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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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34.恩恵

闇騎士(ダークナイト)、ねぇ。その名前、騎士団内でかなり広まってるから表に出たらそう呼ばれるのは避けられないぞ」


アレックス団長から告げられた言葉で僕のテンションがガクンと下がる。


「僕、その名前で呼ばれるの嫌ですよ……」

「あぁ、闇騎士(ダークナイト)って呼ばれるくらいなら逃げるっつってたもんなぁ」

「え、僕そんなこと言った?でもそうだね、うん。顔合わせる人みんなから闇騎士(ダークナイト)って呼ばれたら逃げるかも……」


ボソッと、呟いた言葉を拾ったテセウスさんが慌てて僕に駆け寄り両肩を掴む。


「いや、シノブ!そこは全力で闇騎士(ダークナイト)の正体は隠す!ここにいる者とエレン以外には広めないから安心してくれ。だから頼む、私たちに力を貸してくれないか」


ほぼ国のトップと言っても過言ではないテセウスさんに頭を下げられ、僕の方が動揺する。


「いや、もちろん僕のできることはやりますよ?!闇騎士(ダークナイト)の中身を内緒にしといてくれれば……」

「ありがとう!助かるよ!」


胸をなでおろし安堵の表情を浮かべるテセウスさんの横でケインさんが「あ……」と声を上げテセウスさんに話しかけた。


「確かいずれ闇の魔法が使えるようになると言っていましたよね。その練習って王都から出てやりますか?」

「そうだね、慣れるまでは何が起こるかわからないし、王都内の森だと人目に付く可能性があるから王都の外の森が適切だろうね」

「なら、検問所の水晶玉に魔力登録しないと、出る度に手続きで手間取ることになります」

「あぁ、確かに。臨時の通行手形発行しようか?」


ケインさんの言葉にテセウスさんは頷く。

そしてケインさんはテセウスさんの言葉に頷き返した。


「……そうですね、お願いできますか?頂けたらすぐに登録します」

「わかった。明日までに用意するよ。シノブ」

「え、はい」


突然名前を呼ばれたので慌ててテセウスさんに向き直る。


「明日、用意した通行手形の登録をしにケインのところに行ってくれるかな?」

「わかりました」

「ケイレブもついて行ってあげて」

「了解です。闇の鎧はどうしますか?着せていきますか?」

「本当は魔力を馴染ませるために常に着ていてもらいたいんだけどお披露目がまだだからしばらくはまた隠しておこうかな。シノブ、正体は出さないからお披露目はさせてくれないか?」

「あ、はい……」

「ありがとう。細かいことはまた決まり次第知らせるよ。では一回鎧はまた保管しようか」


サイズ確認で纏っただけの鎧だったが、身につけてることが分からないくらい身体にフィットしていた。

なので脱いでいくと少しだけ身体が重くなる感覚がする。


──ふむ、思った以上に鎧と主の魔力が馴染んでいるようだな。


……馴染む?あぁ、だから脱ぐと少し違和感感じるのか……


──身体が軽かっただろう?もっと馴染めば更に身体能力も上がるだろうな。


え、ほんとに?もっと高くジャンプしたりできるのかなぁ……って、あれ?!僕口に出してないよね?!

なんか鎧の魔石と会話が出来てない?!


──これも魔力を同期したことによる恩恵だな。僥倖な事だ。


フフン、と、得意げな顔が目に浮かぶような口調で魔石の声が頭に響く。


……これ、急に独り言言い出す変な人から、急に黙り込んで会話をしなくなる人に僕がシフトチェンジしただけじゃ……


「シノブ、急に黙り込んでどうした?」


鎧を脱ぎながら急に宙を見たまま固まってる僕をケイレブが心配そうに覗き込む。

デスヨネー。


「いやなんか完全に闇の鎧の魔石との意思の疎通が脳内で完結できるようになったっぽい……」

「あぁ、魔力回路繋げたから色々できるのか?……はぁ、本当に適合者なんだなぁ……」


変なところで感心しているケイレブを横目に、脱いだ鎧を隠し扉の中へ再度戻し、鎧の魔石も腕へと戻す。


「しまい終わりました」

「あ、ありがとう。では先程言った通り明日通行手形を取りに来てくれるかい?」

「了解です」


一通り話が纏まったところで解散となり、ケインさんや団長、バリーさんは各々の仕事へ戻って行った。

僕とケイレブも部屋を後にしようとドアへ向かうと、「あ、待って!」とテセウスさんに呼び止められる。


「そういえば小耳に挟んだんだけどシノブ、薬草に興味があるんだって?」


どこからそんな情報が……?と思ったけど確かに興味が湧いてきてはいたので頷いておく。


「そうですね、ちょっと最近気になってます」


そう返事をすると、見たことがないほどテセウスさんの瞳が輝いた。


「ほんと?!いやー、嬉しいなー!薬師以外はほとんど薬草に興味を持ってくれなくてさ。もしかして薬草の研究とかにも興味はない?!」

「研究……?」


ふと頭に浮かんだのは、研究棟のみんなの研究している姿。

日々、薬草の調合を変えては効果の違いを書き留め、自分の体調は後回しにしてでも、少しでも人の役に立ちたいと人々の体調に合わせて最善の薬を作りあげている。

僕が魔法アレルギーだからかもしれないけど、副作用の無い薬をどうにか作ろうとしてくれるエレンも寝る間を惜しんで日々改良してくれてるみたいだ。

その人たちを間近で見ていて、僕にもここまで打ち込めることがあればなぁ、と思ったことは何度かある。

まぁ、薬草の見分けがつかない時点でまだ雑用としてもみんなの手足にはなれてないんだけど……

いつか僕も、という気持ちが無い訳でもない。


「まぁ、研究にも興味ありますね。その前に基礎がなってないんですけど」


へらり、と乾いた笑いを浮かべてみれば、何故か目の前に感極まって嬉し泣きを始めたテセウスさんの顔が……


「そうかそうか!研究にも興味はあるか!なら……」


そう言ってテセウスさんは執務室の中の本棚から数冊本を抜き出し僕の前へ差し出した。


「これは薬草についてわかりやすく書かれている本だ。見分け方や効能が書いてあるから時間がある時に見てみるといいよ」

「あ、ありがとうございます」

「研究も、気になったことがあったらどんどん聞いてね。何でも教えるから!」

「は、はい……」


ぐいぐいとくる圧に圧倒されていると、宰相としての仕事が溜まっていたのか次々とテセウスさんの部屋に来訪者が現れ、僕とケイレブは半ば追い出される形で執務室を後にした。


テセウスさんの目はまだ話し足りなそうにしていたけどそこは我慢して本職の仕事をこなしてもらおう。


「シノブ、気に入られたなー」

「そう?」

「テセウス様、薬草大好きだから薬草の話できる人も大好きなんだよ」

「あぁ、だからこんなに本貸してくれたのか。後で読ませてもらおう」

「それにしても薬草に興味持つなんてな。俺らからしたら回復薬の元になる葉っぱ、くらいしか思わないから興味も何もないんだよなぁ」


ケイレブが、借りた本をパラパラめくりながら呟く。


「僕からしたら魔法では回復できない分、薬草のおかげで何度か命が助かってるからどんな薬草があるのか興味ばっかりだよ」

「そんなもんかねー」


そんな話をしつつ、今日も僕たちはエレンの研究の手伝いのため研究棟へと向かった。



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