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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第二章 Divine Intervention/神の干渉
90/144

090 tr34, enough is enough/もう充分

ーーーーーーーーーー

【AD:2121年, 革命新暦:199年、秋】



「何とか間に合いましたね、おじいさん」

「ああ、ギリギリじゃったがの。

 これじゃよ、この布地。

 化学部門の連中が手抜きして遅らせとるかと思ったら、期待以上の素材を出してくれよったわ。

 これはあの子らの手土産のみならず、今後のSSSRでも流行るぞ!」

「そんなに凄いものなのですか?」

「ああ、なにしろ洗濯要らずの風呂要らずじゃからな!

 接触している有機物を摂取して自己修復する、いわば生きた素材じゃ。

「…おじいさん、シャワー嫌いですものねぇ」

「あんな無駄なことに時間取られるくらいなら、論文の一本も読みたいところじゃからの。

 見た目の汚れ処理や擦り切れ仕様も織り込み済みじゃ。

 各人に合わせて衣服として仕立てるが、向こうの世界でも違和感のない格好にせんとの」

「そうね、ボタン一つとっても素材の違いが目についたら、気が付く人は気が付くでしょうし」

「そこまで気を使う必要はないとは思うがの…文明的にはこの世界よりはるかに遅れとるし、流通の差で他の地域から流れてきたと言えば、納得しそうなもんじゃし」

「その割には、あの小箱の仕掛けは高度よね」

「あれは作った当時、本当に苦労したからの…

 あの子たちに送れる、ささやかな心の支えじゃとワシは自負しとるよ」

「私も何か送りたかったところだけれど、例の寄生生物とその抗体程度しか残せなかったのが悔しいですわ…」

「なんの、抗体はアレだけじゃのうてこちらの世界で確認されとる殆どの寄生虫や毒素の排除に働くんじゃろ?健康なのは大事じゃよ」

「ええまあ、肝臓の分解酵素も少し弄りましたし、外傷以外であの子たちは天寿を全うできるよう手はつくしましたけれど」

「ワシらの倍近く、若いまま生きられると考えれば羨ましい限りじゃがな…

 それでも癌化は防げないというのは皮肉じゃな」

「あれはコピーエラーですからね。

 何億分の一かの可能性の為に割ける時間は限られていますから」

「それでも、彼らには知識だけでも授けた方が良いからの。

 例の四姉妹、彼女らには特別授業を仕込んでおいた」

「あれ、いつの間に。

 イニシエーションですか?」

「当たり、この世界とこれから送られる異世界、それに転生者共の世界の知識をできるだけ詰め込んでおいたわい」

「転生者の世界の知識なんて、必要ですか?

 また革命ごっこみたいなおかしなこと始めそうですよ」

「知ったうえでやりたいなら、好きにすりゃよかろ。

 それに、知っているからと言って実際の行動に移せるとは限らん」

「おじいさんの転生者嫌いは相変わらずですね」

「当然じゃ、あの間抜け連中の薄甘い現実認識ワシゃ好かん。

 以前実験に回された連中も、存分に楽しんでもらったしの」

「おお怖い、それより詰め込んだ知識をここで披露すると、またおかしなことになりませんか?」

「そこは大丈夫、記憶に鍵をかけておいた」

「鍵?」

「この施設にいる限り、思い出すことは無い。

 施設以外の見慣れない風景をトリガーに、記憶の蓋を開けるよう動機づけしておいた。

 記憶というのは、案外簡単にいじれるもんじゃからの」

「彼女らの助けになればいいですけれど、どの場面で思い出すかちょっと不安ですね…」

「うむ、こちらは必ずしも助けになるとは限らないし、どの場面で思い出すか不安要素は多いの。

 それよりも自分たちでも暗示をかけとって、そっちの方が手間取ったぞい」

「自分たちで暗示、ですか?」

「うむ。自分たちの結束を体制側に知られるのを嫌ったんじゃろう、特定キーワードに反応思想じゃったからそっちはそっとしといたわ」

「あの子達も、ずいぶん用心深くなりましたね」

「そらそうじゃろう、あの食事会、あれは無かろうて…

 ワシら体制側とて仲間をあてがうなんて行動、できやせんわい。

 提案したマリアベルの意思を受け継いだアベルは…ちょっと想像したくないわい」

「あの子、元々嗜虐傾向が強かったですものねぇ…」



「あ、そういえば石板に色々機能追加しといたぞ」

「石板?タブレットでしたっけ?」

「そうそう、キャパシタ電池の目処がついて、画像処理も間に合いそうなんじゃよ」

「通信機能はもう大丈夫なんですよね?」

「それ以外の機能がまるでダメじゃったわ…本当に、開発部門は腐っておるの。

 辛うじてコンデンサをキャパシタ電池にする技術は進めてた様じゃから、ありったけ電池を詰めて省電力の特別仕様を作らせたわい。

 その辺は当時の辺りで例の小箱にも応用して、充電要らずの特別仕様に出来るかもしらん」

「ああ、太陽光の発電機構も間に合ったんですね」

「なかなか変換効率80%に達しなかったからの。

 こういった地道な変革は表に出にくいが、支援なしで100年以上活動することを考えると、やりすぎという事は無いんじゃ」

「他にもいろいろやってましたものね、おじいいさん」

「ええい、ばあさんだってやっておったろ。

 …もうあの子たちはワシらの孫みたいなもんじゃ、この年になると生きがいを求めたくなるのはだれしも共通、と思っていいんじゃよな」

「おじいさんも年を取りましたね…」

「お互いに、の」

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