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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
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110 tr10, don't fear the winter/冬を恐れるな

全く、なんて姉妹だ。

人のことをおもちゃにしおってからに…

王妃閣下からはニコニコして横っ腹突かれるわ、他の隊員からはさんざ妬まれて大変だったんだぞ!

違う!オレはヤってない!潔白だ!

…証明は出来ないけどさ。


ああそれから、首の後ろのバーコードは完全にシティアのウソだったらしい。

真に迫った言い方されたから信じてたのに、ユリアに首筋見せてとお願いしたら

「あら、積極的ね♡」

とか言われたよ。

バーコードなんて影も形もなかった。綺麗なうなじを拝んでおしまい。

シティアに教えられたからそれを目安にしるって答えたら、ハラ抱えて笑われたわ。

そもそもバーコードなんてオレの世界で流行った情報読み取り方式じゃん、くっそー。

覚えてろあのチンチクリンめ。



とはいえ、思ったより事態は深刻かもしれない。

オレは知識から衣食住から時間まで優遇して貰ってぼんやりしてる間にも、SSSR工作員達の浸透工作は進む気がしてならない。

本人たちの意思にかかわらず、だ。


そして話を聞いていて思い出した事が一つ。

フルヴァツカ王国のロヴィニ市街で、オレは確かにアベルに会っていた。

ルーを襲ったドラクル一味の中に居た、あの美青年は間違いなくあいつだろう。

元の体に染みついた記憶が拒否したのかキャパオーバーで精神のブレーカでも落ちたか、名前を聞くまでアベルの存在を忘れていたが。


同じ突入ポッドで転移されてきた工作員だ、会っても当然だろう。

だがケインとしての精神はともかく、ヴォルケインとしての身体は彼を拒絶する。

当時の記憶がない理由は不明だが、少なくとも咄嗟の行動で遠ざけようとしたのは確かだ。

これから他の工作員達に会ったときに、何か聞くことはできるだろうか。

…何にしても、旅の目的が一つ増えた。



何日か暴風雨が続き外に出ることもままならなかったが、ようやくの快晴。

年も明け、レイさんこと王妃閣下の経過も順調だ。

なかなかユリアとの関係の誤解は解けないが、現地スタッフや滞在組とも打ち解けて余裕も出てきた。


そういえば、ユリアの居室に来てくれと言われてたっけ。

タロとジロを従えて呑気に『女の園』の受付さんに声をかけたのが間違いだった。

「Du är sen med att komma, Yulia har väntat länge. Gå genast och be om ursäkt!」

…うわ、久々に来たよマジカル言語。さっぱりわからん。

しかも受付さん、すごい形相で涙まで浮かべて睨んでくるし。

怖いわ。


「来るのが遅いです、ユリア様はずっとずっと待っていましたよ。直ぐ謝りに行きなさい!」

ちゃんとアウストリ語で言い直してくれた。

今は居室に居らず診察室にいる、と聞いたので、慌てて待合室を通り抜け診察室へ。

タロとジロは待合室でお留守番。


「もう、女を待たせちゃだめよケインさん。

 私、待ちくたびれておばあさんになっちゃったわ…」

「それはシャレにならんだろ。

 …っておい!本当に皺だらけじゃねえか!

 突然老化したのか!?おい!おい!!

 ちょっと待ってろ、今誰か呼んでくるから!

 受付さん大変だ!ユリアさんが大変だ!急に変わっちゃったぞ!」



…もうホントやめて、オレの出身世界のローカルネタ。

「ドッキリ成功!」じゃねーよ、看板まで準備しやがって…

今日あたり来るだろうって、わざわざ老化メイクして待ってたんだとユリアさん。

本来の肌は相変わらずぷるっぷるだ。


「うふふ、やっぱりからかい甲斐があるわねケインさん。

 なんだろう、転移者の人たち特有の険が少ないのよね。

 受付ちゃんもドッキリに乗ってくれたし、面白いわ」

オマエラ…



「それでね、用件なんだけど。

 これから巨人族の集落に行くんでしょう?

 彼ら閉鎖的でね、知ってても自分たちの言葉で通すの。

 だから、先に言葉を習得してから言った方が良いと思って。


あちらはね、氷河ができるほどだからかなり厳しい気候よ。

それにフィヨルドって知ってる?

その氷河で山河が削れてとても入り組んだ地域なの、昔から海賊たちが隠れ拠点にしてるくらい。

 だから、冬に案内無しで乗り込んでも、行きつくことはできません。


 ここでしばらく滞在して言葉の習得と、習慣も調べておくべきだわ。

 春になってある程度準備できたら、案内人も手配してあげる」

「お、おう…そりゃそこまでしてもらえりゃ嬉しいけど、そうまでしてもらう理由が思い当たらん。

代価はなんだ?

 大したもん持ってないぞ」

「あら、持ってるじゃないの。

 そのカラダで支払ってもらうわ…♡」

「もうそういうのいいから。

 オッサンからかうんじゃねえって」

「うふふ、冗談よ。

 私の希望として他の工作員に会ってきて欲しいから、そのための準備と思っていいわ。

 実際、大変よ?

例えば私達工作員は効率よく色んな言語を習得したけれど、ケインさんはどうかしらね。


 それに、ちょっとした好奇心もある。

 私達工作員は言語野にイニシエーションで知識を収納したけれど、ヴォルケインさんの習得した言語はどうなるのかしらね?

 イチから学習しなおし?忘却してるだけだから思い出し?それとも道筋が神経系統に残ってて即習得?

 うふふ、長生きするものね。

 楽しみが増えちゃったわ」

「ありがたい話ではあるんだが…ちょっと怖いな」

「何も怖くないわよ?

巨人族の集落周辺ののスオミ語と今後のためにルスカーヤ語、あとこの近所で生活に困らない程度にスヴェリエ語、それから東の方のスラヴ語圏もあった方がいいし、せっかくだからインダス大陸のドラヴィダ語群も楽しいの!

んふふ、楽しみねぇ」



お、鬼がおった。冬よりユリアの方が怖い。


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