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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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24.闇の鎧の石

「鎧に……戻す?」


──そうだ。


再び頭の中に声がする。


うわなんだこれ気持ち悪っ!

鎧に戻す、って事はこれ、喋ってるのこの石?

石って喋るの?!

でも()()なら普通のことなのかも……?


僕はその黒い石?の言う通りにすることにした。

頭の中でずっと『戻せ戻せ』言われてるのも気持ち悪いし……


そう思ってケイレブが投棄てた黒い石を拾い上げる。


「あ、バカシノブ!その石に触ったらお前倒れるだろ!」

「あー、大丈夫。なんか魔力取らないって言ってるから」

「は!?取らないって……誰が?!」


ケイレブが止めるのを押し切り、その石を闇の鎧の穴へ嵌めるとカチリとピッタリ嵌った。

するとブワッと黒いモヤが鎧を包み、一瞬で霧散する。


「びっ……くりしたぁ……」


モヤから庇うように顔の前を覆っていた両腕をそっとズラして隙間から様子を伺っているとスパン、とケイレブに頭を軽く叩かれる。


「びっくりしたのはこっちだっつーの。触るなっつってるのにその石触るし、いきなりワケわからない事言い出すし……んで?身体に異常はないか?」

「あ、うん。ちゃんと魔力取らないって約束守ってくれたみたい」

「いやだから誰が?」

「……石が?」

「は?」


ケイレブの顔から表情がストンと落ちる。

え、僕そんな顔初めて見たんだけど……

固まってしまったケイレブの代わりにエレンが質問をする。


「シノブ……先程から話を聞いていると、()()()と意思が通じている、と聞こえるんだが……」

「そうだけど……え、みんなもしかして聞こえてないの?」


──この声は主にしか聞こえん。


「そうなの?!」


突然鎧の方を向き大声を出した僕に、エレンが怪訝な顔を向けている。そしてため息をついた。


「テセウス、また新しい案件だ」

「……そのようだね……」


いつの間にか僕はみんなに囲まれていた。


「──……では話を要約すると、その石は闇の鎧にとって原動力となるような重要な石で、今は魔力が不足しているからまずはその石の魔力を補うために周りから魔力を吸収していた、と」

「って、この石が言ってます。あとまだ魔力欲しいって……」


──当たり前だ。黒の宝珠に近づきたいんだろう?ならまだ全然魔力が足りん。今近づいても弾かれるのがオチだ。


「今行っても弾かれるって言ってます。……てか、本当なんですか?その黒の大陸ってとこに行けるの僕しかいないって……」

「残念だが今はシノブくんだけが頼りだ……」

「そんな……」


闇の鎧の石と話がしたい、とテセウスさんが言い出し、僕は通訳を務めることになったんだけどそこで出た話が寝耳に水だった。

騎士団が闇の鎧の適合者を探し始めたのは黒の大陸という場所に近づけるのがその闇の鎧を纏ってる人じゃないとダメで、その黒の大陸に行かないと、近いうちに世界に疫病が流行って遠からず世界が滅ぶ、って……


「冗談、だったら良かったんだがなぁ……」


バリーさんが深いため息をつく。


「二十年ほど前にも一度黒の大陸の宝珠に異変が起きてなぁ。その時はまだ普通に黒の大陸へは行けたから何人か派遣して対応したんだが力が及ばず、完全には対処できなくて、とりあえず最悪の事態を先伸ばしに出来ただけだったんだ。その時から黒の大陸(むこう)に近づけなくなって、このまままた最悪の事態になるのを防ぐため長年色々調べてな。もし闇の鎧の適合者見つからなかったら特攻覚悟でまた人を送ることになってた」

「特攻覚悟……って」

「ここに戻ってこられない、ってことさ」


それ……は。

確かにこのままその最悪の事態ってことが起きたらたくさんの人が死ぬんだろう。

黒の大陸に行く事ができたら、もしかしたらそのたくさんの人が助かるかもしれない。でも、向こうに行った人は辿り着けないし、戻って来れないかもしれない。その可能性が高い。


僕なら確実に向こうに行くことだけは……出来る?


「もちろん、こんな危険な事をシノブくんにだけやらせるつもりはない。どうにかしてシノブくん以外も黒の大陸(むこう)へ渡る方法を探す。それでも……シノブくんの力だけは借りなきゃならない……」


テセウスさんは沈痛な面持ちで頭を下げている。その横ではバリーさんの弟のケインさんも同じような、それ以上の痛みを抱えた表情でこちらを見ていた。


「すまない、まさかこんな……覚悟を持って騎士団に入った者とは違う一般のシノブを頼らなければならない事になるとは……シノブの魔法アレルギーのこともある。必ず誰か同行する方法を探す。決断しにくいことを頼んでいる自覚はある。でもどうか……頼まれてくれないか?」


バリーさんも、僕に頭を下げた。

周りを見渡せばみんなが縋る瞳で僕を見ていた。


ここの人達は見ず知らずの僕にとても親身になってくれた。

いきなり一人で今すぐ黒の大陸とやらに行け、と言われても首を縦には振れない。

だけど……


「あの、絶対に出来ます、とは言えません……だけど……」


僕は少しだけ前に進もう、と決めた。


「やれるだけのことは、やってみたい、です」



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