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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
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102 tr02, through ages/齢を重ねる

「ではまず最優先でレイチェル王女閣下…お忍びですから滞在中はレイさんでよろしいかしら。

 あまりお具合が良くなさそうなので、直ぐ処置に取り掛かりましょう。

 女性の付き添いさん2名と共に、こちらの処置室へいらしてください。

 ここから先は女の園ですの、例え愛しのケインちゃんでも入れてあげられないわよ」

「…では筆頭侍女の私と、護衛としてアンナいらっしゃい」

元は執務室だったか、日当たりの良く広い部屋へユリアさん以下四名が吸い込まれていった。

我々は、居室で待機。

…初対面なのに、完全にダシにされたな。最後に投げキッスまでしやがって。

皆の視線が痛いが、気は逸れただろう。



「レイさんはまだお若いから、病状の進行が早いかもしれません。


 最も延命する可能性のある方法は、患部を除去し経過観察。

 緊急事態ですから直近ではあまり身体によくない検査方法で患部を特定し、そのまま外科手術へ移行し除去します。

 術後は経過観察で…春頃までは滞在して頂くことになります。

 場合によっては、それより長くかかる可能性もあります。


 次善の策としては投薬で、これは病気と痛みの進行を緩やかにし、数ヶ月から数年程度の延命は可能です。

 この場合は特別なお薬を処方しますが、一旦帰国し地元で療養ですね。定期的に薬を送ります。


 最悪の場合は今痛い胸部以外に転移…悪い部分が広がっていた場合。

 こうなったらもう…痛み止めは差し上げますが、それ以上の措置は取れません。


 いづれにしても、このまま我慢という名の放置をしても、悪化はすれど良くなることはありません」



「…やっぱり、そこまで悪いのね。

 他の者を連れて来なくて正解でした。

 大騒ぎしてユリアさんのみならず、国際問題を起こしかねませんから。

 女は度胸です。

 他でもないシティアさんから紹介していただいたユリアさんの意見です。信じましょう。

 一番治る可能性のある方法をお願いします。

「王妃さま!それは!」

「良いのです。

このまま手をこまねいて何もしない方が、私には耐えられません。

 ユリアさん、可能な限り早く検査と手術の手配をお願いします」

「レイさんが理解のある方で助かります。

 シーちゃ…ゴホン、シティアの紹介とはいえ、こんな頭の軽そうな売女の言う事なんて信じられるか!と激高される方もいらっしゃいますからね」

「そ、そんなこと言う方もいらっしゃるのですね…」

侍従長と護衛がそっと下を向く。


「それはともかく、処置は早いほうが良いでしょう。

先ず入口とは別のこちらのドアへ進んでいただき、沐浴し身体の汚れを落とします。

侍従長さん、共に入るならあなたも共にお願いします。

身体の洗い方や順路の進み方は、この先で控える助手にお尋ねください。

準備が済んだら、身体測定から始めます」


こういった女性の悩み事相談は定常的にあるようで、手際のよさに驚きました。

また、少なからず女性間でも偏見の意識が残っているとは…

実際は相手のタイプによって、主人であるユリアさん他2名の誰かが対応し、円滑に進めるそうです。

医療を手伝うお弟子さんも女性ばかり何人もいて、”ドルイド”の名の許で或いは独立し各地で活動している事も聞きました。

彼女自身は表に出たがらない…というよりこの分野はあくまでも副業で、本業は娼婦だから治療師を名乗るつもりはないとか。

それでもユリアさんの弟子の中で、総てを継承できた方はいらっしゃらないとか。

また、思想的・政治的な関係を持つつもりは一切ないようで、例えお弟子さんの直談判でも動かない、など、助手の方から沐浴の際に、ユリアさんの人となりを色々聞くことができました。

彼女の関わる分野は、いづれも女性として危険の多いお仕事です。


沐浴も済み、身体測定や問診、触診を経て、馴染のない白い寝台に横たわり様々なポーズをとるよう指示される。

これが、身体を痛める検査でしょうか。

魔法の一種かと思い尋ねましたが、彼女は笑って「科学ですよ」とだけ答えました。

これより暫く私の出来ることは騒がず云うことに従うだけ。

夫や息子たちに、再び会うために。



アンナさんがこの施設の女性と共に診療室から出てきた。

肩幅の拾い鍛え抜かれた筋肉、刈り込んだ金髪、武張った体格で男顔負けのアンナさんとは対照的な、白衣に茶色のショートが映える、たおやかで知的な妙齢のライカンスロープの女性。

共通するのは、平均的な男性をも大幅に超える身長だろうか。


「これから緊急措置にh」

「横からごめんなさい、私から説明しますね。

 私はフレゼリカ・ノルドストームといいます。気軽にフェリと呼んでいただけると嬉しいです。

 ユリア様の弟子で、こちらの療養施設全般の業務を取り仕切っております。


 レイさんはこれから検査に入り、リラックスしていただくためにそのまま数日間は女の園で過ごしていただきます。

 女性だから出入り自由、というわけではありませんが、私たちも高貴な女性を幾度も預かった実績がありますから、彼女へのエスコートは万全です。

皆さまもその間はどうか安心して、この保養地で旅の疲れをいやしてください」

「閣下は大丈夫なのか!容態は悪いんじゃないのか!?」

「大丈夫です、フルヴァツカからはるばる2か月の旅に耐えられたレイさんですもの、疲れが少し多めに出たのでしょう。

 さあ、皆さんが落ち着かないと閣下も自らの治療に専念できません。

 そちらに案内嬢も迎えに来ましたから、宿泊所へ移動しましょう」

おっかねぇ、一挙に場の雰囲気を飲み込んじまったよ…

アンナさんと連絡係なんかの手配の話し合いをする傍ら、スっとオレに紙片を渡してきた。


『ひと段落付きましたら、迎えに行きます。 ユリアより』

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