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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
122/144

122 bonus03, jaw breaker/顎砕き

「ようヨハンじいさん、ユリア様の手紙は読んだか?」

「ああ、だが…俄かには信じられぬな。

 あのスコルを一網打尽?

 一年半近く儂ら集落を苦しめていた、あのオオカミの群れをたった一人でどうにかできるわけなかろう」

「ああ、奴は俺たちとアプローチの仕方が違う。

 ヨンネ父ちゃんも見たろ?俺たちゃ黒と白の二頭のスコルも一緒にここまで来たんだ。

 ケインと知り合って半年以上経つけど、不思議と奴はスコルたちと気が合うようでな。

 黒いのをタロ、白いのをジロって名前まで付けて可愛がって、向こうも随分懐いてる。

 すげーぞアイツら、首輪も手綱もなしで勝手についてきて、自然とお互いに行動をフォローしあってんだから。

 シティア様もユリア様も奴の事はよーく観察してて、多分今回もなんだかんだ言って依頼は引き受けるだろうし、オオカミの群れも接触さえできれば殺し合いせず丸く収めるだろうって予想してた。

 あいつイカつい見かけのくせにお人好しだから、報酬で釣るよりも頼み方次第で引き受けてくれるだろうってさ」

「ウム、その辺は手紙に書いてあったが…

 そんなに上手く行くもんかの?」

「そこはヨハンじいさんの腕次第だな。

 弱ってるやつの頼みは無碍にできないし、筋が通ってれば納得はする。

 オズモシス商会も奴には世話になったし、人格も能力も信用していい。

 ただし、あんま酷く利用してくれるなよ」

「なんの、先にメモを渡してくれたおかげで調査の依頼は受けてもらえたじゃろ。

 ワシらの本心としても、それ以上の期待はしておらん」


「ああそれと、リーヴァの所に顔出してきたんだけどな」

「ふむ?」

「アンゲラちゃん、ずいぶん思い詰めてたぞ?

 ヨハンじいさん、シュレーダーんトコのヨシュアに嫁としてくれてやる約束したんだって?」

「どこから聞いたんじゃ全く。

 …アレは仕方なかったんじゃ。巨人族全体を考えると女子を遊ばせておくわけにいかんし、かといってあの気の強さ、引き取り手がないと他の長老からも説得されてな…」

「本人は売られたと思って相当ショックだったみたいだぜ。

 下手すると、近いうちにまた逃げ出すぞ」

「バカな、何処へ行くというんじゃ」

「小さいころから義姉さんの『アンゲラの大冒険』聞かされて育ったんだろ。

 ここでない何処かへ、冒険に出たいんじゃないか?」

「なんと無謀な…

 モーレイの外に出たことがないからそんな夢物語に憧れるんじゃ!」

「ヤンネ父ちゃんよう、そろそろここのしきたりも替え時なんじゃないか?

 今後アンゲラちゃんみたいな子、もっと出るぞ?

 外は怖いからウチに居ましょ、じゃ済まない時代になりつつあるんだよ。

 ウチは変わらなくても外はどんどん変わってくる、時代錯誤の生活はいずれ破綻するぞ。

 ヨハンじいさんも、覚悟だけはしておきな」

「時代、なのかのう…」

「ああそうそう、ユリア様から『万が一のために』って手紙も預かってる。

 はねっ返りが家出したら読めってよ」

「…わかった。そうならないよう祈ってはおくが」



――――――――――



「出て行きよったか…

 しかも逃走に使った船が沖で漂流しとるのが見つかったから、生存は絶望的かも知らん」

「荷物もまるのまま発見されたからのぅ」

「ただでさえオオカミ捜索で手間取っておるのに、これ以上儂らにはどうにもならん。

 ヨルグの提案通り、アンゲラの件はユリア様の示唆を頂こう」


『親愛なる巨人族の最長老 ヨハン・リーヴァ様へ


 これを読んだという事は、ケインくんがオオカミ対策をしている間にアンゲラちゃんが失踪したってことで良いわね。

 彼女は能力もあるし気も強いけれど、まだまだ知らないことも多くて幼いわ。

 現状に不満で出て行ったのだから、無理に探して連れ戻してもきっと拗れます。

ある程度自由させるといいわよ、きっとすぐ連絡は取れるようになる。

 但し、生きていればね。


 失踪ならば、彼にはリーヴァ氏族かノヴゴロドのロマ族への小包の配送を依頼して、そこに報酬を忍ばせておくといいわ。

 本来渡すはずだったフセスくんの小刀や辺り一帯の地図と共にね。


 彼はこういう時の引きが強いから、どこかで拾ってくれるかもしれない。

その運にかけるしかない。

私からの助言はここまで。

あとは、ヨハンくんの判断に任せるわ。


 それでは、北方の魔女ユリアより』


「先見の魔女様の本領発揮じゃな…」

いつになるかわからんから、報酬の準備だけは先に済ませておく」

「ほとんど絶望的な内容だ、どうしようもない」



――――――――――



「あれで良かったのかのう…」

「なんの、大した演技じゃて!

 そうでも言っておらんと、やってられんわい。

 ケイン殿には悪いが、アンゲラも大事じゃからの…」

「正当な報酬を渡せなかったことも心苦しいが、こんなだまし討ちでは禍根が残る」

「儂らは儂らで、ここの集落の改革をしないとダメじゃな」

「改革、とは?」

「もっと外部との接触を多くして、我々の血族も外に出るべきじゃ。

 そろそろ女子供にも世界を見せて、アンゲラの様な子を増やしてはならん」

「昔から課題にはなっておったが、今回のシュレーダーやアンゲラの件で一刺しできるかもしれんな」

「引退前の一仕事で先導役よろしくお願いしますぞ、親父殿」

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