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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
114/144

114 tr14, times of darkness/暗黒の時

「ダメだ、受け入れることはできぬ」

嵐を乗り越え船を担ぎ、またもや荒れる海を渡ってようやくフィヨルドの先端部、巨人たちの集落モーレイへ命からがら全員到着することができた。

オレ以外この集落の出身で問題なく話を聞ける…と思ってヨルグの祖父に会ったらこれだよ。


「そこな魔物使い、お前は災厄の元凶を連れてよくも村まで来たものだな。

 成敗してくれよう!」

「ちょっとまった!ちゃんと話を聞けじいちゃん!

 コイツはケインってオズモシス商会から連れてきたんだよ!

 後ろのオオカミもずっと南の方から来た、全くこの辺に関係ないただの動物だって!」

「「我々もエイモット・ブラザースも保証する。

 彼はシティア様の紹介で、ユリア様の所から我々がお連れした」」

「ダメじゃ、魔物を村には入れられぬ。

 最近また悪さするスコルが出てきおって大暴れしとるんじゃ。

 今年に入って、もう羊もヤギも半分近くやられたわい…

 ええい、出て行け!

(ヨルグ、庇岩の所で待っとれ)」



――――――――――


10kmほど歩いただろうか、切り立った崖の、ちょうど庇のように岩がかかった場所までヨルグに案内され、暫くしてから祖父はやってきた。

ちなみに彼はおそらく2m超えだが、腰が曲がって成人ほどの長さの杖を突いている。

「おまえたち、危なかったんじゃぞ。

 良く見たか、村の様子を。

 みーんな家の中からこっちの様子を窺っとったわ。

 儂が追い出さなかったら、村のモンから総攻撃じゃ。

 そのくらいオオカミには過敏になっとるんじゃよ


 さて久しぶりじゃなヨルグ、元気にしとったか?

 フルヴァツカの王家にもだいぶ良くしてもらってる様だの。

 大分稼いだし、そろそろ帰ってきても良いんじゃぞ。

 嫁さんも息子も待っとるから、後で会いに行くとええ。


 双子、おぬしらも随分逞しくなって、修行に出した甲斐があったわい。

 あのやんちゃ坊主がのぅ…オツムの方は相変わらずの様じゃがの。

 早いとこユリア様に認めてもらって、アンゲラとナタリエを嫁に取るんじゃよ。


 それからケインさんと言ったかの。

 先ほどは手荒い真似をしてすまんかった。

 スカンジナビアの、特にフィヨルドに住む人間は用心深くて、ただでさえ余所者は警戒されるんじゃ。

 そのうえで白黒オオカミではの…敵意剥き出しでこっちを見てるやつすらおったわい。


 じゃが、ユリア様やシティア様の名前を出されると話は別じゃ。

 あれじゃろ、ナージャシュディ様やフセスラフ様に関わる話。

 後で儂が長老に話をつけてくるから、待っている間に頼まれごとをしてくれんか。

 それには、まず説明が必要じゃよの。



 スコルじゃ。

 ユリア様には教えてもらったかの?

 儂ら人間だけでなく、森に棲む獣の中にも稀に魔力を強く持った個体が生まれことがある。

 オオカミだと大体そこの黒白のように、身体が大きくなる等の見た目の特徴が出るの。

 ヤツらは賢く、誰に教わるでもなく火を操って獲物を追い詰めたり天候を読んで行動したり、とにかく悪賢く他の獣を襲い始める。

 そういった個体はこの地方では『スコル』と呼ばれておって、群れの強いリーダーとして君臨するんじゃ。


 奴ら長生きで数世代のリーダーになる事もあるが、多くの獲物を獲りすぎて急速に群れを拡大しては、獲物が減って群れもしぼむを繰り返して、大体はそのままスコルも死に絶え自然消滅してくれるから放っておいても良いんじゃよ。

 じゃが中には更にずる賢く、獲物をコントロールして長い間群れを維持するスコルもおって、大概は人里離れた地域でひっそり暮らしとるんじゃが、何かの拍子に家畜の味を覚えてしまって…

 近隣じゃ全滅した村もある。


巨人とはいえ、儂らも人間じゃ。

人間と同じ家畜を飼い狩猟し、畑を作り、生活の過不足は外の村と融通するし、行商人だって受け入れておる。

 どこからか人里の存在を知った古参のスコルをリーダーとした群れがこの辺りに降りてきて、儂らが逃げ出さない程度徐々に徐々に家畜や人を襲い始めての…

 そんな噂を聞いたら、未だ襲われてない村落や行商人共はあっという間に逃げだすのも当然。

 もうそんな状態が、ここ数年続いとって、皆イライラしとるんじゃ。


生活が困窮すれば、困窮の原因を憎むのも仕方なかろうて。

村のモンを庇う訳なじゃいが、そんな経緯の最中にお主らとそこのオオカミが飛び込んできたら、目の敵にされるのは火を見るより明らか。


 じゃから、儂らにばかり都合の良い話だというのは百も承知。

 儂が村の中で長老ほか幹部連中と折衝している間、可能であれば古参のスコルがどんな奴か調べておいて欲しいんじゃ。

 特徴がわかれば、元はどのあたりに住んでた群れでどの程度の規模か推測がつく。

 儂らだけで解決できれば一番なんじゃが、ヤツら最初に猟師と樵を襲いおって、敵を知ることすらできん。


 血気盛んでもあぶなっかしい双子みたいな連中は早めに外へ修行に出したし、女子供はとある島に避難させた。

 じゃが、こんな生活何年も続けられんのじゃよ…

 調べるだけでも引き受けてもらえんか、この通り」

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