表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
112/144

112 tr12, time will tell/時は尋ねる

無事手紙も出し終え、ヨルグの用も済んだとのことなので、レイさんことレイチェル王妃閣下とボーフス砦の主ユリアさんに出発の挨拶。


「レイさん、お加減快調なようで顔色も良くなり、安心しました」

「ありがとう、ユリアさんの治療やケインさん達のお世話のおかげよ」

「いやオレはなにも。

 あ、もしかしてタロとジロですか?」

「そう、あの子たち大きくて可愛いわねぇ。

 ユリアちゃんの後ろを付いて来たかと思ったら診察終わるまでちょこんと座っててみたり、具合悪いときは心配そうに近くに寄ってきてくれたりね。

 あの子達、私の家で引き取れないかしら?

「恐れ多い、元は野良の狼ですし、私に懐いてしまっているもので。

 それに彼らの兄弟は、今ブリャチスラヴィチ家で世話になっております」

「そうよね、惜しいけれど先約があるなら仕方ないわ。

 タロちゃんもジロちゃんもモテモテだったわよ」

「はは、名残を惜しんでください」

「あなたも、ちゃんとルーちゃんの処に帰ってあげるのよ、いい?約束」

「肝に銘じておきます」


「名残惜しいわ」

「仕方ないさ、旅の途中だ」

「うふふ、カッコつけちゃって。

 もう出ちゃうのね、寂しくなるわ。

 ねえケインさん、タロちゃんとジロちゃんはここへ置いていかない?

 集落に行ったらいったん戻って、それから旅を続けた方が良いと思うの」

「うーん、そうもいかないけど…なんで?」

「この北の地は牧羊と狩猟が盛んで、狼は天災の象徴と言われているわ。

 神話では『スコル』という天空の狼が太陽や月を食べて、日食や月食を起こすとされていて。

 しかもそのスコル、魔狼フェンリルと森の女巨人との間にできた子なの…

 出来すぎだと思わない?

 都市部はそれでも目立たなければ大丈夫でしょうけれど、農村や集落は気を付けて。

 念のため見せかけ用の革製手綱を作ったから、なるべくつけていた方がいいわ。


 そうそう、この袋もお忘れなく持って行ってね。

 これは私の出身地製の特殊な袋で、今着ているあなたの衣服より丈夫よ。

 中には同郷の人や関係者への贈り物や手紙が入っているわ。

 それからその服、仕舞ってあるサンダルもそうだけれど、最初に身に付けていた物はなるべく身に付けて、捨てずに大事にとっておいた方がいいわよ。

 怪我が治りやすくなるし、後で良いことがあるかもしれないわ」

「わかった、忠告ありがとう。

 タロとジロは、連れて行く。

 彼らはオレの家族だ、別れるのは偲びがたい。

 ただなるべく大人しく目立たないようにする、ただでさえ大きいからな。

 袋はまだ旅行鞄に余裕があるから、後で詰めておく。

 中は覗いても?」

「いいわよ。

 それぞれ宛先と簡単な経緯のメモが付いてるから、旅行中にでも確認してちょうだい。

 それじゃあ皆に宜しく伝えてね、変な女の子に捕まっちゃだめよ、拾ったもの食べちゃ駄目だからね、早く宿題して、お風呂に入って、歯磨いて、早く寝るのよ」

「後半ちゃうやろ」

「うふふ、やっぱりケインさん面白い。

 迷うことが会ったら、いつでもここに帰ってくるのよ。

 私は、いつまでもこの地で待ってるわ」

「…世話になった、ありがとう。

 では、さらば」

「うん、行ってらっしゃい!」



――――――――――



ヨルグと共にイエテボリの港へ。

陸路で行く必要はなく、また先ほどの話が気になったので、なるべく海路を伝っていく方が良いとの結論になった。

日程も余裕があったので、王妃閣下の了承済み。

イエテボリからオスロへの定期船で西海岸沿いに北上し、オスロで小型船でさらに北上して巨人の集落モーレイへ行く予定だ。

障害がなければ、2~3週間で到着するはず。


イエテボリの港で定期船を探す…比較的簡単に見つかった。

が、タロとジロは乗船拒否された。

同乗の家畜や一般人が怯えるのでダメだ、と。

ならば貨物船…も、同様に乗組員から拒否された。

「困ったな、もう50件近く回ってるんだが誰も乗せちゃくれねえ。

 何件かはコイツラ見ただけで『帰れ!』だからな。

 俺達のガタイも場所取るし、もう日も暮れてきたし、どうしたもんか」

「あとは…手分けして停留してる船に声掛けるか…海賊、襲っちゃう?」

「マジか」

「海岸沿いに陸路移動して探す」

「真っ当な漁村だったらどーすんだ」

「湾岸の警備隊に情報聞き出す…あっ、イイコト思いついた。

 オレ、ここの領主様と知り合いだった。

 ヨルグ、領主様か領主代行様に面会申し込もう」

「お、おう」



イエテボリの領主館はイェーテ川の下流、中洲のように川が分岐した先にあるヒジンゲンに建つ。

見事な円形の建物で、館の内外では常に人が動き回っているのがわかるため、人呼んで『ボルボ城』だとか。

転移者…じゃないな、ユリアさんのお茶目だ。


ボルボ城まで二人と二頭で赴き、門番に問い合わせ。

「ボーフスのユリアさんの所から来た。領主様か領主代行様に会えるか」

「予定を取ったか、もしくは身分を証明できるものはあるか」

「どちらもないな…あっ、あの馬車はユリアさんの」

「あらケインさん、もう私の事恋しくなっちゃった?」


ご都合主義が過ぎませんか、それは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ