表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
106/144

106 tr06, riders on the moonlight/月夜の乗り手

…ふう、時間を作るのも大変ね。

長い間生きてると立場ができちゃうの、どんなに逃げててもね。

昔のように自由になりたいわねぇ…


そうそう、私たちの昔話だったわね。

500年前にフセスくんとドラクルがこの世界に来た話はしたっけ?

社会主義世界の博士たちが、ちょっとしたイタズラで彼らをうんと昔に送り込んだの。

いわゆるタイムパラドックスは、事象の揺らぎで吸収される程度の事なら地続きになるみたいで、彼らの足跡もあるわ。

だから、時系列の順にお話ししましょうか。


転移に使われたのは突入ポッドと呼ばれる、アーモンドを縦にした形のロケット。

2名乗船可能で、それぞれ個別に機能を持たせたロケットを7台転移させたことになるわ。

そのうち500年前に送り込まれたのは2台。

フセスくんとドラクルの1台と、ナージャちゃんとおサルさんの突入ポッドが1台。


フセスくんの突入ポッドは医療で使う緊急搬送用のコールドスリープ機能があったんだけど、到着後すぐにドラクルが奪って自分に使ったみたいで、それで現在でも活動してるわ。

気を付けないといけないのはドラクルは体内に寄生虫を飼っていて、その寄生虫で『眷属』と呼んでる劣化版の吸血鬼みたいな連中を量産できるの。

またあいつ自身も主食が人間の血で、吸血行為を常習してるわ。

オツムの具合は良くないけれど、接触する場合は注意してね…あれ、もう会ったことあるのね。


フセスくんは一番早くて、1512年頃には到着してて。

割とすぐに足を怪我しちゃって、手先が器用だったから細工師として生計を立ててたみたい。


もう一台に乗っていたナージャちゃんは、施設時代から恋人同志だったの!キャー

それであの時代に一緒に送られたんでしょうね。

到着したのは4年ほど遅れてて。

ナージャちゃんは本当に強くてね、ここのボーフスは要塞だったのに一人で陥落させちゃって、ここを拠点にフセスくんを待ってた。

巻き添えにあったおサルさんを放置はできなかったし、突入ポッドまで抱えてすれ違えなかったし。


だから迎えに来てもらうために、ナージャちゃんはずっとボーフスで戦争した。

ようやくフセスくんに会えたのは、彼女が到着してから8年も経ってから。

フセスくんとナージャちゃんは結婚して、フセス君は他にも奥さんをたくさんもらって子孫繁栄したわ。

フセスくんの血統はライカンスロープとして、ナージャちゃんはフセスくんとの子供だけもうけたけれど二人とも体格は良かったから巨人の血統として今も残ってる。

この近所に巨人の集落があるのは聞いた?

彼らはちょっと閉鎖的だけれど、それでも500年も血統が残ってるってすごいわよね。



なんでこんなに詳しく知ってるのかって?

ナージャちゃん本人から聞いたもの。

彼女たちの乗ってきた突入ポッドは社会主義世界との通信機材をメインに積載してたんだけれど、簡易の仮死保存装置としても使えるようになっていたの。

そのことを”偶然”ナージャちゃんが見つけてね、1564年に自分で仮死を選んだ。


私達が見つけて蘇生できたのは2001年。

随分遠回りしちゃったけれど、どうしても再開したかったの。

場所自体はずっと前、魔法世界に到着してすぐに知ったんだけれど、絶対に失敗できなかったし下準備も必要だった。


ここスウェーデン王国の王様、知ってる?

あの子、私の孫よ。

公式には私の名前、リプニツカヤ・フォルケ・スタンネ・スヴェリエ、先々代の国王様の側妾をしてたの。

幸い王様にも王妃様にも愛されて、男の子は私の生んだ子だけだったから、国王になれた。

その頃にわがままを言って、ここボーフスやイエテボリの領主にしてもらっちゃったの。

ドラクルたちが来る心配もなかったし、時間はかけたわ。

でも、お陰でナージャちゃんを保管した突入ポッドも確保できたし、安心してナージャちゃんの蘇生施術に取りかかって無事成功させた。

400年たっても蘇生できるって、奇跡よね。


ついでにおサルさんの記録もあったけれど、こちらはミイラ化してた…

それでも彼の遺体は用途によって危険なことにもなるから、ちゃんと処置はしてあるわ。



突入ポッドは4人で協議して、廃棄しないことに決めた。

もう耐用年数はだいぶ過ぎて充電しても使えるかどうか判らないけれど、私達は使う気はない。

万が一の時に、アベルに対する餌として使えるかもしれない程度かな。

…なにより、ナージャちゃんの思い出の品だからね。


それから、私とシーちゃんの搭乗していたポッドもここにある。

医療品や日用品で、魔法世界では手に入らないものが多く積まれてるの。

今回レイチェル王妃閣下に施術した後の投薬は、この積載品を基に私の知識で増産したもの。


この地でね、医療の技術を通じて女のネットワークを作るために女性向けの施術をしてるのよ。

娼婦は半分趣味だけれど、男のネットワークを作りやすいし情報収集にはうってつけ。

領主の仕事は…代行さんに丸投げ!てへっ



だから、私はもうこの地から離れることはできない。

元々で歩くのは好きじゃなかったから、ボーフスは私の故郷。

この地で生きていくわ。




…ごめんなさい、また終わらなかったわね。

でも、お楽しみは多い方が良いでしょ?

きっと、次も終わらないかも!


私達が1945年に到着してからの出来事は、またお話ししに来ます。

それにしてもケインさん、本当に大きいわね…!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ