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異世界行ったら……  作者: 片馳 琉花
第2章 王立騎士団 編
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6.騎士団の宿舎

「とりあえず部屋はココ。隣は俺の部屋だから何かあれば訪ねてきてくれ」


中に通され、案内された部屋は二階の端の部屋だった。部屋を覗くと六畳程の広さの中に、ベッドと壁に備え付けられている机と本棚、クローゼットというシンプルな作りだ。

ただ、もっと狭いとか、四人一部屋の相部屋だと思っていたから正直驚いた。


「ここ、いいんですか?」

「もちろん」

「でも、個室なんて……」

「まぁ、正直いうとこの辺りの部屋は役職付きの部屋だから個室なんだ。他の団員は一階(した)で相部屋。ただ今そっちに空きがなくてさ。その部屋は、先月結婚して街に家を移した奴が使っててちょうど空き部屋。だから遠慮なく使ってくれていいぜ」


いや、他の団員(ひと)たちに申し訳ないんだけど……


「それに、シノブは今のところ保護対象だからな。何かあった時に守れるよう役職付き(おれたち)の側の方が助かる。一番いいのはバリー副団長との相部屋なんだけど……嫌だろ?」

「うっ……」


それは確かに……気が休まらなさそう……


「だからとりあえずここ使ってくれ」


言葉に詰まった僕を見て、やっぱりな、という笑顔でケイレブは僕の肩を両手で掴み、ぐるっと向きを反転させる。

そのまま電車ごっこのように前に押し出すと、


「次は水場だな!」


と、後ろからぐいぐい押してくるので押されるがまま水場とやらに向かった。

裏口のような場所につき、そのまま外に出るとそこにあったのは子供の頃に見たアニメで使われていたような、手押し式のポンプ井戸だった。


「使い方わかるか?」

「……多分」


ポンプ井戸の隣には水溜まりほどの大きさの湧き水があり、その横に手桶が置いてある。

その桶で湧き水を掬うとポンプの中に入れ、ハンドルを上下に動かしてみた。

するとしばらくして手応えが変わりポンプの先から水がジャバジャバと溢れ出す。

……アニメの知識って、思ってもみないとこで役に立つよな……


上手く作動した井戸を見てケイレブが拍手をしていた。


「おーよかったー!使い方知ってて。俺その使い方わからなかったからどうしようかと思ってたんだよ」

「え、これ使わないんですか?」

「えー、だってそれ使うより自分で出した方が早いだろ?」


そう言ってケイレブは手のひらから水を溢れさせた。


バリーさんの時は上から突然水をかけられて、どんな感じに水が現れたのか見えなかったけど、改めて見てみると手のひらから水が溢れるってシュールだよな……


じっと手を見つめる僕を見て、ケイレブは慌てて水を止めた。


「あ、悪い!……っと、そうだ、何か案内して欲しい場所とかあるか?!」


何故か焦った顔で謝ると、ケイレブは話題を変えた。

案内して欲しい場所……

あ、そういえば。


「あの……トイレは……?」

「あ、確かにそれ最優先事項だったわ。こっち」


一階の正面玄関に回ると、そこから中へ入り、団員たちの部屋と反対方向に進む。


「こっちが台所とトイレ。あ、ここな」


学校のトイレを彷彿とさせる作りだったが、意外だったのは全て個室だったこと。

ここ、女子トイレじゃないよな?


個室のひとつを覗くと、木製の洋式トイレのようなものが置いてある。

ただし水を流すタンクが見当たらない。

便器の中も何か灰のようなもので底が埋まっていた。


……水洗トイレは流石にないだろうと思ってはいたけど……まさかここに垂れ流し……?


思わぬ事態にテンションが下がりつつも気づいた。


あれ、でもその割に匂いキツくないな。


よくよく便器を見てみると、横にレバーのようなものがある。もしかして流せる?


便器を見て固まった僕を見て、そっとケイレブが寄ってきた。


「終わったらそのレバーに魔力を流すんだけど……シノブ使えるか?」

「魔力?」

「だよなぁー……」


聞き返した僕に、ケイレブは肩を落とした。


え、このトイレ魔力とか使うの?

僕使えなくない?使い方知らないし……


「よし!そしたらこうしよう!」


ケイレブは手洗い場の足元にあった桶を指さし、こう言った。


「シノブは用を足したらこの灰をかけること。魔力より時間少しだけかかるけど同じように掃除屋(ラートゥス)の灰が分解してくれるから」

「わ、わかった」


時間がかかる、というところが引っかかったけどしょうがない。

魔力、僕も使えるようにならないかなぁ……


「ここって基本的に魔力使うんだね。僕も使えないかなぁ」


ケイレブが驚いた顔でこちらを見た。


「シノブ、そんなに長く話せるんだな……」

「は、話せる、よ!」


思わずケイレブの方を振り返り言い返してみたものの、よくよく思い返すと単語しか話してなかった気がする。

そして気づいた。

今まであまり顔を見て話せなかったけど、慣れたのか少しづつ視線を上げて話せるようになった。そこで目に入るようになった口元。

聞こえる言葉は日本語なのに、口の動きは別の言語を話しているみたいだ。

僕は……


──そういうものだと納得した。


考えてもわからないことは考えない。人生は楽しんだ者勝ち。何かヤバいな、と思った時にそれは考えよう。


「魔力、か。シノブも使えなきゃ不便だろうとは思うけどお前、魔石に触ると火傷するだろ?」

「あ!」

「それに、魔力ないんじゃないのか?」


え、僕魔力ないの?

知らなかった、いつの間に調べたんだろう?


でもそっかー。魔法使えないのか。

ちょっと楽しみだったんだけどな。


「ここの道具って基本的に魔力流して使うから、シノブは何か行動する時は誰かと一緒の方がいいな。俺王都(こっち)戻ったばっかでしばらくは王都内の仕事だから、俺と行動しよう。悪いけどシノブも俺の仕事手伝ってくれ」


……これ、頷くしか選択肢なくないか?


「わかった」


こうして僕は騎士団に保護され、ケイレブの仕事を手伝うことになった。



掃除屋(ラートゥス)再び、の回でした笑

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