ミカエラ
ミカエラはフィリアの前でウォルターを「パパ」と呼び飛び付き、抱きあげられる様を見せるのを好んだ。
マリーラを「ママ」と呼び、撫でられた後にその髪を優しく櫛付られるのを見せるのを好んだ。
何故か? フィリアがそうすると涙目になり、悔しそうに自分をじっと見つめるから。
見つめることしかできないのだ。 母は亡く、父は私のもの。 それは、いままでウォルターの金で平民の中では良い暮らしを味わってきたなかでも味わえなかった「喜び」だった。
だから、ミカエラはフィリアの心が乱されることをするのを特に好んだ。
フィリアのものであった髪を結うリボンを編み込みに使うのだと割いてみたり。
何度も読まれた跡のある絵本を、わざと庭の池に沈めたり。
食事の給仕をさせている間に、わざとお腹を空かせているであろうフィリアの前でメインの肉を床に落としてみたり。
フィリアに好きな色を聞き、自分と母のお揃いのドレスを仕立てたり。
母マリーラも、ミカエラのその様子には気付いたようで次はどうしようかと一緒に考えてくれる。
ミカエラは、幸せであった。 今までは、町家に住み父はよく来てくれたが「父」とは表立って言う事は出来なかった。
それが、今では伯爵家の館に住み、豪華なご飯を食べ、着るものは肌触りも仕立ても今までより何倍も良いドレス。 両親も仲良さそうに自分を愛してくれるし、使用人が何人もいる。 その内、一人は玩具にしても大人からは怒られない。 なんて私は、世に愛されているのかしら「フィリアと違って」とミカエラは思った。
更に、ミカエラがそう思える理由があった。




