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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第二章 Divine Intervention/神の干渉
97/144

097 tr40, Mortituri te Salutant/敬意を表す、死ぬ運命の人より


ーーーーーーーーーー

【AD:1523年】



フセスは生きていた!


大部分は自称行商人の自慢話だったが、聞くべきところはあった。

届けられた小包はフセスラフに関わる品なのは間違いない。

彼の言う優男にも心当たりがあるし、見た目はだいぶ変えているがロマの女性は私の元部下だ。

同封された手紙の内容からも、フセスは今も動けず東方の町で待機している。

ならば、あとは私が出向くだけだ。


決心してから行動まで、時間はさほどかからなかった。

どうしても付いて行きたいという部下数人、来訪した金髪の男とロマの女性を伴ってホルムガルドへ行くことに決める。

但し一応領地を預かり責任を負う身だ、一度くらい国家の長に挨拶程度はすべきだろう。

出発に先立ち、ストックホルムのニーノシュク王家に来訪先と通過時の挨拶を早馬で通達させた。


あとの心残りはサルと突入ポッドの管理か。

サルは飼育係を付け、絶対に逃げないよう言いつける。

抗議の声を上げていたが、コイツは常に中身のない怨嗟しか口にしないので相手にしない。

突入ポッドは空きの倉庫に収めたが、厳重に警戒するよう指示。


出発は馬車と馬、行く先はバルト海の向こうにあるというホルムガルド。

各自荷物も準備し馬車に積む、御者は行商人とロマの女性だ。

すっかり仲が良い。

私と部下達は、自分の愛馬をそのまま持ち出し。


道中の宿泊で、ロマの女性からこんなことを云われた。

「ナージャシュディ様、貴女は私達転生・転移者の命の恩人です。

 私達転生者は他の転移者たちが酷く差別されるのを知っていたので、露見せぬよう忍び生きてきたのです。

 ところが貴女は隠しもしない、むしろボーフス要塞では転移者である事を大きく主張し力強く戦っていらっしゃった。

 いいえ戦いだけじゃない、何か国語も操り身内には優しく、色んなことを教えてくれました。

 きっと私達よりずっと先の時代からいらっしゃったのでしょう、素晴らしく進んだ知識です。

 少しでも恩返ししたく頭目達と活動して来ましたが、ようやくご恩を少しでも返せそうです」

あれはフセスに気付いてもらうためだったんだが…まあ、それは言うまい。


豊作で国内経済が回り始めたか、ニーノシュク国内は治安が良い。

盗賊の襲撃なぞ一晩に1~2度程度だ、これでは旅費の賄いにならん。

極めて順調にストックホルムへ到着。


王族からは、衛兵共の厳重体制という腰の引けた歓迎をされた。

私とて近づくもの総てを殺すつもりはない…あからさまな好色の声をかけてきた輩は、その場で首を飛ばしたが。

身なりは良かったので高貴の階位だろうが、エテ公よろしく節操のない輩は好かぬ。

一時は兵を増援され騒然となったが、寸手のところで国王に止められた。

顔色の悪い国王からは今後とも協力を願う旨を伝えられた。

但し面子の問題で国軍最強を名乗る偉丈夫の騎士のと試合を指定されたものの、まるで勝負にならなかった。

同行の部下たちも手合わせしたが、国軍とはこうも弱いのか…と呆れた。

寄るだけ時間の無駄だった、機会があれば教育してやる。


騒動中、護衛で残った部下と行商人、ロマの女性は都会を楽しんだようだ。

私もここまで多くの人が住む都は初めてだ…が、どうにも臭いが酷く、楽しめそうにない。

国王に軍船を提案されたが、出発に時間がかかるので辞退した。

早々に優男のコネという船を見つけ馬車共々乗せてもらい、ロマの女性らが来たルートをそのまま辿る。

海賊は…いた。船体は中規模だが、船体の平たい典型的なバルトの船だ。

群島に隠れながら付いて来るので夜まで放置し、暗くなったら泳いで船底に穴をあけ、パニックの所に乗船して乗組員をあらかた仕留める。

ここまでくると、旅費より一刻も早く進みたいため、放置を提案。

だが船長に回収を望まれたので、旅程を遅らせないことを条件に許可した。

仕留めた海賊どもは捕虜に、船底は応急処置し、漏洩しながら旅路を急いだ。

船中で年越し、宴を催して過ごす。



ーーーーーーーーーー

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船の目的地、タリンに到着。

海賊どもは悪名高い連中だそうだが、歓待や報酬に興味はなかったので即出発。

勘違いして行く手を阻んだ領主は、先日の反省もあって命までは取らなかった。

あとは部下達に任せ、馬車と共に発つ。


ロマの女性の導く比較的安全なルートを辿るものの、思ったより野盗は多い。

一日5~6件だろうか。

この辺りはノルマン人やスラヴ人などが常に争い、大きい国家が成立しにくい地域だ。

少人数なら駆け抜けられても、我々のように馬車まで引いているといいカモに見えるのだろう。

都度対応したが、武器はおろか農具を構えるならましな方、中には布服一枚に裸足の者までいた。

立ちはだかるならば容赦はしないが。


二つ目の大きな湖、氷に包まれたイリメニ湖を南側に眺める辺りで街が見えてきた。

「あれがホルムガルドでさぁ」

さすがスカンジナビア半島や王都モスカウの中継路、貿易の町としても規模は大きい。

「ちょっくら中の様子を見てきますぜ。

 部下の方と一緒に行くんで、待っててもらえますかい」

湖のほとりまで引き返し、宿場町で待機。

その晩は戻らなかったので、やきもきしながら宿泊した。



次の日。

「見つけやした…が、フセスの野郎も優男も、街の北にあるスルツカ渓谷に外泊してるようでして」

問題ない、あいつに会うためにここまで来たのだ。

あと少しで会える。


馬車や部下の一部は、街へ入り宿泊などの準備をしてもらう。

待ち合わせは、夕方に街の北門だ。

全力で走らせそうな気持を落ち着かせ、早馬の速度で部下とヴォルホフ川沿いに下ってゆく。

遠くの崖に人影が見える。

あの誰よりも高い上背、広い背中、癖の強い髪…



「フセスー!来たぞー!!」

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