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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
116/144

116 tr16, fading time/霧散する時

庇岩へ戻り数日。

警戒してるのだろう、狼の遠吠えが聞こえる。当然か。

こちらも石投げは飽きて楽器の練習を始めた頃、朝からヨルグの祖父さんを先頭に二十人ほどの壮年~老人がぞろぞろやってきた。

皆デカい。


「長い間すまなんだ。

ヨルグとエイモット兄弟達が出発した後に、女子供の避難する島で脱走騒ぎが起きての…。

 そういえば白黒のオオカミは何処行ったか?」

「ああ、少々込み入った話になる。

 まずは座ってくれ。

 その前に、そっちの連中は?」

「そうじゃ、彼らはこの集落の長老連じゃよ。

 集落と言っても数十~数百人単位の氏族がいくつも寄り集まって住んでおるで、我らも意見が割れてのう」

「こやつが魔女の使いか」

「シッ、その言い方は失礼じゃといつも言っておろう!」

「じゃが!」

「ここまで来てつまらん意地を張るな、シュレーダーの。

 そんなじゃからヨッヘンみたいな裏切者が出るんじゃ」

「貴様またその話を!」

「今はそんな話をしに来たのではなかろ、いつまで客人に醜態を晒すのか。

 ケインどの、我らの非礼を謝罪する、すまぬが話し合いを始めても良かろうか」

ひときわ大きい、オレより更に頭一つ分超える長身の老人が腰を折る。

足腰はだいぶ弱っており、杖を手放せない様子。


「わかった、何もないがまずは座ってくれ。

 まずはこちらの結果から話そう。


 結論として、スコルをリーダーとする群れと接触した。

 毛並みから推測してかなりの長生き、大きさは肩までの高さで1.7m近く。

 顔の右側には大きな切り傷の痕、腰に白い斑点、メスだ。


 古参のスコルは賢くて、人語を理解しているな。

 俺の連れていた黒と白のオオカミは、そこに預けてきた。

 秋までは人里に降りない、冬以降は縄張りを奥地に移動すると約束してきた。


 これでいいか?

 さあ、次はアンタらが誠意を見せる番だ」



「こぉの若造が!調子に乗るな!」

シュレーダーと呼ばれた、壮年に差し掛かった年頃の男性が斧を手に立ち上がろうとする。

こっちも警戒済みだ、中腰のまま最短距離を全力で飛び込み、顎の下へ高電圧。

煙を吹…く程じゃないもののそれなりに電流もかけたので、筋収縮と共に前のめりに倒れる。

そのままでは怪我するので、受け止めて地面へ転がす。

斧は、全力で谷の方へぶん投げといた。


「集落出身者の紹介でも出入りを拒否し、危険なオオカミの調査を依頼し、あまつさえ今後も考え対策までした報酬がこれか。

 何のためにここに連れがいないのか、考えないのか」


集まったヨルグの祖父や長老たちの大半は眉間にしわを寄せたり、大きくため息をつく者も。

先ほどの長身の長老はヨロヨロと一歩出て、膝をつき両手を地面に付く。

「重ねて申し訳ない、ケイン殿。

 ワシら皆体格は大きく、膂力もある。

排他的なものの中には、思い上がりから暴力ですべて解決しようとする輩もおるのよ…

そこのシュレーダーは追放処分、一族は財産返上、ケイン殿に全て差し上げる。

そのうえで我らの話も聞いてくれぬか」

「財産は不要、荷物になる。

 追放処分はそちらに任せる。

 そのうえで、後ろに隠れてる連中、そうお前らだ。

 そいつらの始末が先だ。

 こんなご老体に頭下げさせて、恥ずかしくないのか」

明らかに睨みつけている数名を煽る。

「腕っぷし自慢なんだろう?

 オレも気が短いもんでな、まとめてかかってこい。

 長老殿、そいつらの処分後に話を聞こう」


巨人とはいえ、長老というだけあって動きは鈍い。

膂力はもとより身体のキレも動きの先読みもヨルグには到底及ばない。

何より連携なくバラバラに動くので、銃を構えた兵隊よりよっぽど立ち回りは楽だ。

4名ほど出てきたが、足を掛けたり拳を引っ張ったり、ものの数分で全員倒れた。

電撃使うまでもない。



「これで終わりか?」

脂汗をかく他の連中を差し置いて、長老に話しかける。

「…こやつらにも、それなりの処分を下しておく。

 ここまであっさりやられるような実力差も図れないなぞ、巨人の面汚し。

 まったく、狭い世界の駆け引きにばかりかまけて怠けるからこうなるのよ…

 お前たちの氏族は、長老権はく奪するから修行しなおしてこい。


すまんが、こ奴らを引き取らせるまで待ってもらえぬか。

 ヤンネ、村まで行ってお前さんのミカ氏族を呼んでくれ」

「その間、こいつらは縛っておくが良いか」

「構わぬ…いや、ぜひお願いしたい」

オオカミたちを縛った縄だ、巨人でも千切れまい。

念のため転がってる四人にも電撃で気を失ってもらい、近場に会った巨木にシュレーダー含め五人を縛り付ける。



ヨルグの祖父、ヤンネが自分の氏族の男どもを引き連れ、縛った連中を迎えに来た頃にはもう昼過ぎ。

「せめてもの詫びに、儂らから食事を差し上げたい。

 そこの岩をテーブルに、残った皆で食べてもらえるか。

 ケイン殿、これは困窮する昨今に儂らでできる精一杯じゃ。

 これで少しでも気を収めてくだされ」

ミカ氏族の曳く荷車には、箱単位でサーモンやニシンなど海鮮物、残り少ないはずの燻製肉、黒パンやエール酒の樽など、山ほどの料理が積まれていた。


箱や岩を上手く使い料理を置き、ヤンネ祖父さん。

「これぞまさにヴァイキング料理じゃ、遠慮せず食べたい放題食べてくれ」

「おい」

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