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War Ensemble/ウォー・アンサンブル ~戦争合奏曲  作者: 改案堂
第三章 Diabolous in Musica/音楽に潜む悪魔
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101 tr01, she killed and smiled/彼女は殺し、そして笑む

「…ということがあってね。

 だから、私達工作員も他の世界からの異世界転移者なの。

 それにしてもあなた、話せば話すほど本当にヴォルケインさんとは別人なのね。

 とっても面白いわ」

「なんだい、そんなに違うかよユリアさん。

 オレぁ元々おしゃべりなんでな、その点はヴォルケイン?と確かに違うけどよ」




オレ、加藤化殷(カトウケイン)

現代社会から突然転移?憑依?頭の中身だけこの世界に飛ばされ、絶賛困惑中。

フルヴァツカ王妃閣下の旅に護衛で付き従い、地中海からはるかバルト海を超え、ここスカンジナヴィア半島の南西側イエテボリ近傍、ボーフス砦へ来ております。

治療の紹介を受けたユリアというとても色っぽい巨乳のお姉さん、色気ありすぎてとても困るのです。

国のトップの人のために来たのに、先ずオレに向かって「後で会いたいわ」って…

ボク困るのです。



地中海の東側、国会の西に位置するアウストリ=マジヤル=イスパノ三重帝国のうちアウストリ帝国に所属するフルヴァツカ王国。

その北側に国境を接するプロイセン帝国は、現在脅威を同じくする東神聖ルスカーヤ帝国に対抗するため、両国は休戦協定中だ。

更に通商協定や国同士の結びつきをアピールする目的か、フルヴァツカ王国の第一王子とプロイセン帝国の王女が婚姻する事になった。

盛大なセレモニーが計画され、国の格としては下のフルヴァツカ王国国王・王妃の両名が結婚式に出席する。

リスク回避のため両名は別移動…ということになっており、オレは王妃護衛の一員として数週間にわたる大名行列にくっついて回ってるわけだ。


両国とも国の威信にかかるため警備は厳重、テロ対策も何重にわたって敷かれている。

やや不便ながら最前線で張り付く身としては、ありがたいことこの上なし。

身長2mを超す同僚の巨人ヨンネやオレは、いわば目に見える襲撃対策だ。

大方の荷物は預け、代わりにイヴァン伯爵から頂いた大剣を背負って王妃の乗る馬車と併走する。

…そう、小走りながら走っての移動だ。

体格に耐えられそうな馬が手配できなかったし、本当にいざというときは守りに徹せられる。


プロイセン側の協力もあり、結婚式会場の首都ベルリンまでは大きなトラブルもなく移動できた。

厳戒態勢のなか襲撃するほど、吸血鬼ドラクルとその眷属は愚かではなかったようだ。

尤も、単に我々の所まで辿り着けなかっただけかもしれないが。


結婚セレモニーは盛大に行われた。

流れとしては休戦から友好アピールし、同盟まで持って行きたいんだろう。

元々関係も悪くなかったようだし、同盟関係になればフルヴァツカ…いや、アウストリ帝国はますます盤石の体制になるだろう。

プロイセン側も疲弊した国内情勢を立て直すのに必死だ。

オレの仕事は主賓の周辺警戒だが、その辺はヨンネが慣れているのとフルヴァツカの兵隊たちが主に動いてくれたので、お行儀よく立ってる程度。


準備含め相当日数をベルリンで過ごし、撤収作業まで終わるともう11月。

アウストリの帝都ウィーンを出発したのが10月だから、もう1ヶ月か。

厳戒態勢な事もあり、ルイーズとの手紙は控えていた。

音が出るので楽器の練習もできない。

なので、ひたすら柔軟体操と身体のバランスを鍛える室内運動に終始していた。



さて、問題はこれから。

レイチェル・ケーギン・オズボーン・フォン・フルヴァツカ王妃閣下は現在ご病気であらせられる。

棟のしこりに続いて幹部周辺が赤く浮腫も出ているらしい。

また痛みを伴っていて、出会ったころから我慢しているのがそれとわかるほど辛そうだった。


オレの出身とはまた違う異世界から転移してきたSSSR工作員シティアの見立てによると、彼女は『乳がん』のようだ。

オレもなんとなくそう思う。

男だか女だかわからんチビっ子のシティアから紹介され、ユリアという医療の得意な工作員の所まで移動するのが今回のミッション。

ユリアさんはプロイセンより更に北、バルト帝国のイエテボリ在住らしい。

あのイエテボリか。インフレイムスやダークトランキュリティーか!

…いや、居るワケないか。


ともかくここからが大変だった。

お忍びで他国に行くわけだから、ある程度段取りは合っても厳戒体制を依頼とはいかない。

むしろ敵の懐に跳び国くらいの覚悟は必要。

海路は逃げ場がなく危険なのでなるべく陸路を通る計画として、ハンブルクからオーデンセ、コペンハーゲン経由でイエテボリを目指したが…とにかく眷属の襲撃が多い。


プロイセン国内と傘下のデーン国辺りまでは国軍が動いてくれたが、ナージャシュディ王国首都のあるシエラン島に入った途端目つきのオカシイ連中が襲ってくるようになった。

地元の領主にクレームを入れたものの「最近数が多くて、我々も苦慮している」と苦々しげだ。

現状で対応は出来ているから致し方なし、むしろ地元の人間が減る方がダメージ大きかろうと王妃閣下も鷹揚に対応していた。



コペンハーゲンを北へ抜けほんの少しの船移動を経て、ヘルシングボリへ。

スカンジナビア半島内では吸血鬼対策が進んでいるのか、眷属はグっと減った。

ただ寒いと痛みも増すのか王妃閣下の様態が思わしくないので、少しだけ旅路を急ぐ。

だんだん寒さが厳しくなり12月に差し掛かろうかという頃、ようやく目的地のイエテボリへ到着した。


工作員たちの持つ通信手段の石板を使い、シティアからユリアさんへ予め連絡されていたらしい。

到着して数日でユリアさんからの使いが訪れ、イェータ川を北上したボーフスの別荘で待機してほしいとの事。

普段はイエテボリで仕事しているが、ボーフス周辺は彼女の所有物で、この周辺は保養地として利用しているらしい。


女主人は先に別荘で待っていたようで、そこには化粧もしていないのに香り立つほどの色気をまとった美女が一行を迎え入れた。

…で、会って第一声が「後で会いたいわ」だよ。

他の随行者の野郎におもっくそ向う脛蹴飛ばされたわ。

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