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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
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109 tr09, Blackened Karma/黒ずむ業

だいぶ足繁くケインさんの処に通ったお陰で、私たちすっかり仲良しの噂が立ってるわね。

え?他の隊員たちからの誤解を解いてくれって?

やぁねえ、私たちの仲でしょ?誤解なんて…うふふ。

やっぱりケインさん面白いわ。



さて、私達…というか、もう私のお話ね。

ノヴゴロド…旧ホルムガルドでフセラくんとナージャちゃんの行方を聞いたお話はしたわね。

あとは、前にも話した通り現スウェーデンのストックホルムへ行ったわ。

国家なんて、大義名分さえあれば戦う力がなくても入り込むのは難しくないもの。


最初、私はストックホルム市街地で医療のお仕事を始めたわ。

シーちゃんが内情を探って国勢を調べてる間、私は市井で治療師としての地位を確立する作戦ね。

なにも、色香で男性を惑わすだけが女の魅力じゃないもの。

一度評判になってからは簡単で、あれよあれよと王妃様に謁見するようになった。

当時スタンネ家のキンバリー王妃は長年の不妊で悩んでいて、密かに市井から医師を探して治療に当たらせていたわ。

内情含め、シーちゃんのお仕事ね。

謁見して知ったんだけれど、彼女は…いわゆる同性愛者だったの。

そりゃ夜のお勤めがなければ、子供は授かれないわ。

国王も王妃もお互い好きではあるんだけれど、性の不一致でストレスがたまっていたのよ。


だから、私は彼女と良い仲になって、その流れで国王とも会うようにした。

二人で彼を説得し、私が彼らの子供を産む流れにしたのよ。

国王閣下も私の事を気に入ってくれて、首尾よく王室入りして、アレキシ国王との間に無事男の子も授かった。

この頃の世論操作で、だいぶシーちゃんに苦労させちゃったわ。

子供だけ放っておいて去る訳にもいかないから私はこの後王室に留まったけれど、シーちゃんは旅に出ちゃった。

寂しかったけれど忙しかったし、石板で最低限の連絡は皆と取れたからあっという間だったわ。

権力の側に居ると都合も良くて、ドラクルの眷属は教会経由で押しのけられた。


そのうち子供も大きくなって、アレキシから王位継承のタイミングで私も引退の名目で領土を貰えることになって、それでようやくイエテボリやボーフスを手に入れたわ。

イエテボリは栄えていたけれど、ボーフスは…大分朽ち果ててたわね。

カテガット海峡は小国群が建っては潰えるを繰り返していて、西側のスカンジナビアの海岸には辿りつけなくてイェータ川を北上できずじまいで、結果要塞としての機能はだいぶ失われてたから。


慌てることもなかったから、まずはボーフス砦を復興させた。

近隣の町は残っていたからそちらを利用して、でも領主様が直接動いているとバレると良くないから、イエテボリの高級娼館の娼婦がモノ好きで療養地を整えるって名目でね。

領地の経営は有能な子を確保してあったから、そちらはお任せ…ちなみに今の領主代行も、私の息子よ。

ちゃんと国王の方の息子…もう引退しちゃったけど、そちらとは調整済みだから安心してちょうだい。


数十年ぶりに解放されたボーフスの地下室は…見た目では突入ポッドは分からなかった。

シーちゃんに来てもらおうかしら…と思ったけれど、石板経由で相談したら「え?共振機能でわかるんじゃない?」って。

地図に表示されてる以上、石板の機能自体は損なわれていない。

だからまずは使ってみなよって。



早速使ったわ。

ようやく壁の中に塗り込まれた入口を探し当てて、突入ポッドを見つけて、蘇生方法を確認して…ナージャちゃんを蘇らせることができた。

嬉しかったな、この世界に来て一番嬉しかったかも。


彼女は最初、だいぶ弱っていたわ。

当然よ、何百年も時を経ていたんだもの。

突入ポッドの仮死保存機構もエネルギーぎりぎりで、本当は一刻の猶予もなかったみたい。

まるで奇跡ね。


彼女のリハビリも兼ねてこの砦を女性の療養施設にするって決めたのはこの時期かしら。

フレッドちゃんが流れ着いたのも同じ頃ね。

ライカンスロープの子達は数も多いし魔法の身体強化で重宝がられてる面もあるけれど、まだまだ偏見が多いから、自衛の必要に駆られてるわ。

医療技術はそれなりに発展していても、まだまだお産や間違った知識で命を落とす子が多かったし、彼女らにとってもちょうど良かったと思って。

『医師』を名乗らせると危険な目に合うから、ドルイドって事にしたのよ。


そんな日々を見てナージャちゃんは安心したみたいで

「私は後の心残りを訪ねて回りたいんだが、良いだろうか」

って。

反対する理由なんてもちろんない。

リザちゃんや他の子達の居るところに行くと伝えてきて、そのまま去っちゃった。

今から20年くらい前のお話かな。


あとはもう蛇足ね。

シーちゃんみたいな大冒険もなし、リザちゃんみたいな苦悩も無縁、ナージャちゃんにも会えたから自由に生きて欲しいって願いも叶った。

だから、私たちの物語はこれでおしまい。



これからは、アベルとケインの物語になるわ。

いっぱい寄り道して、いっぱい苦悩して、たくさん大切な想いを抱えて、それで来るべき決断の時に備えなさい。


そうそう、渡すものもあるしこれからの相談もあるから、明日からは私のお部屋にいらっしゃい。

ちゃんと受け付けちゃんに言っておくわ。

それじゃあ、おやすみなさい。


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