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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
120/144

120 bonus01, ravenous/熱望

この陰鬱な集落の生活は、本当に嫌になる。

魚を獲ったり他の海賊と戦うための男どもは、アタシたち女が逃げないよう監視も兼ねてよく上陸しては酒盛りしてる。

奥様連中は旦那が外に稼ぎに行ってても平気で、各人の仕事や子育て、家事に勤しんでばかり。

数少ない娯楽は水場や洗濯で始まる悪口大会…すごく嫌。

母ちゃんにはよく家事を手伝えって言われて渋々裁縫や森の収穫位はするけど、いつでも出て行けるように身体は鍛えてる。


アタシは絶対に外で活躍して有名になってやるんだ。

小さいころから母ちゃんに寝物語で聞いて育ったアンゲラの大冒険、とっても好きだった。

アタシも同じ名前だから、いつでも自分が活躍してるみたいで今でもはっきり覚えてる。



巨人の集落は、基本的に女子供と年寄りの男、あと出稼ぎを終わらせた男たちが住んでる。

牧羊や畑仕事、猟師、樵なんかの外の人間に会いそうな仕事は、男たちや年寄り連中が進んで入ってる。

女の子は家事か小さい子の子守に、寄り集まって裁縫したりおしゃべりしたり比較的自由。

気が早い子は直ぐにも結婚したがって、若い男の子達にこっそり会いに行くこともある。

男の子は氏族によって育て方が違うけど、うちの氏族は早いうちから集落に残った男連中に連れられて海や山へ狩りに出かけてた。




それでも15歳未満の未成年の間はお互いあまり接点はない。

普通なら、せいぜい水汲みで偶然会ったり母親と連れ立って出かけたときにすれ違う程度。

15歳になると、いろんな氏族の男女を会わせるパーティが頻繁に開かれたり一緒に仕事をする機会が与えられ、3年間のうちにパートナーを決めることになる。


アタシは、これが嫌だった。


だって、愛情とか家族を作るとかよくわかんない。

友達は好きだよ、男でも女でも。

皆で遊びに行って楽しかった、じゃあダメなの?

この3年だけは男女で遊びに行くのも許されてたから気の合う友達でよく遊びに行ったし、なんだかやたらしつこく声を掛けてくる男も多かったけど、知らない奴は即お断り、友達でも気まずくなるから止めようよってずっとパートナー選びを断ってた。

そのうち声を掛ける男も減って、一部の嫌な奴だけがいつまでも追いかけてくるようになった。

シュレーダー氏族のヨッヘンの弟、イェンスだ。



3年間が過ぎると選ばれなかった者同士でパートナーを決められる。

相手は長老たちが話し合いで決めるって言ってたけど…知ってるんだよ、裏で取引してたの。

アタシは意図的に残してシュレーダー氏族のイェンスとパートナーにするって話が、夜のトレーニング中に長老連の寄り合いから聞こえたんだ。

昔から、耳も鼻も利くからね。

ひいじいちゃんは反対してたけど、シュレーダーは集落の外にある財産や人脈が飛びぬけて多いらしい。

他の長老と共同で押し切られて、最後は黙ってしまった。


イェンスはいつもずっといやらしい目でアタシをみて、やたら肩を組もうとして隙を見ては身体をタッチしてみたり、ニヤニヤ話しかけてきたり他所で「リーヴァんとこのアンゲラはオレの女だからな」なんて吹聴して回ってた。

アタシの他にもアンゲラなんて何人もいるって?そうだね、でも今の世代でリーヴァ氏族のアンゲラはアタシだけだ。

そのうち、触られるのはおろか目につくだけで鳥肌が立つようになった。

女友達は皆シュレーダーが怖くて、誰も庇っちゃくれなかったよ。



17歳になりたての頃、集落ではスコルの群れの襲撃で大騒ぎになった。

最初に猟師や樵が襲われ、外と連絡が取れなくなって、若い男も何人も行方不明で。

そのうち家畜も襲われて、集落は氏族ごとに断絶され、だんだん狼達に追い詰められた。


緊急事態を宣言した長老たちは、ひとまず女子供を氏族ごとに別の離島へ避難させ、残った男たちでオオカミの群れを退治することにしたみたい。

けれど群れのリーダーは狡賢くて、一向に捕まらなかった。

そんなことをしてるうちに一年以上経ち、そろそろ避難生活も限界に近かった。

当然だけどパートナー選びどころじゃない、むしろ女も動員してオオカミ捜索なんて噂すら流れて。


そんな時だ、ミカ氏族のヨルグおじさんがリーヴァ氏族の島を訪ねて来たのは。

ヨルグおじさんはリーヴァの出身だけど、ミカへ移籍した。

アタシの父ちゃんの弟で、小さいころは出稼ぎから帰ってくる度に可愛がってもらったもんだ。

氏族間の移籍は男女の人数差でわりとあるみたいで、長老たちが調整してるんだってさ。

アタシとイェンスも、そういうことになるんだろう…ヤだな。



「集落に男を一人、連れてきた。

奴なら多分オオカミ被害を解決できる、信用していい。

俺の友人で、ユリア様からの紹介でもある。

去年からヨハンじいさんがユリア様へオオカミ退治を依頼してただろ?

ちょうど相性の良さそうな人材が見つかったと聞いてオズモシス商会でも動いてくれて、こっちまで連れてきたんだ。

そろそろ集落に戻れるだろうから、アンゲラもパートナー探し頑張れよ」

「それなんだけどさ…アタシ、絶対にパートナーと一緒になんてなりたくない。

外の世界に行きたいんだ!」

「どうした急に、何かあったのか?」

「実は…聞いちゃったんだ、アタシとシュレーダーのイェンスをパートナーにするのが決まってるって。

 避難前に長老連の寄り合いで話してるのを偶々聞いちゃって、裏取引で売られたんだよアタシ。

 あんなやつと一緒になるくらいなら、いっそ死にたいよ…」

「その話の前に誰か良い人見つからなかったのか、背が高いとか、強いとか、カッコイイとか」

「みんなアタシより弱いし、カッコイイとも思わない。へなちょこばっかり。

 仲の良い男の子は何人かいたけど、皆イェンスに脅されて疎遠になっちゃったし、今どうなったか知らない」

「うーん、集落から出る方法はなくもないが…ヨハンのじい様と相談してみるか。

 まだ何日か滞在予定だから、後でまた来るよ」



*2024/09/08:諸事情により、タイトルを変更しました。

 予定より進行が遅く、内容が全然追いつかん。

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