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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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25.生まれ故郷

「ありがとう……」


テセウスさんは心底安堵した顔でお礼を言った。

その顔を見て僕は……


早くも後悔し始め冷や汗が流れ始めた。


待って、僕にホントにそんな大役が務まる?

今まで色んなことから逃げてきちゃってたから、そんな自分を変えたくて、やります、なんて言っちゃったけど第一歩としては大役過ぎない?


ぐるぐると悩んでいると頭の中に声が響いた。


──ええぃ、いつまでもグチグチと……多少のことはサポートしてやるから主はとにかく魔力を増やせ。


「え?魔力?」


──鎧の本来の力を出すためには圧倒的に魔力が足りん。主の魔力を先ず石に馴染ませなければ他からの魔力の供給もままならん。


「僕の魔力を馴染ませる……?」

「シノブ、闇の鎧が何か言っているのか?」


独り言を言い始めた僕の様子を見て、ケイレブがそう聞いてきた。


「あ、うん。まずは僕の魔力を石に馴染ませないといけないから魔力を増やせって。馴染んだら他からも供給できるって」

「シノブの魔力量増加か……。石に馴染ませるとは具体的にはどうするんだ?」


──肌身離さず持ち歩け。少しづつ魔力を吸い取る。主の魔力が尽きたら倒れるやもしれんがその時はその時。休め。一日倒れずにいることが出来たらそれが馴染んだ目安だ。


「え?!」

「どうした?」


僕は今闇の鎧が言ったことをそのままみんなに伝える。


「魔力の底上げ……わかった。私はそれを手助けする薬を作ろう。早速試作してくる」

「あぁ、なら私も少し手伝おう」


そう言ってエレンとテセウスさんは広間を出ていった。


「石を持ち歩く、か。直に持ったら直ぐに倒れるからなぁ。何かいい方法はあるかな?」


──一番効率がいいのは闇の鎧を常に纏うことだが……フッ……まぁ、無理だな。


……なんだろう。そんなはずはないんだろうけど今僕の体型を見て鼻で笑われた気がする……


──仕方ない。少し時間はかかるが……鎧のガントレットの留め具にも石が嵌るようになっているはずだ。そこに嵌めて持ち歩け。


「ガントレット?ってどれ」

「ガントレットか?それならこの部分だけど」


ケイレブが指さした物は、鎧の肘から下の部分のパーツで、そのちょうど手首の辺りにブレスレットのような形の外せるパーツがあった。

そこに石を嵌めて手首へ付けると少し緩かったので二の腕の辺りに付ける。


「これでどう?」


──まぁいいだろう。


「あぁ、石はそう持ち歩くのか」


ガントレットからパーツを外す様子をじっと見ていたケイレブが納得する。


「うん。ホントは鎧着た方がいいらしいんだけど……ねぇ?」


僕は乾いた笑いで言葉を濁した。

その言葉を聞いたバリーさんの瞳の奥がキラリと光る。


「そうだな、鎧着れないのは良くないよな」

「バ、バリーさん……?」

「よし、明日から鍛えてやるからな!そうと決まればまずは筋トレメニュー作りだ!」

「私も手伝おう!」


先程のエレンとテセウスさんと同じような流れでバリーさんとアレックスさんが嬉々として広間から出ていく。


「え、嫌な予感しかしない……」

「俺、一緒に行って様子見てくるわ……あの二人筋トレに関しては、ほっとくと暴走してやべぇんだ……ケイン、悪いけど後でシノブを部屋に送り届けてやってくれ。頼んだ」


二人の後を追うように、ケイレブも広間から出ていく。

残されたのは僕とケインさん……

え、初対面の人と二人きりとか気まずいんですけど……


「シノブは魔法アレルギーなんだって?」

「あ、はい」


気を利かせてか、ケインさんが話しかけてくれる。


「確か……宝珠に触ると火傷をするんだろ?あと、自身の魔力の発動でも怪我をするんだったか?」

「そうです」


──なんと、主、魔法発動が出来んのか……


「……そう、です」


鎧に呆れられた……


──なら尚更早く魔力を馴染ませろ。あと鎧を身につけられるようになれ。そうすれば鎧を着ている間くらいは魔法発動できるようになるだろう。


「え、ほんと?!」


突然大声を出した僕に、ケインさんがビクッとなる。


「あ、すみません!」

「いや……」

「鎧、着られるようになれば魔法アレルギー抑えられるそうです」

「闇の鎧がそう言ったのか?」

「はい」

「そうか」


ケインさんは、何か言いたそうに口を開き、また閉じる、を繰り返している。


「あの……?」

「あぁ、いや、すまん。シノブはその、重度の魔法アレルギーで今までどう生きてきたのか、と思ってな」

「え?」

「あ、言いたくないなら別にいいんだ」


ケインさんは、しまった、という顔をして目を逸らす。


「……僕は……魔法とは無縁のところで育ちましたから……魔法は今まで使わずに生きてきました」

「その育ったところは魔力無しの村(コンフィ二)というところか?」

「コンフィ二?」

「聞いたことはないか?バリーとケイレブはそう言っていたんだが」

「えっと……違います」


バリーさんとケイレブがなぜそんな勘違いをしたのかはわからないけど、コンフィ二なんて場所は聞いたことがない。

僕が育った場所は……


「コンフィ二から来たわけではないんだな。それでは……シノブの生まれ故郷は()()()か?」

「え?!」


今、ケインさんの口から出るはずのない地名が聞こえた気がした。

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