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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第二章 Divine Intervention/神の干渉
95/144

095 tr38, from the underworld/異世界より

ーーーーーーーーーー

【AD:1518年】



ボーフス要塞を実質占拠してから三か月ほど、内部掌握は思いのほか順調に進んだ。

ここの領主はずいぶん儲かっていたのか、当面の食料や換金可能な品物に困ることはなかった。

先ずは兵長を懐柔し、相場を知り、兵隊たちは生活を保障し、商人たちを呼び不要なものは端から換金し、また食料に替えた。

それだけで、この砦の平定は済んだ。

なかには器用な兵も居て、私から夜間行動や強襲偵察の方法論を学び、個人としての能力を伸ばすものも何人も居た。

また近隣から志願兵を募ったところ、明らかに異民族や転移・転生者も多く見られたたが、今は人手が足りない。

兵として業務に従事してくれるなら、男性でも女性でも、幼年でも年寄りでも用途はある。

有用な人材があれば僅かな時間でも教育して育成しなければならない。

一方、私もこの世界で重宝される魔法をこの時学んだ。

使うことはできなかったが。

この頃には『大女』『姉御』『女傑』など、好き勝手に呼ばれるようになっていた。

あまり興味は無かったので、好きにさせておいた。



気候も暖かくなったころ、つまり半年もたたず次々と襲撃が来るようになった。


最初は盗賊、そして我々をも盗賊と指定した依頼討伐だった。

手近な傭兵へ襲撃の要請も出ていたようだが、所詮食い詰め者か金で雇われた輩。

野盗まがいの烏合の衆は、頭目どもを暗殺するだけで四散していく。

ポイントは即発見・即殺だ。

これが週に数件、期を同じく散発的に行われた。

この程度は余裕だ。


そのうち噂を聞いたのか、中~大規模海賊連中が川を遡ってやってくるようになった。

備えさえあれば、何十隻でも相手してやる。

川上から丸太を流す、川を堰き止め姿が見えたところで開放する、頑丈な綱を張り船ごとひっくりかえす、水中から船に近づき船底に穴をあける、竜骨を折る、別動隊を殺して川に投げ込む。

目新しいことは何もない。

魔法も不要だ。

私の知る限りの戦術で、全て追い返した。

置き去りにされた資源は有効利用させてもらい、更に要塞の防衛体制を強化した。

捕虜も、寝返る気さえあれば積極的に登用した。

尤も、裏切るそぶりがあれば即川に沈めたが。


次に来たのは、野心に満ちた近隣諸侯。

場所柄、ノルウェー王国、彼らが自称するにはニーノシュク王国が防衛する拠点だったこの要塞。

隣接のデーン人が目をつけ、大挙してやってきた。

同じころニーノシュク正統を名乗る軍隊も押し掛け、三つ巴の戦になる事も多かった。

戦争は激化しデーン人は多数送り込まれてくる。

なんだ、奴らSSSRの農奴と同じ海で獲れるんだろう。

偉そうな連中を中心になるべく殺し、川に流す。


そのうち要塞から少し離れた地域には逃げ遅れた敗残兵や志願兵たちが住み着くようになり、ちょっとした町のようになっていった。

彼らの中には戦いが始まると武勲を立て私に取り立てて貰おうと躍起になって働いてくれる者もいた。

勇ましい者には目立つよう褒賞を与え取り立て、内通者は串刺しにして晒した。

敵は例外なく川流しだ。


闘いから一年もたつと相手も用心深くなり、敵大将を暗殺しようにも陣地の奥から出て来なくなってしまった。

要塞の兵だけでは防衛が間に合わない場面も多かったので、前に出る闘いはあまり得意ではないものの、私が率先して外に出た。

魔法による攻撃は、喧騒の戦場ではあまり役に立たなさそうだった。

それ以外の時は、なるべく兵の教育に時間を割いた。

人間である、知らないことを知っている者から教わる、この姿勢があるだけで参加資格はある。


砦を奪取して二年、戦そのものを終結させるつもりはなかったので、両軍ともバランスよく煽ってやった。

デーン人は食いつきが良かった。たくさん殺した。

ヴァルハラ?ヴァルキューレ?死んだらそこで終わりだ、命を粗末にするやつらは、粗末に命を扱ってやるとも。

これまで通り、敵味方とも死骸や重傷者は全て川に流した。


ーーーーーーーーーー

【AD:1522年】



要塞を占拠してから既に3年以上経っただろうか。

遂にニーノシュク側が音を上げ、私の処へ交渉団を送り込んできた。

周辺地域と爵位をくれてやるから、この戦いを収めくれという。

5年間の免税と運用資金を追加で取り付け、その条件を呑むならデーン人を追い払うと約束した。

曰く、イェータ川下流域のニーノシュク側の町が流れてきた死骸の腐敗で大被害を被り、国力を大いに損なっているという。

かといってボーフス要塞をデーン人に超えられてしまうと、あとは歯止めの利かないニーノシュク内陸への侵攻が待っている。

デーン人や海賊連中からは『暴虐の大女』と呼ばれているらしいが、何としてもニーノシュク側の味方にしたいと方針を固めたのだろう。

私としては、この騒ぎでフセスが気が付いてここまで来てくれればそれでいい。

いい加減、エテ公の飼育も飽きた。

免税と資金?ああ、ただの嫌がらせだ。


寒い時期に使節団と交渉し、双方に振り分けていた戦力をデーン人メインに切り替えて追い払い停戦した。

こちらも多額と言ってよい賠償金をせしめた。

停戦後も何かと言いがかりをつけられたものの、まともに相手をせず皆殺しの上晒していたらその内干渉は無くなった。



ーーーーーーーーーー

【AD:1523年】



五度目の短い夏もそろそろ終わる。

統治は順調だ。

本来私の管轄ではないが、人材に恵まれ周囲の村落も徐々に領地へ人が戻りつつある。

目についた人材の教育も変わらず続ける。

盗賊や海賊騒ぎもひと段落し、エテ公の飼育も任せたので、私は本格的にフセスの情報収集に乗り出せるようになった。

だが流れ人や商人どもを中心に聞いて回ったものの、二つ名が独り歩きして難航する。

少し暴れすぎたか。


流石にしびれを切らし、そろそろこちらから探しに行こうか…と思案していると、東の方から訪れた行商人を自称する金髪・碧眼の小男と、この辺では珍しい褐色肌の黒髪女性から面会を申し込まれた。

「フセスラフ、という名の毛むくじゃらの大男がはるか東のホルムガルドって町に居やして、そいつに『ナージャシュディ』という大きい女がいるはずだ、そいつに『俺はもう動けない』と伝言を受けやしてね。

 はいコレ」

手渡された小包には手紙と地図、そして狼の牙を使ったユキヒョウの彫刻が入っていた。

このつくりはあいつだ、間違いない。

「どういうことだ?

なぜ、お前はあいつからの荷物を持ってきた」


「いやぁ、アイツには随分助けられたんで、その恩返しも兼ねてでさぁ」

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