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三題噺もどき3

探し物

作者: 狐彪

三題噺もどき―よんひゃくにじゅうなな。

 


 視界の隅で、ふわりとカーテンが舞う。


 もうそろそろ温かくなってもいいのではないかという、今日この頃。

 しかし一向にその気配はなく、冷たい風が毎日吹いている。

 数週間前は昼間なんて暑いぐらいだったのに……ホントにそんな日あったあだろうかと思ってしまう。

「……」

 手に持っていた箱を床に置き、開け放していた窓を閉めに行く。

 空気の入れ替えだと言い聞かせていたが、さすがに寒すぎる。

 暑いのは耐えられるが、寒いのは耐性がない。勘弁してほしい。

「……」

 レースのカーテンを閉めなおし、窓の鍵を閉め、先程いた場所へと戻る。

 床に置いていた箱を手に取り、蓋を開けて中身を確認する。

 ……この箱じゃない。

「……」

 今朝は久しぶりにすんなりと起きることができた。

 多少の頭痛はあったが、それはもうこうなる前からのものなので、たいした障害にはならない。少しほっとけば治まるし。

「……」

 それで、軽く朝食を摂って、コーヒーを飲んで。

 さて、今日の予定は……と、カレンダーを見てみたが。

 特に何もなかった。―このカレンダーは妹にもらったものだ。確か車の点検か何かでもらったのだと言っていた。可愛らしいキャラクターが乗っている。

「……」

 特に何もないなら、いつも通り読書でもしようかと思い、本を取りに自室へ戻ろうとした矢先。

 カレンダー、妹、で思いだしたことがあって。

 それで、探し物ついでに断捨離でもしてみようかと、今に至る。

「……」

 少し前に片づけはしたが、まだすべては終えていない。

 というか、捨てる捨てないの判断をしきれていないものが何個かある。

 ので、その辺を片付けつつ……筆を探している。

「……」

 この間、神社に行きがてら妹が話していたのだが。

 どうやら息子―私から見れば甥っ子―が、芸術分野にものすごく興味を持っているらしく。この間の折り紙云々もその延長らしい。

「……」

 それでまぁ、絵具とかクレヨンとかクーピーとか、その辺のものを欲しがるようになったらしい。

 ―そういえば、過去に見せてくれた絵もかなりうまかった気がする。年齢にしては……なんてことはいいたかないが……あのぐらいの子供が描くものにしては見事なものだと思ったことがある。

 空と一言でも言っても、水色だったり青だったり、雲も白や灰で塗っていたり。

 子供の感性ゆえだとは思うが……可愛さ余ってうちの甥っ子は天才かと感激すら覚えた。

「……」

 そんな息子が絵をかきたがるのだと言う話になったのだけど。

 そういえば、お姉ちゃん絵具とか持ってたよね?といわれたので。

 それを探している……のだけど。

「……」

 絵具は纏めて置いていたので、すぐに見つかったのだ……けど……筆が見当たらない。

 こういうのは基本セットで置いておくべきなんだが、こういところに変な雑さが見えてしまって嫌だな。

「……」

 もしかしたら、筆は使い物にならなくなって捨てたのかもしれないな。

 その可能性は十分にあるが……全くもって記憶がない。

 この絵具だって使えるかどうか……何年も前のものだし。

 学生の頃……選択授業だった芸術で、迷いなく美術を選んだ私の遺産だ。

「……」

 ふむ。

「……」

 特に今日は予定もないし。

 筆は見つかりそうにないし。

 絵具が使えるか確認したいし。

 筆ぐらいなら近くに売っているだろうし。

「……」

 少々寒さは気になるが、散歩がてら筆を買いに出て。

 帰ってきたら久しぶりに絵でも描いてみようかな。

 絵心があるわけでもないが、ない……わけでもないし、だれに見せるわけでもないし。

「……」

 甥っ子が興味を持ったのも、何かの縁かもしれない。……そんなわけないか。

 まぁでも、スケッチブックも見つかったし、絵を描くのはいいかもしれない。

 二冊あったから、一冊は甥っ子にあげよう。

「……よし」

 そうと決まれば―だ。

 善は急げでもないが、今夜また妹にでも連絡を入れておこう。







 お題:空・息子・筆

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