噓だと思ってた優しさ
私は友達がいないわけではないけれど、少ない方、そしてその友達が人気者、漫画の中の微妙な立ち位置の人間、番外編の主役さえもできないけれど、そこにも友達として出演するような微妙な人間。自分の立ち位置に不満を持ったことはないけれど、常に楽しそうで、恋愛もしている友達を見ているとやはりキラキラしていてあこがれてしまう。けれど、自分の特徴としてのキラキラしているような役が唯一ある、先生から渡された委員長だ。地域のボランティア委員会の委員長だ。
今は年に1回ある地域の祭りのボランティアの人数が少なく担当の先生からも増やしてほしいといわれていた。その活動は夏休みの少し離れたところにある大きな祭りと同じ日ということもあり人数が増えず昔から活動の課題となっていた、そして委員会としての最後の活動になる。とにかくまずはポスターなどでアピールするしかない。今日の委員会ではそれについてのポスターをみんなに書いてもらう。ボランティア活動は2か月に1回ほど土曜日にあり正直言って委員だからといって絶対参加というわけではない、この委員会での絶対の活動はポスターを描くということだけだ。私は何度か小さい頃から参加しており、今は委員長なこともありでズル休みのようなことはしない。とにかく今は参加表の準備や活動計画を記入しなければいけない。
「今回の活動忙しそうだけどなんか特別なのあるの?」
同じクラスの委員の1人かいと君だ。彼は人気者側の人間でこの委員会に入った理由も活動が少ないからなのだろう。話しかけられて気付いたがほかの委員の子たちはみんなポスターを描き終わり帰っていた。
「今回の祭りは毎年人数が少なくて増やすための活動しないとでさ、どうしようかなってね」
「絶対人数増やさないといけない感じなん?」
「いや、絶対なわけじゃないけど、一応委員長やってるし、何気に楽しいからやってほしいかなって」
「それじゃあ俺も参加しようかな」
たしか、彼はこの委員会に入るのは今年が初めてであり、土曜日は部活で忙しく今まで参加したことがない。しかも大きな祭りと同じ日なこともあり友達と行くならその祭りの方が合っていていいだろうな。
「いやいや、いいよ別に無理して参加しなくても」
「まぁまぁ、委員長さん頑張って!俺は部活行くわ!じゃあな!」
「うん。頑張ってね!」
きっと参加者を増やす活動を頑張るために励ましてくれたようなものだろう。その後、先生と話し合い、活動としては各学年に内容を詳しく知らせる、ポスターを多く掲示する、又新しい活動として参加者には当日にお菓子と飲み物、活動記念の帽子を渡すことになった。活動記念の帽子に関しては先生が体育祭のような記念品にしようという話になっただけだ。大きな祭りに勝てるかと言ったらどうなのだろう、とにかく願うしかない。
ついに希望者の締切日だ。クラスごとの参加表を集めている時から気になっていたが提出するときに気づいた、参加者が多かった。誰なのか表を見てみると、誘った私の友達がちゃんと参加にしてくれてる、そして驚いた。かいと君が参加希望にしているのはもちろん、彼の友達がたくさん参加にしてくれている。自分たちの学年からたくさんの人が参加してくれる。疑ってしまった、嘘だと思い信じていなかったことがなんだか申し訳ない。そう思っているとちょうど廊下にかいと君がいた。
「かいと君!」
「ん?どうしたん?」
「本当に参加してくれると思ってなかったよ。ありがとうね!」
「言っただろ参加するって!」
「いや、部活で難しいと思ってたよ。あと、みんなも誘ったんだよね?」
「だって男子俺だけだったりしたら嫌だし」
「本当にありがとうね!今度なんか手伝える事とかあったら言って、パシリとかにでも使って!」
「そんなに言うのかよ!じゃあな、帰りに飲みもん買って!」
「分かった!じゃあ、後でね!」
帰りはどの部活もいつも同じくらいの時間でプラス彼らの部活のメンバーと私たちの部活のメンバーは仲が良く一緒に帰っているからいつもどうりのことだ。それにしても本当に優しすぎる。申し訳ないが彼は先生に怒られることが多く、今までこんなに優しい人だとは思っていなかった。
部活が終わると玄関で彼の部活のみんなと会った。ちょうどよかったと思い探したが珍しく、かいと君だけがいない。
「かいと君どこにいるか知ってる?」
「あいつなら顧問に用があるって言ってたわ」
先に帰ったかと心配になったがよかった、みんなも待っててもらうのは申し訳ないと思い委員会の話を忘れていたということで先に帰ってもらった。よくよく考えればこのサブキャラの私は性別関係なく2人で帰ったことはない、2人となると静かになりそうで心配になる。というか、よく考えるといつものみんながいるとなると祭りは今までより相当にぎやかになりそうな気がしてしまう。
「あれ、待っててくれたん!ごめんな」
「いや大丈夫だよ!お疲れ様!」
「それじゃあ行くか!」
ちょうど帰り道に自販機があるからいつもの道をいくことにした。部活の終わった時間から時間が経ったからなのか、人は少なくなっているけれど、何人か、いやカップルが多い、見ていると幸せを感じる。
「なぁ、たしかあいつらって付き合って3ヶ月とかの投稿してたよな」
「私も見たよそれ!幸せそうでいいよね」
「ああいうやつら見てるのって幸せだよな。うらやましいよ。俺も彼女ほしいよー!」
「珍しいね、今いないんだっけ?」
「いや、珍しいって、何言ってんだよ!そもそも俺は彼女いたことねぇからな」
驚いた。正直な話、彼は今回の参加もあるように人にやさしく、スポーツもできる人間という特徴があり女子からモテてるのは確実な人間であり、何人かが彼に告白したという話は聞いていたから彼女はいるのだろうと思っていた。とにかく私はそれ以上に、『いたことがない』という言葉に驚いた。不思議で仕方ない。まだ若い学生だからこそ彼女を作るより色んな人と遊んでたいという感じなのだろうか、あるいは、漫画にあるような初恋の人を忘れられないというようなことがあるのだろうか。
「えっ、ごめん、私普通にいたことあると思ってたよ」
「よく言われるわ。でもな俺、思うのがさ一人の人間だけって感じになると難しくないか?」
「あー、なんか言いたいことは分かるかも」
「まじ!わかってくれる!仲間だ!みんな分かんねぇっていうんだよ」
やっぱり、予想通り遊びたいからであっていた。でも、ちゃんと彼女のいるときに遊ぶのはいけないと分かっていて、それを考えてきちんと彼女を作らないでいると考えたら普通よりはいい人に思えてくる。そして、その考えは私も同じ感じだ。そもそも告白なんてされたことないサブキャラの言えることではないし、完全に同じではないけれど、ずっと同じ人間、1人だけを好きでいるなんて難しいとしか思わない、そしてそのような感情を持ったことがない。
「あ、この自販機でいい?」
「うん。じゃあ、このリンゴジュースで」
なんとなく元気な男子は炭酸飲料を選ぶのだと思ってしまうから、いろいろある中でリンゴジュースってなるとなんか可愛いと思ってしまう。
「ありがとな!」
「いや、何度も言うけどこっちの方がありがとうだからね!」
これだけでいいの?と言いたいところだけれど、何か高いものを頼まれたりしたらそれに対応できなく恥ずかしいからこれ以上のことも追加で買わせてなどは言えない。
「さっきの話だけどさ、話分かるって言ってたけど、お前も彼氏いたことない?」
「そうだよ。好きな人の感覚とかも最近じゃわかんなくなってきたし」
「やっぱり、同じだな。なんであいつら付き合いたいとか思うんだろうな」
本当に思ったよりも考え方が似ている。付き合わない理由が遊ぶためではなく、好きという感情、付き合うという理由自体を理解できない、私と同じ考えだ。
「おーい!こっち来て!」
学校生活について、それぞれの友達や、先生についての軽い語りをしながら歩いていると、横の公園から声が聞こえた。何かと思いよく見ると私の友達とかいとくんの友達、いつもよく一緒に帰って遊んでいるメンバーがいる。やっぱりいつも通りみんなで帰っていたんだなと思いながら、2人で公園に行った。
「あれ、てかお前ら一緒だったんだ!ちょうどよかったよ!」
「どうしたの?」
「今からみんなでドッチボールしようって話になって、待ってたんだよ!」
「えっ、今から!?てか、私たちのこと待っててくれたの!?」
「うん!まぁ普通にみんなで話してて、来たらやろうかって」
待っててくれたなんて、私自身に友達が少ないから遊ぶことが少ないけれど、だからこそ遊ぶときに本当にいい人達だなって思う。幸せだ。このメンバーはいつも一緒にいるとそりゃあ人気者になるんだろうなというのを感じるほど、良い性格とノリ、コミュニケーション能力を持っている。
「よし!やるか!」
「チーム分けどうする?グーとパーにする?それとも完全男女別にする?」
「最初は男女別でやってみようぜ!絶対俺ら勝つけどさ」
「いや、うちら運動神経いいから勝てるし!甘く見ないで!」
本当に私たちは体力には自信がある。今回のようによく部活帰りに別の運動をしているし、遊びに行くときも自転車など常に動いていることもあって、体力テストはいい成績だ。
ドッチボールをすることがメインに過ごしていた小学生の頃に戻ったかのように必死にボールを投げては逃げるを繰り返していた。もちろん男子の方が強いかもしれないけど、違いはほんのすこしで中盤は人数も同じぐらいになった。私は逃げるのが得意だからこそ頑張って残っていたが、最終的には1人差で負けてしまった。
「よっしゃー!!余裕!!」
「いや、最初に当てられたお前が言うなよ!」
やっぱりこうやってにぎやかなのを見ているとすごく楽しくなってくる。
「本当にみんな最高すぎるよ!こんな私といてくれてありがとうだよ!」
「どうしたの?むしろそれ私たちのセリフなんだけど」
「いや、何言ってんの!人気者たちといるなんて幸せよ」
「違う違う、何勘違いしてんの?」
「そうだよ!あんたもちゃんとした人気者だからね」
「お前はどんだけの天然なんだよ」
変な事を言われているとしか感じない。ちゃんとした人気者だなんて感じた事があるわけがない、私は登場人物Bのような人間だと認識している。
「いや、私みんながいる時しか誘われたりしないよ」
「逆だよ!あんた1人の事を誘うのが緊張するから私たちをついでに誘ってるんだよ!」
「てか、委員長になってるのも先生から認められるくらいのちゃんとしたやつなんだから」
なんだか、よく考えるとあり得るのかもしれない。
「だからお前と遊んでる俺らも普通に楽しいんだぞ!」
この言葉で一気にうれしくなった。
その後もドッチボールを何度かして、本当に小学生に戻ったかのような放課後だった。今日はなんだか驚きがあふれる一日になった。
ついに祭りの日がやってきた。人が多くいるが若い人たち何人かは大きな祭りに行く人で会場を通りすぎていく。けれど、よくボランティアをしに行く会にいる子供たち親子や、お年寄りの方は祭りに来てくれているようで少し安心する。
「りかー!来たよー!」
遠くから大声で呼ばれた。みんなが来てくれた。その声で一気に安心感と皆さんに楽しんでもらうために頑張ろうとやる気が出た。
「よし!今日一日頑張ろうぜ!がんばるぞー!」
「「おー!!」」
このかいと君の声でみんなも一気にやる気が出ただろう。祭りでの活動は軽い屋台のようなものの手伝いなどだ。私の担当は飲み物の販売だ、飲み物は夏ということもあり沢山の方が来て少し忙しいが忙しい方がなんだかうれしい。
「お姉ちゃんまたいたんだ!このジュースちょうだい!」
「覚えててくれたの!嬉しいよ!はいどうぞ!」
「うん!この前の友達もみんな来てるよ!」
ボランティア委員会の活動でよく参加する地域の会で何度か会った子だ、覚えててくれているのはすごくうれしい。その後も地域の会で会った方々が話しかけてくれて、覚えててくださっているのはすごくうれしい。
「手伝いに来たぞ!俺のかき氷のとこ夏なのに全然人来ないから飲み物のとこ行けってさ」
「ちょうど良かったよ、ありがと!」
「てか、さっきから見てたけど、お前っていつもと違う感じでこの地域の人気者なんだな」
「違う感じって何よ!でも、たしかに学校内でよりは、はるかに人気かもしれないわ」
私の言ったことは事実だろう。学校では目立つようなことはしたくないし、自分から何かをしようと思うことなど無いけれど、ボランティアの際はなぜか学校にいる時よりも活動したくなる。それがあって、ボランティアの際は自分から話しかけたくなって、いつも地域の方と沢山話している。恐らく自分より年下の子供たちやおじいちゃんおばあちゃんが近所にいることもあり、慣れていて、年齢の近い人より話しやすいのかもしれない。
「いつも、今日みたいな感じでいたら、お前もっと人気者になるかもな」
「やだよ!みんなの前でこんな感じでいるのはさすがにメンタル的なのが」
「じゃあ俺、レアなお前を見れたんだな!超ラッキーじゃん!」
「いや、この前遊んだ時とかみんなといるときもこんな感じでしょ?」
「俺的には違うと思うんだけどな」
「かいとー!!」
話していると突然遠くから初めて聞く感じの元気な声が聞こえた。
「おお!ちひろ!!ひさしぶりじゃん」
「友達がかいとっぽい人見たって言ってたから来てみた!!」
「この前のバーベキューとかぶりだな?マジでお前日々、可愛くなりすぎだろ!!」
驚いた、『可愛くなりすぎ』と言う言葉を余裕で発言するなんて、彼は強者すぎる。私的に考えすぎなのかもしれないけれど、可愛いという言葉自体を言われたら女子からの好感度は爆上がりだろう。彼は好きと言う感情を理解していないだけで何も分かってはいないが、恐らく、彼がちひろさんのことが好きなのではと思ってしまっている。理由としては彼が誰かのことを可愛いと言っているのを聞いたことがないし2人の距離感が近すぎる。付き合ってないとしたらこれから付き合うのだろう、お似合いだ。少し羨ましく感じる。
「おう!お前ら2人とも俺らと交代で休憩だって!」
「わかった!ありがとう!」
休憩は近くにある公民館にお弁当などが用意されていて、そこに行くことになっている。
「よし!いくか!弁当何か楽しみだな!!」
「え、ついて行ってもいい?」
「なぁ、ちひろも連れてってもいいか?」
「多分いいと思うよ」
休憩時間はちひろさんも来るとなると、私はとてつもない邪魔者だ。どうすればいいのだろう。
「うわ、めっちゃうまそうじゃん!!」
「えー羨ましいなー!」
本当にカップルに見えてしまう。席が少ないし離れすぎるのも違和感に思われてしまうから隣に座ることにした。2人の昔話の間はあまりは入らないように必死で食べて、すぐに時間が経つのを待ちながら過ごした。
「てかさ、ちひろ!お前彼女いるらしいよな」
「あー、さっき彼女のこと誘ったんだけど、友達とあそぶからって断られた」
驚いた、綺麗な感じすぎて気付かなかったが、彼女のいる男性だった。確かに男性と言われたら納得できる。
「そうなん、惚気話とかあったら聞くぞ!俺ら聞くの好きだから。なぁ!りか!」
「うん!聞きたいです!」
「いや、何話せばいいんだよ。聞きたいことあるなら答えてあげるけど」
「じゃーなー、お前らが付き合ったきっかけをまず聞きてぇ!」
私もそれが聞きたい、ちょうどいいありがたい内容だ。
「いや、特にないと思うんだけどな。独占欲的なのかな笑」
「あー、いつか、俺たちみたいな、付き合ったことのない人間もそれを感じる日が来るのかもな」
『独占欲』か、この言葉をリアル現実で人間が言うものではないと思ってた。きっとこの前話していた、一人の人間だけという感覚分からないという私たちの話の考えのようだ。いつかその感情を持つ日、持たれる日が来るのだろうか、今まで一度も感じたことがないけれど。
なんだかんだ賑やかだった休憩時間と祭りは終わり、みんなで話しながら片付けをしていると。先生がこちらに近づいてきた、何か怒られるのではないかと心配になってきた。
「みんなありがとうね参加してくれて!」
「先生そんなに俺らのこと褒めてくれるんすか!」
「そうに決まってるでしょ!頑張ってくれてうれしいよ!」
先生はどちらかというと厳しめで静かめな先生なこともあり、褒めてくれるのは本当に珍しいとわたしも思う。参加者全員で挨拶をして、みんなで変わらず帽子を被ったまま、いつも通り賑やかに帰り道を歩いた。
「俺めっちゃ暇なんだろうと思ってたけど、思ったより楽しいんだな!」
「私も今まで参加した中で今日が一番楽しかった!」
「本当にありがとうね!過去一の感謝ですよ!」
今日、みんなが楽しんでくれたのはすごくうれしい。おかげで活動自体を問題なく進めることが出来たし、なんだかたくさんの人が楽しんでいるのを感じた。
「みんなで記念に帽子にメッセージ書こうよ!」
青春らしい楽しさで、みんなで帰り道に書いた。なんだか今までにはない青春感があって嬉しい。たくさんの『お疲れ様!!』があふれかえっていた。私もほかに思いつかず同じようなことを書いた。賑やかにしゃべり歩いているとみんなでコンビニでお菓子とか買って軽く公園で打ち上げな感じにしようとなった。少し静かに疲れ歩いていると、
「ちょっと貸して」
突然かぶっていた帽子を取られた。誰かと思ったらかいと君だ。何も気にせずメッセージを見てるのかと思い普通に歩いていた。すると後ろから帽子をかぶせてきた。私も、もう一回メッセージをみると帽子には『さすがだな!楽しかったぞ!』と追加でメッセージが書かれていた。
実は当日、みんなが来る前に担当の先生が私に、
「こんなに参加者が多いのは初めてだし、皆さんが楽しそうに楽しんでくれているのはあなたたちの学年がちゃんと活動してくれてるからだからだと思うわ、ありがとう」
と言ってくださった。きっとかいと君が友達を誘っていなかったらこんなに人は集まらなかったのに彼がほめてくれるなんて、いつの間にか涙が出そうになっていた。するとかいと君は気づいて親のように撫でてくれた、結局いつの間にか涙が出ていた。
「りか!なに買うかきめt?おしゃべり中だねごめん」
「そうだよ!俺らは今熱くお笑い芸人について語ってるんだよ!」
打ち上げの食品入手のコンビニまではかいと君が近くにいてくれて2人で話してはいないが話している様にしてくれたおかげでみんなに泣いていることはバレず落ち着くことができた。彼はいい人すぎるとしか思えなくなってきた。初めての彼氏はいつか彼のような優しい人と出会いたい、サブキャラはそういう人とは出会えなく、そんないい人は良いメインキャラと巡り合うのだろうけれど。
「よくあるカテゴリーごとに同じ商品買って、みんなで揃うかみたいなのしよ!」
「うわ、みんな同じで一人だけ違ったらめっちゃダメージ受けるやつじゃん」
そう、自分だけが外れていたらすごくショックを受ける。逆にみんなと同じになるとごくうれしい。パンとチョコレート菓子とスナック菓子を買うことになった。コンビニには思ったより商品が多く期間限定などもあるから悩む、しかもみんなと合わせるとなると自分の好きなものだからといって選ぶのとは違う。
「とりあえず一人ずつ買ってこよう!」
「マジでみんな同じの買ってくるとかあんのかな」
「そうなったらすごすぎるからね」
一人ずつ買いに行くことになった。何を買おうかすごく悩んだ、とにかく王道な感じのものを選んだ。一番悩んだのはチョコレート菓子だった。板チョコやクッキーなどで悩むに加えて味がビターやホワイト、そして期間限定など種類が多い。けれど今までそこまで考えたことはなかった、それが見えていても私はいつも同じものばかりを買っていた。あまり新しいものに挑戦するという勇気を持っていない。みんなのところに戻っても、自分だけ違った時の心配が張り付いている。
「よし!いくよ!せーの!」
どの種類も、みんな思ったよりも同じようなものを買っていた。けれどもちろんこんなにも人数がいるのだから全員が完璧に揃うわけがなかった。そして一番不安に思っていた最後のチョコレート菓子は人数はバラバラにだったがそれぞれでそろっていた、自分だけが別というショックにならずによかった。
「よしじゃあ最後に行くぞ!」
「「せーの!!」」
突然に何を言ってるのか焦った。頑張って思い出そうとしても、最後のチョコレート菓子で終わりのはずだ。けれど、それぞれがケーキなどのスイーツ、おつまみなどを出していた。
「お疲れ様!」
「委員長へのご褒美です!」
それぞれがケーキやおつまみ系などをくれた。自分がついにみんなから仲間外れにされてしまったのではないかと不安でしょうがなかったからよけいに高低差がひどく、すごくうれしかった。こんなことを言ってくれると思っていなかった。隠し切れない涙が出てしまった。
「おい、委員長!なに、泣いてんだよ!笑」
「もー!可愛いんだから!」
「ほんとにありがとう!」
本当にうれしい。
「よし!そんなことより、早く食おうぜ!」
かいと君がすぐに話を変えてくれたおかげで楽しくすごせることができた。話の内容も今日の話だけではなく、いつものような面白い話ができた。帰りは変わらず会話を楽しむHPは残っていたようで変わらずに話し続けた。それぞれ家が離れているから分かれ道になるたびに「おつかれー!じゃあねー!」を繰り返しながら過ごした。
にぎやかな帰りの途中、最初の方に帰宅したかいと君から突然「戻って少し話さないか」と連絡がきた。いつもの公園でということで一旦荷物を置いてから公園に行くことにした。いや、まずはもらったけれど食べきれなかったケーキを家で一つ食べてからにしよう。
「お待たせ!」
なんだかこの数日ですごく仲良くなれた気がする。彼がモテる理由がよくわかる、そりゃあ好きになるだろうなと感じた。
「泣いてたの隠してくれたり、ありがとね」
「俺優しすぎるかもしれないな、じゃあそのお礼ってことでブランコ乗ろうぜ」
「久々に聞いたよブランコとか。いいよ!」
久しぶりにブランコに乗りたいなんて、それでいいのかと思うけれど楽しさを感じる。小さい頃はこれに乗ってどこまで高くなるかを楽しんでいたな。
「やべー久しぶりだ!最高じゃん!!」
「楽しすぎるかも!」
久しぶりに夢中になって楽しんでいたけれど時間が経つと気持ち悪くなってくる、年を取ったからなのかもしれない。よく見ると夕焼けを感じるきれいな景色だ。
「なんかこの景色見てると、いろいろ思い出して泣きそうにならない?」
「俺は、特に思い出すことなんてないけど」
「いや、なんか一日のこと思い出したりしちゃうんだよね」
「俺思ったけど、お前のそういうとことはあんまり、他の奴に見られたく無いんだけど」
「えっ?なに、そりゃあ、普通に恥ずかしいからみんなに見られたくないよ」
「かわいいな」
突然の発言過ぎて、可愛いなんて言われるのは馬鹿にされているとしても、久しぶりでなんだか嬉しい。
「なぁ、お前と付き合ったらもっと可愛いとこ見れるんだよな?」
「いや、何言ってるの、そんなこと言われても」
突然の発言に驚いた。同時に熱が出たのかもしれないほど胸が熱くなった。かわいい所を見れるだなんて言葉を聞いたことがないし、なんて回答するのが正しいのだろうか。
「この前話してた付き合うことの唯一の特別な点の『独占欲』、そういうとこじゃね?」
付き合う理由のわからない私たちが話していたことの答え見つけてしまったのかもしれない。突然言われたけれど何だかそうなのかもしれない。いや、でも焦ってはいけない。
「でもさ、親友とかにもそういうとこはみられちゃうじゃん、だから私たちは親友なんだよ」
「でも、そうやって顔真っ赤にして、焦ってるお前のこと見れるの俺だけになれるよな?」
「いや、えっと」
「あいつらにもそういう顔みせるの?」
突然となりのブランコから降りて目の前に来た。こんなに近い距離で見られながら、ここまで言われたらもう無理だ。流石に耐えきれない。
「無理だよ!かいと君だけに決まってるじゃん!でもわかんないんだもん!」
「お前は、真面目すぎるんだよ。だからこそ付き合ったら分かるよ」
「お前の事特別にもっと知りたいから俺の彼女になってくれる?」
「う、ん」
いつもより静かに顔をよけいに赤くしながら答えた瞬間、彼との距離は数秒間ゼロになった。余計に熱くなり本当に倒れそうだ。
「これも関係が彼氏彼女になったことでの特別な点だからな」
少し馬鹿にしたようなニヤつき方で言われた。でも疑問も抱いている、私ばかりが恥ずかし状態で彼はいつも通りで何を特別に感じているのだろう。
「ねぇ、かいと君。変なこと聞いてもいい?」
「なに?変すぎなければ答えるけど」
「かいと君はいつも通りだけど、彼女にしか見せない点ないよね」
「お前、俺の発言に違和感持たなかったのかよ」
全く何も違和感を持たなかった。いつも通りとしか思わない
「全然いつも通りじゃない?」
「かわいいなんて言わねぇし、人の目なんてそんな見てられねぇよ」
よくよく思えばそうかもしれない。みんなと遊んでる時もすぐ目を逸らしていたのは言われてみるとそうだ。
「かいともかわいいんだね!」
「お前、黙れ!!」
少し顔が赤くなったように見える。私にとっての付き合って分かった特別な事だ。