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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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31.闇の魔力

「色が……変わった?」


ケイレブの持つその石を横からまじまじと見つめる。


すごい、さっきまで青い色をしていたのに、今は黒曜石みたいに真っ黒になった。

この世界はホント不思議なことが起こるなぁ……


と感心していると、どうやらここでもあまり起きない現象だったようでケイレブとエレンが二人して石を透かしてみたり撫でてみたり真剣に観察し始めた。


「何が起きたんだ?」

「……魔石に魔力が……ない?そうか、闇の鎧の魔石が魔力が欲しいって言ってたな。こう摂取するのか」

「おいシノブ。今の闇の鎧の魔石が何かやったんだよな?何をやったか聞いてみてもらっていいか?」


ケイレブがそう言うと頭に声が響く。


──魔石から魔力を吸い出した。まだ全然足りぬがな。もう少し主に力がつけば、そのうちわざわざ魔石を取り出さずとも魔力を吸えるようになる。


頭に響いた声をそのままケイレブに伝えると、顔色がサッと変わった。


「え、ソレって人間からも魔力が吸えるってこと?あの直接触った時に吸われた以上に?」


──人間は魔力回路が複雑だからな、一度昏倒するくらいまでしか吸えん。そもそも人間には魔石がないからな。魔力の構造自体が少し違う。


「あ、人間には魔石ないんだ……」


──何を言っておる、当然だろう。まぁとにかく人間相手では魔力を全部吸い取ることは出来ないから安心しろと先程から段々と離れていっているそこの男に伝えろ。


「え?」


振り返るとケイレブは僕から少し離れたところまで移動していた。


「ケイレブ、人間からは魔力全部吸えないから安心しろって」


手招きして呼び戻すと、素直に戻ってきた。


「いやー、触らずに近くにいるだけで魔力吸われたらどうしようかと思ったよ」

「人間は魔力吸われても昏倒するだけだって魔石が言ってるんだけど、魔物は違うの?」

「いや、魔物も俺らみたいに昏倒したら自然回復で魔力回復する。ただそういう時の魔石は元の色から薄くなっていくだけでこんなに黒くならない。こんな真っ黒の魔石、俺は初めて見た」

「これは完全に魔力が抜かれているようだね。自然ではこうはいかない。これが闇の鎧の力か……」


僕にはよくわからなけど、どうやらこの闇の鎧の真の力ってのは相当驚くものらしい。


「へぇ、闇の鎧って凄いんだねぇ」

「なに他人事みたいに言ってんだよ……闇の鎧の力ってのは、要はシノブの力だからな……」

「へ?!」

「これは確かにある程度鍛えたらもしかしたら一人でも黒の大陸行けるかもな……あぁ、もちろんそんなことはさせねぇけど。魔物から魔力を奪えるってのはかなり有力な力だよな」

「……魔力って吸うだけなのか?戻したりも出来るのかな?もしそれが出来れば研究に使えるんだが……」


──一度吸った魔力を戻すなど、そんな無駄なことはしたくは無いができないこともない。


「勿体ないけどできるって」


要約してエレンに伝えてみると、いつもの冷静なエレンさんは引っ込んで、研究バカのエレンが顔を出した。


「シノブ!今度是非その闇の鎧の力を研究で貸してくれ!抜いた魔力を別のものに吸収させる実験があるんだ!!」

「わ、わかった」

「ありがとう!感謝する!」


エレンは僕の両手がちぎれんばかりに腕を振り、そのまま急いで帰り支度をする。


「こうしてはいられない!薬草を所長に渡したらすぐにその闇の鎧の力を借りた実験の準備をしなくては……!ほら、ケイレブ何してるんだ。さっさと帰る支度をしろ」

「はいはい」


ケイレブは、仕方ないなぁという顔で僕にも帰り支度を勧める。

採取で使った道具を手早くまとめ、馬にまたがると行きよりも気持ち早めに研究棟へと戻った。


「所長、頼まれた薬草採って来ましたよ。ここに置いておきます」

「あ、エレンありがとう。あと、これなんだが……」

「すみません、それは後ほど!」

「え、ちょ……」


普段のエレンとは比べ物にならないほどご機嫌に、採ってきた薬草を所長の前にカゴごと置くと、まだ何か話そうとしていた所長のことは構わずバタバタと部屋の奥へ走っていった。

その様子を見ていたケイレブは笑いを押し殺している。


「エレン、なんだかんだ言ってもまた子供だなー。研究してる時が一番イキイキしてる」

「確かに」


僕とケイレブが入口でコソコソ話していると、奥の部屋からエレンが顔を出し僕たちを急かした。


「何してるんだ二人とも!早くこっち!」

「はいはい」


手招きされ中へ入ると色々な薬草が所狭しと並べられていた。

その中からエレンは薬草と魔石を取り出し、テーブルの上に置く。


「この魔石から魔力を抜いて、こちらの薬草に移して欲しい」


僕は腕から闇の鎧の魔石の嵌った腕輪を外すと、目の前に置かれた魔石の近くに置いた。

すると先程と同じように闇の鎧の魔石から黒い紐が伸び、魔石を包み込むと段々と魔石の色が変わっていき、最後は真っ黒に変わる。

そして黒い紐は黒くなった魔石から離れ、次は薬草へとその紐を伸ばし……


──む。放出はまだ無理のようだな。


と頭の中で闇の鎧の魔石は言い放った。

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