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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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28.体力トレーニング開始

ふ、と意識が浮上し、目を開ける。

起き上がるとそこは騎士団の宿舎の僕の部屋だった。


あー、もしかしてケインさんが運んでくれたのかな?

迷惑かけちゃったな……まだその辺にいるかな?


倒れてどれくらいの時間が経っているかわからなかったので、ケインさんを探してみようと部屋の外に出てみるとちょうど隣の部屋からケイレブが出てきた。


「お、ちょうど良かった!様子見に行こうと思ってたんだ。気分はどうだ?」

「一回寝たからかなりスッキリしてるよ。あ、僕をここに運んでくれたのケインさんだよね?まだ近くにいる?」

「いや、結構前に帰ったからもういないだろ。でもすぐ会えると思うぜ。よし、その話するからちょっと入れよ」


ぐい、とドアを大きく開けてくれたので、その隙間からケイレブの部屋へお邪魔する。

間取りは僕の部屋より少し広く、部屋の真ん中にテーブルと椅子が二脚置かれていた。

そのうちのひとつに腰掛ける。


「とりあえず明日からシノブは体力トレーニングと魔力の底上げをやっていくことになる。早めに上級回復薬と魔力回復薬を用意してもらうから、それまでは慎重にやるけど、準備出来次第ガンガン鍛えるからそのつもりでよろしく」

「う、はい」

「筋力トレーニングよりも先に、まずは基礎体力だよな……とりあえず走り込みと、あとはリアンと一緒に素振りかな?」

「素振り……」


最近のトラウマが蘇る。……素振りかぁ……


「怪我しないのが一番だけど、とりあえず怪我しても回復魔法は使わないよう団員たちに伝えてあるから前みたいなことは起きないと思う。ただし!」


ビシッとこちらに人差し指を向け、有無を言わさぬ圧を纏い、ケイレブは言い放った。


「上級回復薬、絶対に持ち歩けよ!!」

「了解です!」


圧に押され、思わず敬語になる。

僕もあんな思いするのは嫌だし、反省もしたから必ず持ち歩くよ……


「ある程度体力ついたら俺とケインで鍛えてやる。それに慣れたら……」

「……それに慣れたら……?」

「団長と副団長のメニューで仕上げ。……頑張れ……」


ちょっと、語尾がものすごく元気なくなってるんだけど大丈夫?!主に僕の未来……


ゴクリ、と唾を飲み込み気合を入れる。


「やると言った以上、頑張るよ……」

「期待してる。じゃあ明日から頑張ろうな。また朝迎えに行くから一緒に訓練所行こう」

「うん、よろしく」


じゃあまた明日、とケイレブの部屋を出て自分の部屋へ戻ると、ボフッとベッドに腰掛ける。

明日、と言ってもさっき起きたばかりだし寝付けそうもないよな、どうしよ。


──なら、魔力を多めにもらおうか。


「うわっ」


急に頭に声が響くのホントに慣れない……


「魔力、欲しいんだっけ?いいよ、早く馴染ませないといけないし」


──では、遠慮なく。


魔力を吸われる感覚、というものは実感がわかないのでとりあえず魔石におまかせをしておく。

その間僕はやることも無いのでベッドに横になり、ぼーっとしていた。

明日は訓練所か……他の団員の迷惑にならないようにしないとな。ただでさえ僕今遠巻きに見られてるし……

嫌われたくはないんだけどなー……


──嫌う?団員たちが主を?あれは嫌うというか、面白がってるんじゃないか?


頭の中に声が響いていたけど、最後までききとれないまま僕は眠りに落ちていった。


翌朝、宣言通りにケイレブが迎えに来たので一緒に訓練所へ向かう。

訓練所の中は前回以上に人がごった返して活気に満ちていた。


え、人多くない?!


訓練所内の人数に僕が圧倒されていると、ケイレブがため息をつく。


「ケイン効果、すげぇな。普段からみんなこれだけ熱心に訓練してくれてればいいんだけどなぁ」

「ケイン効果?」

「そ。シノブの特訓にケインが付き合うって聞いたら、ついでに稽古つけてもらおうと団員たちが集まってんの。しばらくは来ねぇと思うんだけどな」

「へぇ、ケインさんの人気、すごいねぇ」


ほぅ、と感心のため息をつくと、後ろから


「よっ、おはよ」


とリアンが顔を出した。


「あ、リアンおはよう」

「今日は素振り十回以上出来るのか?」


ニヤニヤしながら長剣(ロングソード)を渡してくるので、僕も最近は身を潜めていた負けず嫌いが発動してその長剣(ロングソード)を受け取るとニヤリ、と微笑み返す。


「素振り、今日の目標は二十回!!」

「目標ひっく!」


ケイレブとリアンに爆笑されつつ、「あ、でも素振りの前に準備運動させて」とラジオ体操をやらせてもらった。

その様子を見ていたリアンが、不思議そうに僕の動きを真似し出す。


「……前も思ったけど、シノブ、これ何やってんの?」

「これ?これは僕の故郷の、子供の頃から叩き込まれる伝統的な準備運動?」


なんと説明したらいいかわからず、とりあえず適当にそう返すと僕とリアンのやり取りを見ていたケイレブも真似し始めて最終的に三人でラジオ体操をすることになった。


僕は頭の中で流していた掛け声を口に出し、二人にラジオ体操を教えてあげると何故かハマったらしく、二周、三周とラジオ体操をやらされ、僕は素振りの前に体力を根こそぎ持っていかれてしまったのであった……


その後、魔力切れも重なり一旦意識がブラックアウトし、訓練所のベンチで寝かされていた僕が再び目を覚ますとリアン達は各々仕事に出かけたらしく、僕とケイレブだけが取り残されていた。


その後、走り込みからの魔力切れ、素振りからの魔力切れ……とトレーニングと魔力切れを繰り返し、一日が終わった。


……え、これ思ったよりキツいんだけども?!


──まだまだ魔力が少なすぎる。もう少し体力をつければ必然的に魔力も上がっていくだろう。まぁ頑張ることだな。


魔石にもこんなことを言われ、その後、この一日のルーティンを何度も繰り返し、僕が体力トレーニング中に倒れなくなるまでに約二週間かかった。

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