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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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12.自己紹介

「そんなあからさまにガッカリするなよ。テセウス様お墨付きの人材だぞ」


落胆の空気を読み取ったのか、ケイレブがニヤリ、と不敵な笑みを浮かべて室内を見渡した。


「お墨付きぃ?雑用のプロとか?」

「いや、どんなプロだよ」

「おいケイレブ。確かに研究所(ここ)は人手不足だけど、欲しいのは薬師であって雑用じゃないんだ。どんなに優秀な人材でも薬師以外は不要だよ」

「どんな人材でも、ねぇ」


ザワつく薬師の人たちに、ケイレブはその笑みを変えることなく言った。


「シノブが()()()()()()()って言ってもか?」

「魔法アレルギー?!」


驚いた声が聞こえたのは僕の後ろからだった。

び……ビックリした……

危うく心臓が止まりそうになりつつ振り返ると、そこには白衣にリュックサックを背負った人が立っていた。

その後ろには先ほど裏で会ったエレンと呼ばれた人物の姿が。


「今、魔法アレルギーって聞こえたんだけど誰が?君が?」

「え、はい」

「え、ほんとに?魔法アレルギーの被験者来てくれたの?!え、これ採取行ってる場合じゃないね?!すぐに治験待ちの薬たち用意しないと……!!」

「所長!」


目の前で急にワタワタとしている人を、エレンが一喝する。


「落ち着いてください。まずは自己紹介からでは?ほら、みんなもそんな遠くに居ないで集まったら?」


この中で一番年下そうなのに一番しっかりしている。

みんなも慣れているのか特に反論もなく素直に集まってきた。


「すまなかった!私がこの研究所の所長を勤めているドミニクだ。そしてこちらが……」

「やぁ、さっきは迷子扱いして悪かった。私はエレン。研究所(ここ)の薬師だ」

「薬師?護衛じゃなくて?」


さっきのクロスボウの命中率を思い出す。ただの薬師にしてはすごい腕前だ。


「あぁ、森で育ったから狩りが得意でね。薬草採取の際は護衛としてついて行ってるだけ。基本は薬師」

「エレンの腕前は確かだよ。研究所内でもトップクラスなんだ。流石……」

「ところで」


ドミニク所長が何か言いかけるのを遮って、エレンは話を進める。


「君は先ほどケイレブにシノブと呼ばれていたがそれが名前で合っているか?」

「あ、はい」

「ではシノブ。魔法アレルギーということだがそのアレルギーの程度は?症状は?詳しい話を聞いてもいいか?」

「あ、はい」

「ではこちらの別室へ。ついてきて」

「あ、はい」


謎の圧に負けて僕はエレンの後をついて行く。

というか「あ、はい」しか言ってないし、なんなら他の人たちの自己紹介聞けてないんですけど……


どうしようか、と振り返るとケイレブが「いいから行け」と呆れた笑顔で手を振っていた。


部屋に入ると、「どうぞ」とエレンに椅子を引かれた。うわ、ジェントルメン……


「散らかっていて悪いね。ここ、休憩室なんだ」


部屋の中は乱雑に積まれた本やら脱ぎ散らかされた白衣などが放り出されている。


「……みんな研究以外は……ズボラで……」


少し気まずそうに目を逸らしたエレンは休憩室の中の台所から葉っぱの入ったカップを二つ持ってくるとそこへ魔法で水を出し、僕が驚いている間にカップから湯気がたつ。

流れるような動作で魔法でお茶を淹れてくれたエレンに僕は思わず拍手した。


「魔法、すごいね」

「……別に、普通だろ?」


エレンの耳が赤くなる。

クールに見えて、意外と照れ屋らしい。

その姿を見て僕は急に親近感がわいた。


「僕魔法使えないから」

「それは、魔法アレルギーで?」


いつの間にか紙とペンを用意したエレンが聞き込みの体勢をとっていた。


「そう。魔石を使わないで魔法を使うと……魔力カイロ?がイジョウを?とかなんとかテセウスさんが言ってたけど」

「テセウスが……」


思わぬ呼び捨てにビックリしていると、エレンはそんな僕にはお構い無しに「魔法アレルギーの症状は?」「どのような時に発症する?」「症状が出た際の処置方法は?」と次から次へと質問をしてきた。

最終的には「好きな食べ物は?」という質問まで飛び出てきた。

まぁ、食べ物のアレルギーとかもあるからそれ関係かなぁ?


「ありがとう、参考にさせてもらう」

「いいえ、どういたしまして」


質問タイムはお茶のおかわり三杯目をお断りしたくらいまで続いた。

目の前のエレンは、初対面の時のクールさはなく、満足気ににこにこしていて年相応に見える。


「あ、最後にもうひとつ!」


完全にクールな面影は消え、笑顔のエレンが人差し指を一本たて、僕の顔の前に突き出した。


「シノブ、今いくつ?」

「いくつ?」

「歳!年齢!」

「歳?多分、18……歳?」


ここでの年齢の数え方がわからず、とりあえず数え年を教えておくことにする。


「18歳か!うん、なるほど」


何故か一人納得をしている。

……年齢、魔法アレルギーと何か関係あるのかな?

そういや……


「そう言うエレンはいくつなの?」

「私?私は……──」


聞いたエレンの歳を聞いて、思わず僕は椅子から転げ落ちた。


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