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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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30.外の世界

「薬草採取……?ってどこに?」

「外の森。つってもシノブと会った守護の森までは行かねぇけどな」


薬草かぁ……

いつもエレンたちが薬を作るの見ててちょっと気になってたんだよねぇ。自生してるとこ気になるかも。


「それ、僕が行っても大丈夫なの?」

「まぁ近場ならな。それに今すぐ行けばちょうど護衛もいることだし?」


すっ、とケイレブは奥の厩舎を指さしそちらに歩いていくので僕も後を追う。

馬に鞍をつけていたエレンを見つけると、ケイレブはエレンへ片手を上げ話しかけた。


「エレン、採取って東の森か?」

「ん、そうだな。とりあえずそちらに見に行ってもし見つからなければその先へ行くつもりだけど」

「なら、東の森まで同行させてくれ」

「同行?構わないけど……シノブはどうするんだ?」

「シノブは俺の後ろに乗っていけよ。その方がスピード出せるからさ」

「あ、うん」


話がまとまり、ケイレブは厩舎にいたもう一頭の馬に手馴れた様子で鞍をつける。

その様子を見ていたエレンに、僕は声をかける。


「エレン、採取の様子見ててもいいかな?」

「採取の様子?なんだ、薬草に興味があるのか?」

「まぁ、ちょっと」


そう言うと最近曇りがちだったエレンに少し笑顔が戻った。


「なら、今日の採取手伝ってもらうかな。特徴とかはその時教える」

「ありがとう」


僕が薬草に興味を持ったのが嬉しかったのか、そこからのエレンは少しご機嫌で、東の森、という場所に着いてからも終始その辺に生えている薬草の効能や特徴をずっと教えてくれていた。


「この辺に多く自生しているはずなんだ。……あ、あれだ」


森を少し進んだところで馬を下り、エレンはひと房の草を摘む。


「似ているもので毒があるものがあるから摘む時は気をつけて。薬草に使う方は葉の先が丸くなってるからそこを見て。あと根っこを傷つけないように。根が残っていればまた生えてくるから」


色々とエレンに教わり、僕も近くを探して薬草を見つける。

見本に、と預かった葉っぱと見比べて同じものを摘んでいき、エレンに預かった麻袋いっぱいになるまで薬草を摘んで回った。

久々に体力トレーニング以外で時間を使い、気分がスッキリとしている。


……もしかして。


辺りを見回しケイレブを見つけて見てみれば、腕を組み馬に寄りかかるその姿はまるで僕を見守る保護者のようだった。


やっぱり、僕の気分転換だったんだなー……


最近体力トレーニングが続いていて、少し疲れが抜けにくくなっていたのを見破られていたらしい。

体力は回復しても心の疲れがたまってたんだよね……


外に連れ出してくれたケイレブに感謝しつつ、そちらへ戻ろうとしたその時、足元で何かが動いた。


──主、動くな。


頭に突然響く魔石の声に驚き、図らずもビックリして身体が固まっていると、僕の様子を見たエレンが目にも止まらぬ早さで腕のボウガンを引き、僕の足元めがけて矢を放つ。


ザシュッ!


地面に突き刺さった矢は、大きな蛇の頭を打ち抜いて地面に縫いとめていた。


「うわっ!」


その蛇は、僕の足まであと数十センチという所まで接近していた。草に埋もれてよく見えなかったけど、もしあと一歩踏み出してたら噛まれていたかもしれない。

その一メートル程の大きさの蛇を、エレンが頭の矢を抜き、ヒョイと持ち上げる。


麻痺毒蛇(パラライズセルペンス)か」

「ぱららいず……?」

麻痺毒蛇(パラライズセルペンス)。噛まれると身体が麻痺する毒を出す魔物。毒自体は弱いから死にはしないんだけどね」


なんだ、毒は弱いのか。


と思っていることが顔に出ていたのか、エレンに呆れた顔をされる。


「毒自体は弱いが、麻痺で動けないから回復薬飲めなくて自然回復するのを待つしかないんだ。もしひとりの時に噛まれてみろ。魔物がいる森の中で麻痺で身体が動かないんだぞ?その間に別の魔物に見つかりでもしたら……」

「あ、それはやばい」


動けず転がってる時に獰猛な魔物に見つかったら即死だよね……


「エレン、ありがとう」

「あぁ、噛まれなくてよかった。まぁ複数人でいれば大した脅威でもないんだがな。なんにせよ、よくあの場で麻痺毒蛇(コイツ)に気づいたな。少しでも動いていたら飛びかかられていたところだぞ」

「あ、あの時は魔石が声掛けてくれたんだ。魔石もありがとう」


──礼には及ばん。ただ……そうだな。そいつの魔力をもらってもいいか?


「魔力?」

「……魔石がなにか言ってるのか?」

「なんかこの蛇の魔力が欲しいって。あげてもいいかな?」


一応仕留めたのはエレンなので確認をする。


「別に問題ないが……どうやって魔力を?」

「どうした?」


僕とエレンが蛇を片手にゴニョゴニョ言っている姿を見て、ケイレブも近くに来る。


──む。自力で取るにはまだ、力が足りんな。おい、そやつの魔石を寄越せ。


「魔石を取り出すの?」


僕と魔石のやり取りを聞いていたエレンが手早く蛇を捌き、魔石を取り出す。


「これでいいか?」


蛇の中から出てきたのは小石ほどの青い石だった。

エレンの手からその魔石をつまみ上げ、何となく二の腕の魔石へ近づけてみると、そこから黒い紐のようなものが現れ、蛇の魔石を掴んだ。


「うわっ!」


思わず手を離すと、その黒い紐は蛇の魔石を包みこんでいき、しばらくするとペッと地面に放り出した。

僕たち三人が凝視する中、黒い紐はまた魔石の中へと戻っていく。


呆然としていると、一足早く我に返ったケイレブが地面に落ちた蛇の魔石を拾い上げる。

それは先程の青い魔石と色が異なり、真っ黒の石へと変貌していた。


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