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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第二章 Divine Intervention/神の干渉
83/144

083 tr27, six feet underground/埋葬

ーーーーーーーーーー

【AD:2120年, 革命新暦:198年、冬】



冬至の日。


ステップ気候のこの地域は、1月頃に向かって急激に気温が下がる。

今年の冬至祭りは、年々盛大にするという所長の宣言通り去年より盛大に、4日間開催される。

また、初日の今日だけは監視無しで自由行動にしてくれる、と言っていた。

あまり信じていないけれど。


けれど良い機会だ。

今日は四姉妹で集まり、直接お話しできる。

なんだかんだ言って、俺も心の拠り所にしてるから。



「弔いを、始めましょう」


ユリアが宣言した。

「秋の特殊授業の事、三人とも覚えているかしら。

 私はね、許せないの。

 

 必要な犠牲というのは、あると思うのよ。必要悪と云うべきかしら。

 私たちの生命もきっとたくさんの人の犠牲の上に成り立っているし、皆の役に立つ技術に貢献された方もいると思う。

 今更だけど人体実験という言い方だって、やむを得ない面もあるはずよ。

 けれどあれは、特殊授業は、明らかに面白半分に人の命を奪ってた…あんなの、絶対に嫌。

 人の命の奪うのは、決して楽しみの為じゃないもの。

 抵抗すらできない、あんな小さい子を拘束して、笑いながら、しかも生きたまま、あんなことを赦してしまう、…私は、この国に、この制度に、所長に、アベルに、どうしても同意できない。

 一緒に育った仲間のスエミさんや、トゥリナさんの頃から抱いていた、蟠りの正体がはっきりした気分。


 でもこの国に居る限り、この想いの解消は遂げられないわ。

 今抵抗したところで適当な代替案が出て、穴埋めされるだけ。

 私たちのできる最大の抵抗は、ここにはない。

 あと1年と少しで転移し、その先で貢献しないことこそ私たちのできる最大の抵抗だと私たちは考えた。

 この国の未来を道連れに、報われなかった人たちの恨みを少しでも感じて欲しい」


「そうね、このことはユリアと散々話したけれど、私も賛成。

 せっかく4人いるんだから、それぞれのアプローチは有って然るべきだと思うわ。 


 ユリアは裏の社会を。

 私は表の社会を。

 ナージャは力で。

 シティアは他国との関係で。


 今は精々従順に過ごし、今後に役立つ知識をたくさんため込みましょう。

 愚かなこの国に連なる連中は、諸共道連れにしてやる」


「私は…難しいことは分からない。

 身勝手なのは解っているけれど、それでもどうしても私は自由が欲しい。

 たくさんの手にかけた私が言う事ではないが、私だって好きなことをしてみたい」


「わかってるよ、フーちゃんの事だろ。

 リザだって、本当は家族が欲しいことだって承知してるさ。

 ユリアは…まあ、のんびり俺と一緒にプラン立てしよう、いつまでも一緒に居たい。

 俺も弔いには賛成、気ままに生きたいね」


「もう、こんな時に…でも大好き、いつまでも一緒に居ようねシーちゃん。

 それはそうと、今日のためにお人形をたくさん作ってきたの。

 犠牲にしてしまった人たちや、私たちの仲間たち…小さいころから一緒に育ってきた兄弟・姉妹みたいな子達、皆を忘れないように、このお人形たちを皆の代わりに埋葬して、それで弔いにしましょう」


「いつもユリアばっかりずるいわね…たまには私にも会いに来なさいよ。

さっと埋めてしまいましょう」


「シティア、私はどうなんだ。フセラに遠慮せず私にも会いに来い。

 穴はもう掘ってある、そのためにここへ集まったから」


「あはは、三人とも、いつまでも大好きだよ。いつでも会いに行くよ。

 これからもずっと一緒だ。

 さあ、お人形を埋葬して、冬至祭りの会場へ戻ろうか。

 ここは寒いし、俺もうおなかすいちゃったよ」


分かってる、宣言することで引き返せなくなる。

皆少しでもやるせない気持ちをほぐすために、わざと茶化してるんだ。

僕らの一生は始まりからすでに血に塗れ、これからもたくさん犠牲者を出すだろう。

こんな埋葬なんてただのままごと、偽善の行為にすぎない。

けれどこうして形にでもしないと、僕らの思いは消えてしまいそうに矮小だ。

いっそ、すべてを無かったことにして埋めてしまいたい。




「…ばあさんや、聞いたかえ?」

「もうほんとに、その盗聴癖は良くないですよ」

「仕方なかろ、生まれた頃からずっと面倒見てきた子達じゃ、気になるんじゃ。

 しかし女の子たちの成長は目覚ましいの、あんな立派に成長して…

 皆あんなに自立して、ワシらの期待を大きく上回ってからに…」

「はいはい、わざわざ名前つけるくらいですものね。

 それで、どうするつもりですか?」

「どうもせん、いや出来んわい。

 ようここまで大きくなったもんじゃ、あの子らの気持ちはともかくこんなことで誰かに通報なんかできんわい。

 あとワシらにできることなぞ…もしチャンスがあれば、転移の際にちょこっと細工する程度じゃな」

「また悪い顔して…

 けどそうね、私たちも彼らを送り出す際は立会いすることになるでしょうから、それまでは準備だけにしておきましょう」

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