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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第二章 Divine Intervention/神の干渉
51/144

051 tr01, time and place/時と場所

ーーーーーーーーーー

【AD:2142年, 革命新暦:220年】


「ギルベルト、ねむれないのかい。

いい子だから目をつむって…そうだね、今日はいつものおとぎ話とちがう、昔話でもしようか。

あなたが生まれるよりずっと前、わたしがここに来るより前のお話しさ」



ーーーーーーーーーー

【AD:2122年, 革命新暦:200年】



「同志ドゥナイアリタ、第52代総書記長就任と新革命暦200周年記念式典同時開催の成功おめでとうございます」

「おおこれは麗しき同志マリアベル科学総長官、祝辞をありがとう。

先ほどのミサイル打ち上げと消滅の軍事合同演習は大迫力だったな。

此度の祝いにふさわしい!」

「まあ、ご覧になられましたか。光栄ですわ。

あれこそ喫緊の課題と云われた、エネルギー収穫大躍進計画の結果です」

「ああ、奇術の源泉を別世界から収穫するというアレだな。

先々代総書記長ボリス同志の鳴り物入り政策だったが、名実共に木っ端微塵だな!ハッハハハ」

「ええ、我が国の栄光ある未来に向けた、この上ない規模の祝砲ですわ」

「それよりキミ、例の新型農奴…なんだったか、ああそうバイオロイド、特製玩具の追加の件をよろしくな」

「はい、先ほどの打ち上げでだいぶ消耗しましたから…今後の計画を大幅更新する必要がありまして」

「同志マリアベル、キミは本当に有能だな!

大要綱刷新の際に極力織り込もうじゃないか。今後とも期待してるぞ!」



「…あのマゾ豚が代表に収まって助かったわ。

玩具でも与えておけばご機嫌だから、安いもの。

こちらの更新計画も、おかげで選択肢を増やせるわ。

もうツングースカの魔石資源は枯渇したから、次の段階へ移行ね」


「長官殿、ご報告があります!」

「緊急か?」

「はい!」

「話せ」

「はっ!

先ほどの位相転移カーゴ打ち上げにつきまして、転移は成功、但し時間軸について多少の誤差が確認されました!」

「どの程度?」

「目標値よりプラスゼロ、マイナス500年です!」

「誤差…でもないわね、でも実験自体は問題なかったんでしょう?」

「はっ、そう聞いております!」

「人を寄越すから何かと思ったわ。

博士達には、予定通り会合で会いましょうと伝えて頂戴」



「マリアベルの奴どこまで読んでたやら、向こうの進捗に影響はなさそうじゃな。

ワシらの可愛い孫達を、無碍に放り出したりせんわい。

送り出した時間も場所もこちらの想定通り、最後の二人次第で世界は変わる。

我が国はもう質量干渉出来ん、平行世界群の情報収集が精々じゃ。

孫達にも知らせてない通信網でも覗いて、ばあさんと一緒に楽しもうとするかのぅ」

「ハア…ワタシ達の心血注いだ子達をバイオロイド呼ばわり、挙げ句の果てに玩具扱いとは…いったいどれだけ手間とコストが掛かるか知らないのかしらね。

でも良かった、不幸な子達を少しでも逃がしてあげられて。

 これ以上あんなことが起こらないよう、量産型は効率優先にしなくちゃね。

 もう次からのオーダーが来るみたいだから、今度は培養槽を準備しましょ。

昔と違って成長促進剤も良いのが出たし、ニューロマップも精度が上がって基礎情報は書き込みで済むし。

おじいさんにも協力してもらって、せめてこれから生まれてくる子達は自由意志なんて持たせちゃいけないわ。」



ーーーーーーーーーー

【AD:2100年, 革命新暦:178年】



「ほーら、バァバでちゅよー」

「良かったの、無事生まれて。

専用ポッドを建造せず、選抜した農奴を母胎に仕立てて試験体から出産させるとは、マリアベルも考えたものよの。

これならコストも掛からん、事前調整で母体の影響も極力減らせる」

「あらおじいさん、選別や調整でかなり手間は掛かってますよ。

それでも専用の培養槽を揃えるよりはマシですし、ましてや人工培地なんて対応出来るほど研究員を揃えられませんし」

「ともかく、マリアベル由来のデザインベビーは成功かの」

「ええ、もう一人もすくすく育ってますし」

「あっちは外的因子を盛り込み過ぎて分化・発現に問題が出たと聞いたが」

「まあおじいさん、ワタシのエピゲノム誘発技術を見くびっては困るわ。

器官形成でどうしても失敗が続いたから、ちょーっとだけmRNAを急遽デザインして追加注入・誘導しただけよ。これ以上失敗したらデザイン遺伝子を仕込んだ生殖細胞のストックが切れて、大幅に計画変更を迫られる処だったわ」

「相変わらずバアサンは誤魔化すときは早口じゃのう。

じゃが巧くいったならエエじゃろ」

「もしかしたら副作用で脳形成にしわ寄せが行くかも知れないけれど、些細な事よね」

「人間の場合、出産は発生ステップの通過点に過ぎん。

免疫も精神も多少発育せんと何とも云えんからのう。

まずは二人とも無事出産されたことを祝おう」


「おじいさんの次元コヒーレンスはどうなりました?」

「ああ、順調じゃよ。

やはりサリシャガンは特異地域だった…いや、例の世界軸移動で更に顕著になったようでな、他の地域に比べてデータ収集が格段に捗るわい。

狙いを付けた魔力資源の世界軸だけでなく、資本主義国家群の平衡世界軸まで情報収集が容易になってホクホクじゃ!

 幼いマリアベルに向こうからの転移品の絵本をプレゼントして正解じゃったわい」

「ほらほらおじいさん、脱線してますよ。

これでいて助手嫌いなんだから、マリアベルも苦労するわね」

「ええじゃろが、結果は出しとるわい」

「でもニューロネットのマッピング作業は、流石に他の研究員に委託したら?」

「そうじゃのう…他世界軸からの記憶情報抽出やキリル波の情受信精度も上げねばならんし、いい加減農奴の脳みそも見飽きわい。

何よりマッピング自体の基礎はできとるからn増しで精度を上げる段階じゃし…うむむむ、平行作業は無謀か…

 そうじゃな、定期報告の際に仕様変更届出しとくかの」



ーーーーーーーーーー

【AD:2097年, 革命新暦:175年】


「同志よ、あつまれ!

 我らが連邦共和国大躍進のため、偉大な人民の共闘を願う!

 みなであつまり、じんみんにコウケンしよう!

 ・だれでもできるかんたんなおしごとです

 ・おなかいっぱいたべられます、ふくもねどこもあり

 ・とくにわかいおんなかんげい!

 SSSR保健衛生管理局より」


「あーんなトコにリッパなハコぎょうさんおったてて、ナァニすったべなー。

こないだまでヘンテコな建物がぽつーんと丘の上にあっただけだに」

「なんでも畑作って、ニンゲンつくるらしゃっべ」

「へっ、オラたち農奴は畑からとれるってのをホンキにしてんだべか、おっかしーの」

「んだどもこないだから、ここいらの連中どんどんそこの建物に行ってシューヨーされてるってウワサだっぺぇ」

「シューヨーってなんだべ?

 そういや昨日か、オラんとこらへんでも『うめもん食らわせっがらおいで』って手紙があの丘の…サんシャりガンけ?から来たってジジイがさわいどったな」

「それだべ」



「よくまあ集めたもんじゃのう」

「この周辺は土地が良くないですからねぇ、それでも数千人はいるでしょうか」

「まあええわい、管理の職員に風呂と食事、着替え、寝床の指示を早急に出さんとな。

 とにかく臭いし煩くてかなわん」

「明日になって落ち着いたら、対象グループは遺伝子検査と健康診断ね。

 非対象グループは…そうね、おじいさんところの記憶領域転写のサンプルとして使う?」

「そうじゃな、どうせ終わったら廃棄処分して工場送りじゃしの」

「そういえば転生者やスパイも紛れ込んでるんじゃない?

 世界軸移動で、ヒトもモノもバラバラ降ってきたっていうじゃない」

「ヤツらはどんなに取り繕ってても必ずボロを出す。

 尻尾を掴んだら隔離して別サンプルとして脳から情報を引き抜き、あとは廃棄処分じゃな」

「妥当なところね。

 ここの施設も開所したばかりだし、たくさん人が出入りしそうね!」

「マリアベルは比較的スパイに寛容じゃが、それも相手からの情報提供ありきの寛容さじゃからのぅ」



ーーーーーーーーーー

【AD:2092年, 革命新暦:170年】


「マリアベル新長官、100 000 731ソフホーズ農場の開設及び所長就任おめでとうございます」

「ありがとう、人民のさらなる躍進を願って…乾杯!」

「「「乾杯!」」」

「新所長、今度の農場運営はいかがなさるおつもりで?」

「エネルギー収穫大躍進計画に従い、この地サリシャガンで技術集約型農場として主に技術研究部門を開拓する予定だ」


「アカデミーきっての才女が飛び級の卒業と同時に施設長ですか、夢がありますなぁ」

「これはこれは同志ドゥナイアリタ、こんな田舎者のパーティまで出張って小娘を口説いている場合ですか? 派閥調整でお忙しいでしょうに」

「なに、あんなもの所詮お遊びよ。

最後にモノを言うのは血筋と人脈、次に金。

理想だの革新だの、豚にでも喰わせればいい。

その点キミは総てを兼ね備えた、希有な美しs」

「あら、先ほどから奥様がお目見えでしてよ。

貞淑で有名な方ですから、おいたを見逃すかどうか…」

「ああカテジナこんなところにいたのか!違うんだよ誤解なんだ!」



「…ふん、あの豚しつこいったらない。

精々研究の後援でこき使ってやるわ。


それよりサリシャガンだ。 

スカラー波発現兵器…いや施設と云うべきか。

遂に手に入れた。

魔石資源の豊富なツングースカも地域担当官を押さえた。

これで父の、私の理論の正しさを証明出来る。

この世界の時間軸をねじ曲げ『平行世界進出論』を実践するのだ。


既に機材と工事は手配済み、あとは父の元同僚達を口説き落とさねば。

研究員や職員の配置も急がせて、農奴共も集めて…

しばらく寝る間も惜しいほど忙しくなるな。

なあギルベルト、そう思うだろう?」


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