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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
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126 tr22, wash my sins away/禊を経る

ひとまず荷物とタロ・ジロを預け中所得層向けの商店街へ。

あれ!とかこれ!とかあっ、あんなところに!と走り去ろうとする巨人娘を御し、なんとか日用品を揃え、それでも片手では持てない量の荷物を抱えて宿の部屋に戻ると…棺桶がない。

うんざりして女将の処へ行くと、素知らぬふりで酒場の開店準備を続けていた。


「おい」

すかさず右手を掴み、テーブルへ手のひらを拡げてつけさせる。

「い、いったいなんだってんだ…ヒッ」

腰に付けていた鉈を親指の外側に叩きつける。

「や、やめとくれ!何のことかさっぱ…ヒイイッ」

次は親指と人差し指の間、そして親指の外側に戻す。

「ホラ、ちゃんと指開いてないと無くなるぞ?

 ハンド・ナイフ・トリックならぬハンド・マチェット・トリックだな」

親指の外側を起点に、指の間を順々に鉈で叩いて回る。

「でっかい荷物を背負ってきたから疲れたな。手許が狂うかもしれねえ。

 荷物何処行ったかなあ」

徐々に鉈で机をたたく速さを上げていく。

当然ながらテーブルはささくれ立ちボロボロになっていき、くり抜かれるように掌の形を残す。

「ちょちょっと待ったあたしじゃ無いよ亭主が金になるからってあの重い荷物とスコルを売り払おうとしてヒィィイイイイ」

今度は鉈を首に。

「お前アイツラにまで手を出そうとしたのか?

 今すぐ厩まで先導しろ」

「わ、わかったから乱暴はやめとくれ!」


厩には、タロに胸を押さえつけられ、ジロに頭を加えられた小男が倒れていた。

「ア、アンタ!

だから言ったろヤバいって!どうすんだいこれ!」

「おいそこの男、オレの荷物は何処だ」

「お、同じ階の物置に…」

「アン、悪いが物置からオレの荷物を取ってきてくれないか」

青い顔して固まっているアンゲラに声を掛ける。

「あ、ああ…わかったよ、一番上の階の階段突き当りだよな」



倒れた男、亭主の首根っこを踏み、女将を後ろ手に捩じりながら頷く。

荷物を探しに行っている間、事情聴取。

どうやら昼前に女将が買い出しへ行った際、大騒ぎしている田舎から来たばかりの巨人『男女』とスコルを見かけ、泊りに来たら荷物を矧いだうえ、全員売り飛ばそうと計画していたとの事。

そのために準備していたらホイホイ荷物や動物を置いて出かけたからこれ幸いと荷物を移動し、スコルを魔術で眠らせようとしたものの失敗、亭主の方はそこでタロとジロに取り押さえられた。

女将は酒場で呼び止めてウェルカムドリンクと称して睡眠薬を盛ろうとしたものの素通りされ、下ってきたら再び飲ませようと準備したところを取り押さえられた、と。


入口にほど近い辺りでの騒動だったため、アンゲラが戻る前に警備兵たちがやってきた。

「どうした!何が起こった!」

「この男が突然暴れ…イタタタタやめとくれ!」

「この二人が共謀して荷物を盗んだうえ、そこのオオカミとオレたち2名を売ろうとしていたところを取り押さえた。

 ひきとってくれ」

「証拠か身分証はあるか!このままでは只の暴行で巨人、お前を連行するぞ!」

「おーい荷物見つけたぞー持って来たぞ…うわっ、なんか人が集まってるな」

「そこの娘が持つ箱の中に、リプニツカヤ閣下からの手紙が入ってる。検めろ」

「そ、そうか…うわ重っ!ちょっとお前ら手伝え!」

警備兵の隊長らしき人物以下数名に荷物を検めさせるために亭主と女将を開放する。

女将は右肩が痛いで済んだが、亭主は若干チアノーゼ気味な顔色で気絶していた。


「確かにこれはスヴェリエ王族の、しかもスタンネ家の紋章だ。

 それにこの宿は以前より船乗りのうわさで『人が消える』と言われていたな。

 ひっ捕らえて話を聞かせてもらおうか。

 おい、行くぞ!」

「すみません、お騒がせしました。

 この後現場検証を行うので、この場はこのままにして頂けませんか?

「我々と荷物、そこのオオカミたちは?」

「できればこのまま…」

「ふざけんな、ただでさえ『田舎から来た』オレたちゃ疲れてるんだ。

 宿を確保するか、宿泊できるところを寄越せ」

「は、はぁ…しかし我々警備兵も少ない予算をやりくりしておりまして…」

「そうか、陛下にはそう伝えておこう。

 我々は犯罪に巻き込まれた挙句予算がないので放置された、と」

「そっそれは困ります!」

「代金は出さなくていいからさっさと宿を探してこい!

 下手なところに逃げられるより、お前たちも安心だろうが!」

「はっはい!今すぐに!」


後ろで未だフリーズ状態で立っているアンゲラの肩を叩き、再起動させる。

「いつもじゃねえが、都会じゃこういうこともある。

 だから言ったろ、自分の身は自分で守るんだ」

「あ、ああ…」

いきなりショッキングだったか、だがこの程度は慣れてもらわないと。



隊長が大慌てで探してきたのは、中間層より少し上のグレードの宿。

「大変申し訳ありません、数日はこちらで滞在して頂ければ…」

「ここの犯罪歴は?」

「あっハイいえエート、うちの警備兵の縁故なのでそこは大丈夫です」

「わかった、大騒ぎにして悪かったな。

 後で隊員たちと呑んでくれ」

銀貨を数枚握らせる。

「ありがとうございます!容疑者から尋問の裏が取れ次第また報告しに参ります!」

迂闊だったことは認めるが、結果としては良い授業になった。

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