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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
103/144

103 tr03, days of december/12月のとある日

レイチェル王妃閣下…レイさんの経過は順調なようで、診断室入りの数日後には情報共有の為に全体への説明会が開催された。

全体ブリーフィングとは非常に珍しいが、女性医療や説明責任など、ユリアさんは先進的な思想の女性なのだろう。


しばらく…数か月は経過観察との事で、ある者は契約終了としてこの地を去る準備をし、ある者は本国へ連絡の為旅装を整え、またある者はボーフスに留まり王妃閣下の身の回りを世話する。

オレは…あの日以来、待てと言われれば待つしかない。

タロとジロ、二頭のハイイロオオカミと狩りに興じたり、楽器の演奏をしたり、ボーフス観光やイエテボリ散策をしたり…つまり、暇だ。


ここボーフス砦を含めたイエテボリ領はスウェーデン王国領だ。

様々な歴史的経緯があり、ここ150年ほどはスタンネ・スヴェンスク王家の下安定した統治が図られている。

バルト海を囲む諸国のうちで最も強大で、バルト連合国…帝国と解釈したが、そこまで立場は強くないそうだ…の盟主として君臨する。

近年は戦争も少なく政治も安定してきたためいよいよ外交に力を入れたい、そのため隣国を含めた通商上有利な国家としてフルヴァツカ王国に白羽の矢が立った。

そこで、今回の治療騒動。

渡りに船で、国家側としても受け入れない訳にはいかなかったのだろう。


イエテボリの領主は、現国王ミカエルの祖母にあたるリプニツカヤ様というらしい。

他国家でも例の少ない女領主だが、ここボーフス砦は過去何度かそういった例もあったようだ。

領民の評判は上々、更に社交界では女性の評判がよく、邪な男性が領土を狙う度に社交界で総スカンを食らい、再起不能に陥る例が後を絶たない。

男性もファンが多く、訪れる貴族は多いという。



「やっと快復の兆しが見えたわ。

 転移は現在見られません、経過も順調だから急変しなければ春には帰国できるかも。

 但しその場合でも、帰国後も経過観察として定期的に自己検診の結果を送ってください。

 良いですね、これは侍従長の責任ですよ?」

「はっ、はい。重々承知しております。

 そして、お会いした頃のご無礼を謝罪いたします…」

「謝罪は受けます。ただ、それも仕方ない事。

 同じ女性として、素敵な貴女は立場の弱い子に配慮してあげるともっと輝けるはず。

 今日のパンを買うために身売りする子供は、多くない方が良いと思うの…」

「我が国はそこまで貧困は目立ちませんが…それでも、ここでは沢山の事を知りました。

 私達には、私たちなりの選択肢があるのですね。

 正面から当たっても勝てない、ならば自分の得意な分野へ引きずr」

「熱く語る姿も綺麗だけど、まずは身近なところから。

リタさんを一番大事にしてあげて。

目の前の事ばかりではなく、少し広く見えるように。

 侍従長さん、あなたも充分他人を大事にできる愛情に満ちていますよ」

「うっ…ユリア様ぁ!」

…あとでリタさんに忠告しておかないと。

近衛でこれだと、将来危ういわ。


緊迫した事態を漸く収拾し、ヴォルケイン…ケインさんの部屋へ向かう。

昼は力いっぱい遊びまわっているようで、ホント男の子って感じね。

夜も更けたこの時間なら、彼も戻っているでしょう。

「ケインさん、いますか?」

「ああ、ようやく来たか。

 少々散らかっているが、どうぞ」

彼は机に向かって書き物、オオカミたちは床で丸くなり寝息を立ててリラックス。

…まだ油断はできない。

「わざわざ出向いてもらって悪いな、来客用の椅子に移ろうか。

 シティアから博識な姉妹と聞いてやってきたんだが、こんなに綺麗だとは思わなくて…その、不意を突かれた」

「私の事、覚えてる?」

「いや、全く。

 あいつには説明したんだが、オレはそちらのSSSRとは違う世界から転移というか脳の中身だけ移されたようで、身体は立派だが別人だと思ってくれ。

 こっちの世界に来たときはちょうど突入ポッド?飛行物体から投げ出されてあちこち打った状態で、頭もホレこのとおり、額が割れてな。

 そこにいるハイイロオオカミたちはその衝撃でみなしごになった子狼四頭のうち二頭で、懐かれて付いてきちまった。

 ルー…ルイーズもシティアもその墜落したイストリア半島で出会って、その後縁あってフルヴァツカの王子や王妃と知り合い、ここに至る訳だ。


「うん確信した、あなたヴォルケインさんじゃないわね。

 あのひと寡黙だったもの、これ元の彼と違う」

「酷い云われ様だな、ちなみにここいらのスオミ語やルスキ語はわからんよ」

「そうよね、中身が違うならこれだけアウストリ語を操ってるだけでも大したものよ。

 ここいらで見かける転生・転移者は、たいがい彼らの言語…ニホン語かリアタ語が精々だもの。

 私達工作員はね、この世界に来る前にたくさん教育を受けて、準備したうえで突入ポッドでこの世界に転移された。


 だから、私達工作員も他の世界からの異世界転移者なの。

 それにしてもあなた、話せば話すほど本当にヴォルケインさんとは別人なのね。

 とっても面白いわ」

「なんだい、そんなに違うかよユリアさん。

 オレぁ元々おしゃべりなんでな、その点はヴォルケイン?と確かに違うけどよ」

「ふふっ、そうね。

 最初はちょっと疑ってたけれど、これなら大丈夫かな。

 改めて大筋の経緯は教えてあげる。

 私たちの考えもお話をしてあげるから、それでこれからの事を判断するといいわ」

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