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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第二章 Divine Intervention/神の干渉
64/144

064 tr14, all we know is not/総ては知らず

ーーーーーーーーーー

【AD:2117年, 革命新暦:195年、夏】



「うーん」

「あらおじいさん、どうしたの?珍しく悩んじゃって」

「マリアベルからオーダーのイニシエーションじゃがの、難しくてのぅ…」

「私だけじゃなく脳機能学や生理学、果ては心理学の学者達まで巻き込んで一大プロジェクトになってるものね」

「もう検体への応用は始まっとるからのぅ…。

 今のところ誤魔化しは利いておるが、いづれ追いつかれてしまうわい」

「あら、例の事前法と事後方だけじゃ足りないの?」

「うむ。ブレイクスルーが足らん。

 事前法は事前に学習した内容で伸長したシナプスを焼き付け、定着率を上げる方法じゃ。

 元々見たことも聞いたこともないものを知っている、というのはかなり不自然な状態じゃからな。

 じゃが一度でも見聞したものを直ぐに思い出せるのは難しい事ではない。

 そこで、一度学習を経てそのシナプスの伸長を焼き付けるのが事前法じゃ」

「つまり、短期記憶を長期記憶化させる技術、と見ていいのね」

「そうじゃな」


「あら、そうすると記憶領域の階層化が進まないから、思い出すのに時間がかかるんじゃない?」

「そうなんじゃよ、うーんと考えて思い出しながら利用する科学知識なんかは良いんじゃが、語学系はこれだとチトつらい。


 そこで次の方法、事後法じゃな。

 事前に樹状突起の伸長先を予約して焼き出し、イニシエーション後にシナプスの伸長を促す方法じゃ。

 これなら覚えやすい方法で脳内に学習内容を収められるから、自然な記憶の収納が可能じゃ」

「あら、その方法は記憶先のアドレスを指定しておかないといけなくなるわね」

「その意味で重複した場合の記憶混濁は起こりうるが、それでも確率は低いはずじゃよ」

「あとは記憶領域の活用が可能かどうか、個人の資質に罹っているのも問題ね」

「それは事前でも事後でも同じじゃろ。

 既に農奴のうち成績の悪い連中は、焼き付け自体は可能でもニューロンが伸長せず全く定着せなんだ。

 うちの子達は遺伝子の基礎設定で全員アクセス速度も悪くない、活用さえすれば才能として伸びる様にしてあるんじゃがの」


「それで、その二つ以外の方法は?」

「転生法じゃな。

 実際資本主義の世界からSSSRへ転生した連中は何人もおるしサンプルも手に入ったんじゃが、なんで体験した事のない記憶までインストールされとるのか、あとちょっとなんじゃがまだ把握できなくての…」

「今の事前・事後法は単なるニューロンの誘導ですものね」

「そこなんじゃよ、実験として脳構造の同じ被検体にニューロン構造をそのまま焼き付ける、という方法で果たして上手く行くかどうか…。

 調査するにも、比較・検討用にニューロンを除いた脳の生理機能を同じくする検体が2名以上必要じゃし、そうなると記憶の混濁を調査できる程度には異なる体験・記憶を持つ必要もあるのでな…」

「難易度の高い検体ね」

「同一個体となるよう調整したマリアベルをいきなり本番で使うのも憚られるしの。

 農奴をもちっと増やして、調査の幅を広げるしかないかのぅ」


「でもそれなら、ますます転生者の存在って謎よね。

 前世なんて見たことも聞いたこともなかった記憶はあるのに、身体機能の維持に障害は出ない程度に脳機能は働くんだもの」

「ワシはあくまでも科学者(サイエンティスト)であって、仏教徒(ブディスト)ではないから、輪廻転生の概念は受け入れておらんからの。

 なんじゃあの、魂とか輪廻転生なんていうあいまいな概念は。

 一定条件で再現性のない現象は、科学者として認められん」

「記憶の抽出を模索してみたら?

 せっかく脳機能の権威もいることだし、インストールやマップからいったん離れてみたらどうかしら」

「おっ、それじゃ!どうせ視覚情報なんて二次元で再現できるじゃろうし、映像としてある程度抽出して、そこから情報処理させれば…うーむ、ばあさん冴えとるの!」

「たまたま童話の『ふしぎの国のアリス』を読んでね、イメージの湾曲と視覚情報の関係が気になってたのよ。

 おじいさんも普段から生身の脳は見てるのに、肝心の内部処理は置き去りになってたんじゃない?

「はっはっは、こりゃ一本取られたわい!」




さて転移候補の検体…今後は候補生と呼ぼうか、すべてのグループでほぼ確定だ。

アベルのおもちゃにしていた連中と残りの検体たちは博士に貸与して、その後は調整して出荷だな。

そういえばまだ04は泳がせてるが、そこはまだ保留か。


04はともかく、14は人数もいるし素体として悪くない、ドゥナイアリタも喜ぶだろう。

もう壊れたからな。

07も人数は揃っているが、あちらはまだいじっていない。博士共も使い出があるだろう。

03は…どうするか、需要はあろうが。

問題は10だ、ヤツらどうにもならん。候補生のテコ入れのため、新機能を外科で付与させる試験体として使うか。


どんな計画でも調整は必要だ、その意味では順調と云える。

ジルベルト、あと少しだ。楽しみだな。

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