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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第一章 War ensemble/ウォー・アンサンブル
49/144

049 tr43, farewell/さらば

三人とも驚かせたかっただけのようで、オズボーン親子はさっさと奥の個室で着替えて庶民の恰好になった。

シティアはともかく、二人はロイヤルジョークきついぜ…

来場済みの参加者は、皆揃って目を丸くしてたぞ…

周囲には護衛やら隠密やら居るんだろうけれど、ぱっと見普段と変わらない街並みだ。


ケリーから現状確認。

「これで全員揃ったかな?」

「学園の教師陣が到着してない。

 他の商会員たちは出席しなくていいのか?」

「ああ、今日は護衛に回ってもらうからいいんだ。

 せっかくお忍びなのに、耳のいい貴族連中に押し掛けられても困るからね」

その割にゃあ度肝を抜く登場だったが…


程なく先生方も到着し、随分賑やかなパーティになった。

演奏は、学生の有志たち数組。

タダメシ出席とバーターだそうで、バルト出身のアルフが巧くまとめてくれた。


ヴィクターさんやウィリアムさん、エルンさんとは学術のお話。

ずっと引っかかっていた『科学』の概念の欠如を認識できた。

そこにボブやルー、ちゃっかりクリスに紫まで顔を出し、議論は過熱していた。



――――――――――



頃合いを見て寂しそうなアンに声をかける。

「さっきは悪かったな、今日くらいは楽しんでいきなよ」

「グスン…ひどいです私卒業したらクニに戻されて知らない人と結婚させられて…」

「そのなあ…キミの婿さん欲しいなんだが、本当は手段と取り違えていないか?

ただ嫌だからってだけで遠い学校へ単身出せてもらえて、政略結婚から逃げられる訳じゃないのは気が付いてるだろ。

本来は結婚して、その先何かしたかったんじゃないか。

きっと親御さんも分かってると思うよ。


キミ自身その何かを委ねられたのに気が付いて、すぐにも動きたくてでも出来なくて、焦って手段と目的が逆転して見える。


ルーにも云ったけど、アンは学生だ。

キミは若い、だからこそ周りが見えていない。

もちろん目的が何かは分からないけど、頼れる友人や大人、先生もたくさん居るんだよ。

いったん立ち止まって、今しか此処でしか出来ないことを学び、経験して、人と気持ちを分かち合い、後悔もして、それから方針を見直す余裕は無いのか。

もし巧く行かなくて他の道も潰えて、どうしても先に進めなくなったら…そん時は頼ってくれ」


…ほらな、転移してるから見た目はデカくて若くとも、中身は所詮説教オッサンだ。

せっかく集まってくれたのに申し訳ない。


「…っ、う、ううう、うあーんやっぱりお別れイヤですー!

もっといっぱいお話きいてほしかったのー!

あたちもいっちょにいくー!」

あ、あれ、泣かれた?


「はあ…ケインさん、悪いことしたなぁ。

 アンもちょっとタイミング悪かっただけだからな、まだ機会はあるよ。


この子も割と不幸な身の上でな、普段私達と一緒だと落ち着いてるんだが、時々こうして暴走するんだ。

ルーの事は悔しいけど、アンに優しいのは感謝してる。

でも負けない、アンタ帰ったら私が総取りしてても文句言うなよ!…グスッ」

スヴェンさん、あんま絡みはなかったが彼女なりの慰めか。

最後に、ニッカリスカしてゲンコ合わせの挨拶。

なぜアンタまでもらい泣きしてるのか、オレにゃさっぱりだが。


モニョッて声を掛けられずに居たら、シティアから後頭部ゲンコもろた。

なんでや。



――――――――――



「お楽しみの処ごめんなさいね、私達はそろそろ宿へ戻ります。

ケインさん、あんまり女の子達泣かせちゃいけませんよ?」

ウィンクして王妃閣下とケリーご退場。

シティアもアッカンベーして付いていった。

解せぬ。


夜も深まり、パーティもそろそろお開き。

残った先生方やユッケさん、グラーフ家の面々、皆と最後に無言でハイタッチ、手を握り、抱きしめる。

身体は若くとも、中身オッサンだから涙もろくていけねぇ…

学生達は既に帰宅済み、残るはルーだけ。



――――――――――



「…寂しいのは、本当なんですよ。

小さい頃から、大切な人は皆すぐに去ってしまうの。

お母様は最初から居なかった、曾祖母様は最期に救ってくれたけれど、ずっとは居られなかった。

お父様は忙しくて家に居なかったし、お兄様達もお姉様も大事にしてくれたけれど、いつも一緒に居てくれるわけじゃない。


ケインさんと初めて会ったとき、この人だって直感したの。

でももしかしたらまた居なくなるかも…って、焦っていたのかも知れません。

けれど、ケインさん一生懸命応えてくれた。

最後に、素敵な仲間との過ごし方も示してくれた。

だから寂しくても頑張れるよ!

お手紙楽しみだな、ねっ、黒ヤギさん!」


抱きしめてしまうと全てが歪みそうで、堪えた。

相手を見るだけであふれそうな自分勝手な涙も、飲み込んだ。

子供ながら健気なこの人に、今はありがとうと手を握りしめるしか、出来なかった。


いつでも悪いのは、オレだ。

だがだからこそ、自分で選んだ道に妥協は許さない。



――――――――――



翌水曜日早朝、フルヴァツカ王妃閣下率いるプロイセン帝国訪問一行は、静かにアウストリ帝国首都ウィーンを発った。


秋口の早朝、帝都の広場に旅立ちを見送る人の影はなかった。

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