろうな。
オフの日に近所のドブさらいを手伝ったときに、急に眩暈がしてな…
気が付いたら錆びた包丁を踏み抜いてた。
後にしてみりゃ、アレは魔法でやられたな。
傷は即治療すれば何とかなったかもしれんが、元のオレはあの体格だろ?
三人がかりでもドブから引き揚げられなくてよ。
道に出られたのは、半日近く経ってからだ。
急いで飲み水を掛けて洗ったり傷口を焼いたんだが腫れが引かなくて、気が付いたら足首まで腐っちまった。
まあなっちまったモンは仕方ねえってんで何とか工夫してギリ歩けるようにして。
あとは杖があれば日常の生活に問題はねえところまで来たんだ。
仕事は、この街じゃ彫刻で喜んでくれるヤツが多くてな。
ホラ、貿易の町だろ?
だから行商人ども相手に珍しい彫刻を出し、転移者の情報収集まで出来ちまう。
のんびり待つか、と思ってたんだ。
そしたら、北の方で空から何かが降ってきたなんて話を聞いて。
これは5号機、ナージャ達の突入ポッドに違いない!
…と早合点して、手荷物だけ抱えて大慌てで追いかけようとしたんだ。
足の事なんざすっかり忘れてたぜ!はははっ
全力で走ると、さっきの崖の辺りまで行けるのな。
あそこで力尽きて、荷物落としちまった。
情けないやら、申し訳ないやら…。
我ながらダメすぎるとしばらく腐ってたんだが、この町は世話焼きが多くてなぁ。
皆のおかげで何とか持ち直せた。
去年ロマの連中に出会ってナージャの事を知って、今度は切実に荷物を探さなきゃならねえ。
彼らにも手伝ってもらって前よりよく探してるんだが、見つからなくてな…
ずっと連絡取れなくて申し訳なかった。
ごめん」
この方向音痴め…噂を聞いて向かう先も実際の3号機の到着地点も、元の5号機からのルートもまるで違うじゃないか。




