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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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23.うそでしょ……

「検証……?」


一体なんの?


「あ、検証というかシノブくんにお願いかな?」

「僕に、ですか?」


テセウスさんに手を引かれついて行くと、闇の鎧のレプリカの前に立たされた。


「この鎧をね、元の形にシノブくんに組み直してもらいたいんだ」

「元の形に、ですか?わかりました。ただ、鎧って僕よく見たことなくて、元の形がどんなものだかわからないんですけど」

「そっか、じゃあアレックス教えてあげて」

「は!」


そして何故かみんなに見守られながら僕は鎧を組み直すことになった。


まぁパズルみたいで面白そうだし、僕は鎧とは無縁だろうからこんな近くで触れる機会もそんなにないだろうし。


そう思って組みやすいよう鎧をパーツごとに床に並べていると、みんなが息を飲むのがわかった。

不審に思って振り返ると、テセウスさんがジェスチャーで『続けて続けて』と促すので、僕は首を傾げながら準備をする。


パーツごとに並べ終えたところでアレックスさんの指示通り組み直していくと、惚れ惚れするような造形のカッコイイ鎧が完成した。


「おお、カッコイイ!」


完成した鎧を前に僕が満足気に頷いていると、呆然とした表情でその様子を見ていたバリーさんのテンションが急に上がった。


「ハ、ハハ……!こいつは驚いた!俺は森でとんでもないもの拾ってきたみたいだな!」

「あ、最初に見つけたの俺ですよ!」

「そうか、そうだったな。ならケイレブも一緒に鍛えてやろう」

「エンリョします」


突然わちゃわちゃとバリーさんとケイレブが騒ぎ出し、その様子を見て他の大人たちもざわめき始める。


「これは、まさか……」

「これでまた一歩希望が見えてきた……」

「次にやるべきことはなんだ?」

「黒の大陸までの道のりは……」

「いやその前にまずはトレーニングを……」


テセウスさんやアレックスさん達は円陣を組んで急に会議を始めてしまい、僕は完全に置いてけぼりになった。


「あの、鎧組み終わりましたけど……」


僕の声は届かなかったのか、あーでもないこーでもないと会議は続いている。

その様子を見て途方に暮れていた僕の肩を、ぽん、とケイレブが叩いた。


「ケイレブ?」

「おめでとう。シノブがこの鎧の主だ。闇騎士(ダークナイト)の誕生だな」

「へ?えぇ?!」


状況についていけてない僕の肩に、今度はエレンがぽん、と手を置く。


「シノブ、あの鎧はレプリカじゃない。正真正銘、本物の闇の鎧だ。騎士団員全員が重くて持ち上げられなかった例の、な」

「……うそでしょ……」

「試してみるか?」


そう言うとケイレブが会議中の大人たちに叫ぶ。


「アレックス騎士団長ー!シノブが半信半疑ですー」

「ん?」


顔を上げたアレックスさんがこちらにやってきて、おもむろに僕をヒョイ、と担ぎあげた。


「う、うわぁぁぁぁ!!」


落ちる!とジタバタもがいたものの、アレックスさんの持ち上げる力は安定していて、僕がもがいてもビクともしていなかった。


「シノブ、私はシノブをこうして片手で持ち上げられるくらいには鍛えてある。でもな」


そっと僕を地面へ下ろし、アレックスさんは闇の鎧へ向かうと、その鎧から兜を外そうとして……

……固まった。


いや、よく見ると血管が浮き上がり、かなり力を入れているのがわかる。

それでも鎧から兜は外せなかった。


「ふぅ。ほら、この私の筋肉でも動かせないんだ、この鎧は」


悔しそうに鎧の元から離れると、アレックスさんは僕の元へ戻ってきた。


「シノブは先程容易くあの鎧を持ち上げ、私の言った通りに組み直していた。シノブからするとあの鎧は全く重くないんだろう?」

「あの……はい」

「なら、それが答えじゃないか」

「えぇ……」


僕が……闇の鎧の主?!

突然そんな事言われても……大体闇の鎧の主になったからって一体どうなるの?

なにか目的があるから探してたんだよねぇ?

それ、ほんとに僕じゃないとダメなのかな……?


「あの……」

「うわ!」


何かの間違いじゃないかと訴えようとした時、ケイレブが懐から何かを投棄(なげす)てた。

あれは……


「ケイレブ?今何を……」

「それに触るな!」


エレンが()()を拾おうとして、ケイレブの声に驚き手を止める。


「シノブ、()()どこで拾ったんだ?」

「確か……」


広間から出ようとしてその途中で蹴飛ばしたんだよな。だから……


「このへん、かな」


みんなの輪から少し離れたところを指差す。


「ケイレブ、あの包みがどうかしたのか?」


「アレックス騎士団長。あの包みが、今朝お話しようとしたモノです。昨日シノブがあの辺りで拾ったようで、そこからシノブがあの石に触ると強制的に眠りに落ちるようです。恐らくあの石がシノブの魔力を吸って、魔力切れを起こしてるのではないかと。一応持ち歩く際に布で包みましたが、それでも魔力を吸うみたいですので」

「強制的に眠りに……?あ、もしかして昨日この部屋で倒れたのも……」


エレンが問いかけると、ケイレブは頷いていた。


「今朝もそのせいで部屋に倒れていました。この部屋にあった石ならもしかして闇の鎧に関係してるのでは……?」

「ふむ」


ケイレブの報告にテセウスさんは一瞬考え込む。そして僕に向き直り言った。


「シノブくん、組み立ててもらって申し訳ないんだけど、再度闇の鎧をバラしてもらっていいかな?ちょっと調べてみたい」

「あ、はい」


僕は言われた通りまた鎧をパーツごとに床に並べていく。

そのパーツを手分けしてみんなで調べていくと、胸当てのパーツを調べていたエレンが声を上げる。


「あ、これは?飾りの下に何かくぼみが見えるけど……角度的によく見えないな」

「あ、じゃあ」


僕が胸当てを持ち上げ角度を変えながら飾りをずらすとその飾りの下からあの石がスッポリとハマりそうな穴があった。


「この穴にあの石を……でも……」


触ると魔力吸う石なんてどう持ったら……


──……ドセ……


「え?」

「シノブ、どうした?」


今、なんか声が……


──鎧に戻せ。そうすればお主からは魔力は取らぬ。


今度はハッキリと、頭の中に声が響いた。


運命(キセキ)は待ってたんだ




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